「わかってくれない」のはなぜ?
ひとつ屋根の下に暮らす家族や、毎日顔と顔を突き合わせる仕事仲間は、あなたにはとても親しい間柄でしょう。
それでも「えーっ、私のこと全然わかってない!」とショックを受けたこと、ありませんか?
そんなときはあなたのなかに、「言わなくたってわかるはず」という慢心があるのかもしれません。
そのせいで大切な関係にヒビが入ったら、それはとても残念ですよね。
『白馬入蘆花』(はくばろかにいる)という禅語があります。
――真っ白な蘆の花が咲き乱れる場所に、白馬が入れば見分けがつかない。しかし、白一色のなかにあっても、蘆花と白馬は別のもの。
どんなに似ているように見えても、自分と同じ人間はふたりといない、同じ人格はないという意味です。
あなたを育てた親も、長い付き合いの親友も、パートナーや恋人も、あなたとはまったく別人です。
そんなことはわかっているはずなのに、「私と似てるから、きっと同じ気持ちだろう」「長い付き合いだもん、いちいち説明するまでもないや」と、いつのまにか親しさに甘えて都合のいい判断をしていませんか?
大切な人に自分の考えをきちんと話さなかったり、やさしい言葉をかけるべきときに軽んじてしまったことはないでしょうか……?
そんな態度がいつのまにかに溝を作り、あなた自身が「自分勝手!」と責められるようになるんです。
もしかすると、「どうしてわかってくれないのか」といきどおりを感じたときは、相手の気持ちをわかろうとするあなたの努力が足りてないのかもしれません。
あるいは、自分の気持ちをわかってもらうための努力が足りてないのです。
親しい間柄にあぐらをかかず、「人と自分は、花と馬ほどちがう」という意識で身近な人と接するようにしませんか。
そうすれば、自然に「自分の考えをもっと丁寧に説明しなくちゃ」「相手をもっと細やかに観察しなくちゃ」という気持ちになると思います。
そこで、相手がチラッとでも自分に理解を示してくれたら、「なんて幸せ」と悦に入るんです。すると、感謝に満ちた最高の微笑みを返せますよ。
「あなたと同じ人格はない」ということは、あなたはどこに属していても、唯一の人。だれかがあなたを芯から染めようとしても、それはできないことなのです。
あなたもムリに合わせようとすることはありません。
私たちは別々の人格を生きているから、それぞれのちがいを快く容認できて、はじめていい関係を作れるんですね。
個性を尊重し合えるように、あなたから働きかけましょう。
――白馬入蘆花 ――
★ あなたの生活に禅語を、著書『こだわらない とらわれない
もう、悩まない』(サンクチュアリ出版)より★