見出し画像

【MMPI研究6.2】MMPI-2の内容尺度、補助尺度、PSY-5尺度~②補助尺度

 「MMPIでMMPI-2を使う」ことを目指して学んでいます。「MMPI2(by1)」計画と呼んでます。その学びの一端をシェアしたいと思います。本ノートはMMPIヘビーユーザー向けです。

  MMPI-2トレーニングスライドの「内容尺度、補助尺度、PSY-5」です。       
 このセクションはMMPIでいうところの「追加尺度」。これが整理されて、「内容尺度」「補助尺度」「PSY-5」になったわけです。今回は補助尺度。

MMPI-2 補助尺度
・特別な尺度の集まり。テストの歴史の中で開発された。
・実証に基づく検査マニュアルに含まれ、補助尺度には基礎尺度からは利用できない情報が提供できる。
・パーソナリティの機能/非機能についてのさらに特定の領域に焦点を当てることによって、臨床尺度の解釈を増強する。
・その他の多くのMMPI / MMPI-2尺度は、長年にわたって開発されてきた。
 ―長年にわたる450以上の様々な尺度
・補助尺度の「公式」セットが定期的に更新され、スケールが追加または削除される。
 ―尺度には、尺度の信頼性と妥当性を支持する実在するデータに基づいて維持されている。
・最新の更新は2001年。
・特に断りのない限り、T > 65 の尺度を高い と解釈し、T < 40 の尺度を低いと解釈する。

解説
全般的感情苦悩尺度群
・不安(A)
―妥当性尺度と臨床尺度を因子分析したときに出現した第一の主要な次元を評価する。
―全般的な不適応に関連し、不安、抑うつ、身体的訴えを含む特定の症状にも関連する。
・不適応 (Mt)
 ―41項目の 不適応の大学生を見出すために作られた
―無力感、不安、 悲観的
―行動(Luterbach, Garcia & Gloster, 2002)
 ・授業に遅れる
 ・低いGPA (大学の成績)
 ・治療歴あり
―因子分析では、3つ因子に分かれる: 大学生に特有にみられない低い自尊心, エネルギーの不足, そして 皮肉/落ち着きのなさ(Barthlow et al., 2004).
―全般的な苦悩の測定尺度として8つの臨床尺度の平均を増加させない(Graham, et al., 2002)。 (※1)
・PTSD-Kean(PK)
―PTSDのある退役軍人を見出すために開発された。
―強烈な感情的苦悩
―不安と睡眠障害
―カット値は状況によって異る。
 ・感度良いが特定的ではない
 ・退役軍人病院でサービスを求める退役軍人
―粗点 28点
―T値 >83
– 非戦時PTSDには特異的ではない (※2)
 ・家庭内暴力を受けた女性  
 ・労働災害で負傷した労働者
・夫婦間問題(MDS)
―カウンセリングを受けているカップルと標準群における二分調整尺度(Dyadic Adjustment Scale(※3))のスコアと相関するMMPI-2の14項目。
―論理的な項目の削除が行われた
―結婚もしくは恋愛関係への不満

広域的性格特性尺度群
・抑圧(R)
―妥当性尺度と臨床尺度を因子分析したときに出現した第2の主要な次元を評価する。
 ―内在化 (※4)
 ―内向的
 ―慎重で注意深いライフスタイル.
・自我強度(Es)
 
―心理療法への反応を予測するために開発された 
 ―心理療法への反応を予測するために開発された
 ―全般的な適応についてよく示す尺度
 ―生活の要求に対処するための多くの資源を示す
 ―より高いスコアは、心理療法の予後がよいことを示す。低いスコアは予後不良を示す。
 ―防衛的なプロフィールでは故意に高くでき、誇張されたプロフィールでは故意に低くできる。
(以下は領域が異なる対照的なグループによって経験的に開発された)
・支配(Do)
 ―対面による個人的な状況において自他を強く知覚する;自信がある;容易には脅かされない。
・社会的責任(Re)
 ―自分の行動の結果を受け入れようとする;社会的な集団に責任感を感じる;頼りになり、信頼できる。
行動制御障害
・敵意(Ho)
 ―教室での教師の報告を予測するために開発された。
 ―メンタルヘルスの全般的な不適応
 ―怒り、敵意
 ―冷笑的、猜疑心
 ―健康問題のリスク増加
  ・怒りを喚起する刺激への暴露された後の血圧の持続的な上昇
  ・冠状動脈性心疾患
・敵意の過剰統制(O-H)
 ―極端に主張的な囚人、適度に主張的な 囚人、非暴力的な囚人、有罪判決を受けたことがない男性で、異なる回答をする項目を見出すために開発された。
 ―挑発ために誇張されている怒り/苛立ち行動がある
 ―矯正の状況下では、より高いスコアは攻撃的で暴力的な行為を示唆するが、他の状況ではことなる
 ―防衛的プロフィールでは高得点になることが多い(感情的な過剰統制)。
行動制御障害– 依存
・アルコール中毒 (MAC-R)
 ―男性のアルコール依存症者とのアルコール依存症ではない精神科患者とを分ける項目(明白なETOH項目を除く(※5))
 ―危険を冒す、刺激欲求 ―外向的、大げさに見せびらかす―薬物乱用のリスク増加
 ・解釈
  ― >28 陽性
  ―24~27 ルコールの問題がある可能性
 ・注意:女性にはうまく働かない
・依存容認(AAS)
 ―論理的に定められた項目
 ―T値> 60 ・物質乱用を認める
      ・行動化の経歴
・依存潜在性(APS)
 ―入院中のCD(行為障害)ユニットの男女の回答と、精神科入院患者の男女と標準群を分ける項目
 ―T値> 60は、 物質乱用の問題の可能性を示唆
 ―反社会的行為の可能性
ジェンダーの役割
・性役割男性性(GM)
– 標準サンプル男性の大多数と女性の10%以下が採点した項目を見出すことによって開発された。
 ・ステレオタイプの男性的な興味と活動
 ・恐怖と不安の否認
 ・自信
・性役割女性性(GF)
– 標準サンプル女性の大多数と男性の10%以下が採点した項目を見出すことによって開発された。
 ・ステレオタイプの女性的な興味と活動
 ・反社会的行動の避妊
 ・過度に繊細

https://www.upress.umn.edu/test-division/mtdda/webdocs/mmpi-2-training-slides/interpretation-of-mmpi-2-content-supplementary-and-psy-5-scales
P19-23

まずは注釈へのコメント

 
(※1)
Mtのほかの文献をあたってみた。
 Greene(1991)だとMtは項目の重複が多く(1,2,3,7,8,0)、追加尺度とも重複している(A,PK,PS,)。Greeneは、「Aに似た第一因子first factorの尺度」の一つとしていた(むろんその後、RCを作成する流れでは選択されなかったもの、なのだろう)。そういう文脈でみると、この一文の「全般的な苦悩の測定尺度」の意味は、Aに似ているということであろう。Aに似ているがどうやら臨床尺度に影響をもたらさなかったようだ。
(※2)
「特異的ではない」というのは、この尺度が「トラウマが実際に起こったことを決めるものではないthe scale does not determine that trauma has actually occurred」(Gary Groth-Marnat(2003))。PKが高い=この人トラウマがあるんだ!と決めてはいけない。ただしトラウマがあることがほかの何かで分かった場合に、トラウマの症状が評価できる、ということであろう。
 ただ、「虐待女性」とか「労災」の項目が何を意味しているか不明。被虐待者も労災被害者も、PK高まる、ということなのかもしれない。
(※3)
Dyadic Adjustment Scale
Dyadic Adjustment Scale (DAS) – Addiction Research Center – UW–Madison (wisc.edu)
ダウンロードできる。夫婦・カップル間の関係性を評価する尺度。
(※4)

内在化
“心理学用語。内面化ともいう。心ないしパーソナリティの内部に,種々の習慣や考え,他人や社会の規準,価値などを取入れて自己のものとすること。十分に内在化 (内面化) されたものは,もはやほかから受入れたものとして感じられなくなる。子供は発達の過程で,両親や周囲の人々ないし社会の習慣,考え,規準などを内在化し,やがてそれを自分のものとして行動する。精神分析上の超自我は両親のもつ規準の内在化したものとみることができる。 (→社会化 , 取入れ )  ”

https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E5%9C%A8%E5%8C%96-107310

(※5)
ETOHは意味不明。エチルアルコールグループ??
 
[コメント]
 MMPI-2になってついに百花繚乱たる追加尺度が「お上御用達」になったわけです。以上が公式。もちろんいんや、公式じゃねえけど、つかえる追加尺度あるズラ!と経験している人もいるのでしょう。しかしMMPI-2以降は、本家HPに並ぶ尺度たち、あれ「公式」でしょうね。
 初代MMPIの、諸家様々な尺度群がならぶ状況は新しい尺度に開かれているという意味においては、利点があったように思います。今後のMMPI-3には日本人研究者が開発した新しい尺度なんて、でたらいいのにとは思います。「対人恐怖尺度taijinnkyouhu scale」とかさ「ひきこもり傾向尺度 hikikomori prone scale」とかさ、ああ「狐憑き尺度」・・・・ああやめましょ(笑)。
 Esなんていきのびたんだねえ、いままでみてきた中では毀誉褒貶だったようにおもうんですよ。 

[文献]

Greene,L,R 1991 MMPI/MMPI-2 An interpretative manual 2nd edition Allyn & Bacon;
Gary Groth-Marnat 2003  Handbook of Psychological Assessment 4th edtion  John Wiley & Sons, Inc.



 

いいなと思ったら応援しよう!