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【牛田くんとの往復書簡】(三通目)|"しゃべり"を教えてくれた6人の友だち、5人の芸人、4人の同僚


一つ前の牛田くんからのお返事(二通目)はこちらから読めます。

初めての方は、ぜひこちらをご一読ください。


牛田くん、お返事ありがとうございます。得津です。

お返事をもらった翌日くらいにこの文章を書こうと思っていたんですが、あれよあれよという間に一週間くらい空いてしまいましたね。

まあ、気にせずにお互いマイペースにのびのびやっていきましょう。


本題に入る前に、前回のお返事の最後の文章から。

ふと思いましたが、他のフリースクールや居場所提供をしている場所は、こういったボランティアマネジメント?をどうしているのでしょうか。

と、ありました。


実際どうしているんでしょうね。

同業の方と、ボランティアマネジメントや研修について意見交換をしたことがないので分かりませんが、小さくても「団体」と言えるくらいの規模があるところは何かしらの研修をされていると思いますよ。きっと。

勝手な予想ですけれど、その規模感が大きくなるにつれて頻度や質が上がっていくのではないかと考えています。

どこかで同業の方と話す機会があれば、ボランティアマネジメントについて聞いてみますね。


前置きが長くなってもあれなんで、今日はサクッと本題に入ります。

牛田くんからのお返事の中で、大変興味深い提案をいただきました。

これは、ジャストアイデアなのですが、ここでお互い指摘し合い、言語化できたノウハウについて、

1、Aという手法について3段階ぐらいのステップに分ける
2、自分はどの程度できるか、どれが得意か振り返る
3、自分は活動で何に挑戦するのか決める(自己流にアレンジできるとGOOD)


という感じの研修を思いつきました。


面白そうなんで、やってみましょう。

上手にステップ分けができたり、得意なものが見つかったりするかは分かりませんが、その辺は往復書簡でのやり取りの中で修正していきましょう。


試しに、牛田くんの「子どもの懐に入るのが上手い」ことについて、自分なりに考えてみました。


得津視点で見た牛田くんの「子どもの懐に入るのが上手い」を作る3要素


牛田くんが、どうして子どもの懐に入るのが上手いのか。自分なりに考えてみると以下の3つの要素が浮かびました。

1、自分から子どもに自己紹介をする
2、他のスタッフとも仲良くできる
3、「じゃあ一緒にやろう」と子どもを誘える


それぞれについて少し説明しますね。

1、自分から子どもに自己紹介をする

当たり前のことだと思われるかもしれませんが、ボランティア希望できた人の中には意外と自己紹介ができない人もいます。実際にあった話なんですが、ボランティア体験に来た学生に、子ども達へ自己紹介を促したら断られたことがありました。驚きますよね。当然、学生は不採用になりました。

初めましての場で自己紹介がないと相手は不信感を感じます。だから自分から自己紹介ができること。ーもっと言えば、牛田くんは声のトーンを少しあげて重たくない自己紹介ができるので、子ども達は安心感を感じるのかなと。


2、他のスタッフとも仲良くできる

個人的にはこれが、上手に子どもの懐に入る要素として一番大きいと思っています。牛田くんも経験的にわかると思いますが、子どもって大人同士の関係性に割と敏感ですよね。

例えば学校だったら、学年集会のときに若い先生とベテランの先生の力関係に気づいたり、おませな子が「○○先生って、■■先生のこと嫌いなの?」とか、反対に「先生、絶対▲▲先生のこと好きだと思う」とか言ってきたります。

それくらい子どもは大人同士の関係性を見ていますし、これを考慮して自分の立ち振る舞いを決めたりもします。(A先生の言うことは聞くけど、B先生の話は聞かない、みたいな。)

だから学校に限らず、フリースクールや塾など子ども達と関わる業種は、大人同士の関係性が良好であればあるほど、授業の質、居心地の良さ、活動の面白さなど、子どもに還元される全ての質が高くなるわけです。

牛田くんもこのこと14年間の経験で知っているからこそ、D.Live(僕と牛田くんが働くNPO法人)に初めてきた時、子ども達だけじゃなくてスタッフやボランティアさんにも率先して挨拶をして親睦を深めようとしたんだと思います。

そしてその姿は、子ども達からすると「○○さんが仲良くしている牛田さんだから、きっと良い人なんだろう」という風に映ったはずです。



3、「じゃあ一緒にやろう」と子どもを誘える

牛田くんは誘い方が自然ですよね。子ども達とゲームの話をしている流れで、「じゃあ来週一緒にやろっか」とか、「今度持ってきてよー」と誘ったり促したりしている様子をよく見かける気がします。うまいなぁ、と思います。

ただ、もっと関心するのが、牛田くんは自分の好みや得意なことを生かせる場所への嗅覚が鋭いことです。牛田くんはD.Live以外にも、子どもと関わる法人に属していますよね。これは想像ですけれど、そこでも同じように子ども達をゲームに誘っている気がしています。



では翻って、自分はどうなのか。自己開示と、話の面白さを自分なりに分解する


ここまで牛田くんの懐に入る巧さについて自分の考えを述べてきました。では自分の強みについてはどうなのか。あまり自己分析は得意でないのですが、自分なりに考えてみたので書きますね。

分析したのは牛田くんが挙げてくれたもののうち、この2つにします。

・面白い話し方
・自己開示


というのも、後述しますがこの2つのスキルを高めるにあたり、共通する部分があったので、考えやすかったんです。


・面白い話し方について

面白い話し方。もっと関西風にいえば”しゃべり”ですが、僕が"しゃべり"スキルを高めるためにしてることは2つです。

1、「この人面白いな」と思う人の話し方を見つける
2、その話し方の真似をする

これだけです。

幸いにもこれまでたくさんのしゃべりが面白い人に出会ってきたので、サンプルには困らなかったんです。話が面白い人って、間の取り方、言葉のチョイス、リズム、話すときの仕草、声のトーン、大体このうちのどれか(あるいは複数)がうまいんですよ。特徴的といってもいい。

だからまず上手い人の特徴的なものを見つけて、その人がいない場所で真似してみる。これを繰り返していますね。

特徴の見つけ方は簡単です。僕が会話の中で自然と笑っていた部分を思い出すだけなので。


・自己開示について

続いて自己開示についてです。自己開示といっても、例えば辛い経験を語ることだけを指すのではなく、ここではもうちょっと広く捉えて、日常の出来事を話すことも含めて考えますね。多分そのほうが僕らしいと思うので。

自己開示スキルを高めるためにしていることは次のようなことです。

1、何か人に話したい出来事が起こった時、頭の中で事前に話を組み立てる
2、組み立て通りに話した時の相手のリアクションを見て、どうしたら更にウケたり伝わったりするかを一人の時間に脳内でふり返る。
3、別の人にもう一度同じ話をする。
(以下、納得のいく形になるまで繰り返し)

こんな感じです。ふり返りの中身は、、面白い話し方の要素をどう取り入れるかがメインですね。

「もっと大袈裟に言えばよかったな」とか、「これは話す順番を逆にしたほうがよかったな」とかです。


元芸人の島田紳助が、以前どこかで、「同じ話は3人にしろ」と言っていました。一人目に話す時は自分の熱量が高すぎて、相手にとっては何を言いたいのかよくわからないものになる。反対に、二人目に話す時は気持ちが落ち着いているから大事な部分が抜け落ちて、これも相手にとって伝わらない話になる。三人目に話す時が一番ちょうどよくなっているという趣旨です。

僕、自分のしゃべりの力量を高めるためにこれをかなり忠実に守っています。スキルの鍛え方が芸人みたいでしょう。

ここまで一切、教育学的・心理学的アプローチが出てこないことに自分でも驚いているのですが、これらのノウハウを身につけるようになったのは、しゃべりを磨かないとサバイブできない大学時代に起因します。


"しゃべり"を教えてくれた6人の友だち、5人の芸人、4人の同僚


僕の通っていた大学の学部は、他の人たちと比べて少し変わった学部でした。まず、同級生の人数が極端に少ないです。僕を入れて13人だけ。

カリキュラムも当時にしては変わっていて、毎週お昼休みや空きコマにミーティングをしたり、泊まり込みで一緒に作業をしたりしないと間に合わない授業が多かったんですね。

今のプロジェクトベースドラーニング(PBL)に近いものでした。

だから、同級生と顔を合わせることが非常に多かった大学生活でした。

それでですね、この同級生たちはみんな非常にハイスペックで優秀なんですよ。しかも同級生の男子5人(と厳密にはセンパイ1名)は、しゃべりも上手なんですよ。みんなそれぞれにめっちゃ面白いんです。

彼女にフラれたことをユーモラスに話す人もいれば、ツッコミが上手い人もいます。ボケとも天然ともつかない行動をする人もいる。入学当初から、みんなそれぞれにキャラが立っていました。

1回生の僕は悟りましたね。このままでは4年間やっていけない。圧倒されるだけで終わると。

そんな環境で生き残るために編み出したのが、友だちの話し方を徹底的に観察することでした。面白く話すためのノウハウはこのときに生まれたものです。

僕にとって、大学の同級生はかけがえのない友人であると共に、しゃべり方のお手本でもありました。


4年間でしゃべりのスキルが完成したかと言えばそんなこともなく、前職でも大学時代と似たような環境でした。大学時代とはまた別の方向で、でもしっかりキャラは濃い若手男性職員に囲まれて過ごしたので、ここでもまた話し方の観察をしてました(笑)。4人の同僚というのは、前職の同僚のことです。

面白いんですよ、皆さん。

特に、クズで不真面目なエピソードを話すときの話の組み立て方と、人のイジり方、言葉のチョイスが秀逸でした。


あと、お手本にしているのが5人の芸人さんですね。

千鳥のノブ、千原ジュニア、松本人志、島田紳助、兵藤大樹。

中でも、松本人志と島田紳助が出演していた『松紳』という番組は、トークを学ぶには最高です。なんでもない話で人をこんなにも惹きつけるのかと感心します。youtubeでも観れるので、気になったら観てみてくださいね。

これらの6人の友だち、5人の芸人、4人の同僚がだいたい頭の片隅にいて、このメンバーたちなら今の状況をどうイジるかなぁ、どんなふうにツッコむかなぁと考えながら子ども達と関わることもしばしばもあります。


自分の師匠やお手本、学んできたことについてーステップの先を描くために


どうしてこんな話をしたかといいますと、先述した関わり方の3ステップを考えたときに、今の自分の関わりを掘り下げるやり方だと、3ステップ目が今の自分の状態になってしまう気がしたんです。


自己開示のやり方についてだったら
1、何か人に話したい出来事が起こった時、頭の中で事前に話を組み立てる
2、組み立て通りに話した時の相手のリアクションを見て、どうしたら更にウケたり伝わったりするかを一人の時間に脳内でふり返る。
3、別の人にもう一度同じ話をする。(←イマココ)

みたいな感じ。

まだ見ぬ4ステップ目、5ステップ目を考えようと思うと、自分の理想の姿、あるいはお手本や師匠を登場させる必要があるのかなと。

この文章を書くに当たって、友人に僕の強みを聞いてみたんです。そしたらこんなメッセージをもらいました。

スーパーフラットなところな気がします!
1、絶対に人の話を途中で遮らない
2、絶対に否定から入らない
っていう話す時の姿を見ていて「これは子供に好かれるわ」っていつも思っています(笑)

これ、日頃から確かに心がけています。

D.Liveが大切にしている傾聴的な態度を示す意味もですけど、哲学者の内田樹がいうところの「中腰」で話を聞くことを体現したいという個人的な意図もあって。

ご存知かもしれませんが、僕の教育観はほとんど内田樹によって形成されています。めちゃくちゃ強い影響を受けています。大学一回生の多感な時期に内田樹に出会ったからでしょうね。

で、この「中腰」で話を聞くことはどういうことかと言いますと、安易に判断をせず、聞きに徹することだと解釈しています。

相手は何か言葉の奥に言いたいことを持っているかもしれない。

相手の言ってることが全然わからないけど、これは自分の知的レベルが低いからかもしれない。

逆にわかりすぎるくらい共感してしまうけれど、この続きに全く予想外な話が来るかもしれない。

このように、相手の話を安易に判断をせずに知的な緊張感を持ちながら話を聞くことを、「中腰」で話を聞くと内田樹は言いました。


間違っていたらごめんなさい。このような趣旨が書かれた文献があった気がするんですけど見つけられなくて。


僕はこの「中腰」で聞くことを体現したい。なぜそうしたいのかはっきり言えないんですが、とにかくそうしたい。そうしないといけない気がします。

具体的な方法なんて全然示されていないけれど、内田樹を師匠に据えて自分なりに取り組むことで、内田樹が言ったり書いたりしたことが生きた言葉として立ち表れる。テキストから息遣いが感じられる。そんな気がするんです。

すいません、話が随分と逸れてしまいましたね。

つまりは牛田くんから見た僕の良さ、あるいは僕からみた牛田くんの良さを伝え合い、その良さがどのように成り立っているのかを因数分解していくことも楽しいですが、お互いが今以上に成長するためには、お互いが何を目指しているのか、何をお手本にしているのか、何を学んできたのか。

これらを出し合っていくことで4ステップ目、5ステップ目が見えてくるのではないかと考えたのです。


いかがでしょうか。

今回僕がこんな提案をしたのは、自分の理想や自分の師匠を登場させて、そこに至るために僕はこの行動を心がけているんだと説明することで、ボランティアさんへのノウハウの伝達も容易になるのでは?と思ったからです。

実際のところは、よくわかりませんけどね(笑)。


なんと今年はもう梅雨入りだそうです。異例の早さですね。教室のベランダに野菜を植えたいのですが、雨続きだとあまり成長しないのではないかと心配しています。


急がないので、好きなタイミングでお返事お待ちしていますね。

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