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若者の質問から考えた「不登校支援だけで飯は食えるのか」についての私見

先日、「不登校支援をしたい人が支援だけに集中できるにはどうすればいいのか?」という質問をいただきました。

大変興味深い質問をいただき、これはパパッと答えられる質問ではないぞと思い、腰を据えて考えました。自分の備忘録も兼ねてここに自分の答えを掲載しておきます。

どうも、ご質問ありがとうございます。

「不登校支援をしたい人が支援だけに集中できるにはどうすればいいのか?」

「どうして(不登校支援をしたい人が)不登校支援だけに集中する(できる)お金の流れを作ることができないのか?」 ※()内は得津の補足

たいへんに興味深い質問ですね。


ここには掲載しませんが、いただいた質問の文脈から「不登校支援だけで飯は食えるのか?」という問いに解釈できるなと思っていました。(間違っていたらごめんなさい)

ですので、ここからは
・不登校支援だけで飯は食えるのか。
・できるとしたら、それはどんな形か。

これをテーマに考えていこうと思います。


不登校支援ができそうな職種や立場

いただいた質問について考えるために、まず不登校支援ができる仕事や職種、立場を整理していくことにしますね。


・スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー

学校でカウンセリングをしたり、ケースに応じて支援機関と繋いだりするお仕事です。多くが時給での雇用なので、いくつかの自治体を掛け持ちをされている方もいます。当然、不登校の支援もしますが、他にも多種多様な相談業務を担うので、不登校支援だけと言われると弱いかも知れません。ただ、学校の先生に続いて不登校や不登校になりつつある児童生徒と関わる立場ではあります。


・不登校支援をしている企業や法人に就職する

とても安易な答えかも知れませんが、不登校支援をしている企業や法人に就職し、支援を担当する立場として働き、お給料を貰えば、安定して支援ができると思います。

近年では、トライ式やN中など、企業発の取り組みもあります。もちろんフリースクールに就職するというのも1つです。ただ、おそらく地方だと募集は少ないのではと予想します。

その理由をご説明するために、不登校に関する調査結果についてお話しさせてください。少し古い調査ではありますが、学校以外の場所に通えている不登校の小中学生の割合は全体の11%程度だという調査を見たことがありました。

不登校の小中学生がどれくらいいるのか。先日、不登校の児童生徒数に関する2020年度調査の結果が出されました。小中学生で19万6000人ほどだそうです。

学校以外の場所に通えている割合が変わっていないと仮定するなら、おおよそ毎年2万人くらいの児童生徒しか、学校以外の場所(フリースクールや教育支援センターなど)に通えていないことになります。ざっくりした計算なので、実際にはもう少し多いと思いますが。それでも20%〜25%程度なんじゃないかと予想しています。

不登校の子どもが学校以外の場所にアクセスしにくい理由は、いくつか考えられます。そもそも学校以外の場所が無い、家から遠い、場所があっても外に出られない、場所が合わない、などなど。それだけ、不登校の子どもが学校以外の場所にいくことはハードルが高いことがうかがえます。

そう考えると、フリースクールや塾のように場所に来てもらう形の経営はそもそも成り立たせるのが難しいので、職員の雇用を増やすことも難しい。特に人口が少ない地方では苦戦すると思います。私もフリースクール運営に携わっている身ですが、長くフリースクールを運営し、職員も雇っている法人や団体は本当に尊敬します。



・独立する

最後にご紹介するのが就職をせずに、独立して不登校支援をおこなうという選択肢です。個人事業主として独立する方法もありますし、法人格をとって独立する方法もあります。

例えばNPO法人だと寄付や会費を受け付けやすいので、フリースクールの運営費に充てることもできます。実際、フリースクールを運営するNPO法人や一般社団法人の中には、生活が苦しいお家でも利用できるように寄付を募っているところがいくつもあります。

話は逸れますが、個人的にはフリースクール利用にあたっての補助制度はNPOなどの努力に依存しきるのではなく、自治体がもうちょっと取り組んでくれたらいいのにと思っています。滋賀県草津市が今年度からフリースクール利用の補助をはじめましたが、似たような事例が他の自治体でも出てきて欲しいですね。塾代助成事業もあったくらいですし、なんとかならないかなぁと。

欲をいえば、ホームスクーリングに対しても補助があればと思いますが、フリースクール補助よりもハードルが高そうなので、まだ数年は先になるかもしれません。


もし独立を考えているなら、諸々の手続きや事務作業がついてくることは頭に入れておいてください。どんな事業を始めるにしても避けられない手続きなので、必ずある程度の時間は割かれてしまいます。



どんな状況のどんな人に向けた支援がしたいのか

なんだか希望のない話ばかりになってしまいましたが、個人的には不登校支援だけで飯を食うことは十分に可能だと思っています。独立するにしろ、就職するにしろ、イージーではなくても必ず方法はあります。

行政から委託を取ってくるとか、フリースクールと学習塾を並走させて自分は日中のフリースクールだけを担当するだとか、はたまた企業に就職して、不登校支援事業を希望するとか。


ただ、どんな方法を取るにせよ、大事なのは、どんな状況のどんな人を支援したいのかを考えることです。

わたしが運営するフリースクールでは子ども達だけじゃなく、保護者に向けたイベントや情報発信も並行しておこなっています。これは、フリースクール立ち上げから決めていたことじゃなく、事業を進める中で子どもよりも保護者さんが悩んでいるケースや、距離的にフリースクールには通えないけれど学ばせて欲しいという声を届けてくれた保護者さん達がいたからです。

何かアクションをやってみて、反応が返ってくる度に、どんな状況のどんな人を支援したいのかアップデートし続けてきました。

アップデートの度に、あれも不登校支援だし、これも不登校支援だよなと思えるようになってきました。

動画での情報発信がメインでもいいし、保護者さんに焦点を当てたメディアもいい。不登校と言わずに10代に向けたラジオ配信だっていい。学校の先生に向けた取り組みもあるかも知れない。ちょっと突飛な話をすれば、設備と人員に投資をした高い進学実績を誇る超高額なフリースクールがあってもいい。(よっぽどじゃないと誕生しないと思いますが…)

「支援するー支援される」の関係を取っ払った集まりだって考えられますし、一見すると「これは不登校支援なんだろうか?」と思える取り組みだって、本人と受益者の間で通じているものがあるかもしれません。


わたしの話をすれば、最近はフリースクールの「卒業」の作り方に関心があります。

わたしが個人的に応援している不登校支援の団体さんは、週に1回、生徒とスタッフで地域に向けたカフェをするんです。メニュー決めも、調理も、注文とりも、みんな生徒とスタッフで取り組むんです。

擬似的にでも働いた経験があれば、卒業した後も心強いですよね。自信になります。「あそこで前に皿洗いやったし、ファミレスのキッチンとかしてみよかな?」と思うきっかけになるかもしれない。

最近、この団体さんの卒業生か関係者の方か忘れてしまったのですが、レストランをオープンされたそうです。もちろん、このレストランは不登校の子ども達の自立支援も担っています。すごいですよね。

不登校になりつつある子どもを対象にした支援もあれば、不登校真っ只中のお子さんを育てている保護者さんに向けた支援もあります。私が紹介したような、不登校から卒業しつつある状態の支援もあります。

それぞれ、自分の得意なことや専門を生かしたり、地域や家庭の現状に合わせたりした支援を展開されています。

いろんな事例を見比べながら、ぜひ考えてみてください。どんな状況のどんな人を支援したいですか。



終わりに

ここまでお付き合いいただいてありがとうございました。

・不登校支援だけで飯は食えるのか。
・できるとしたら、それはどんな形か。


このテーマについて、ここまで自分なりに思うことを書いてきました。なんだかスッキリしない話になったかもしれません。

改めていうなら、不登校支援だけでも飯は食えます。そのためには、どんな状況のどんな人を支援したいか自分なりに軸を持つことです。

それさえできれば、あとは情報や事例を集めたり、仲間を募ったり、独立するなら独立補助制度に甘えたり、苦手な部分は人に頼れる環境に身を置いたり、支援の中身を改善したり、お金の取り方を決めたりするだけです。

だけ。なんて言いましたが、「だけ」の中には数多くの作業や考えて決断するなどが含まれているので、時にはハードです。ですが、今回のように大人の懐に飛び込んで本質に迫るような質問ができるあなたなら、きっとやり遂げられると思います。


最後になりますが、元々いただいた

「不登校支援をしたい人が支援だけに集中できるにはどうすればいいのか?」

「どうして(不登校支援をしたい人が)不登校支援だけに集中する(できる)お金の流れを作ることができないのか?」

この問いは、組織マネジメント的に考えることもできます。

「不登校支援をしたい人が支援だけに集中できるにはどうすればいいのか?」についてだと・・・
「AさんとBさんは相談業務と事務作業を半分ずつ担当しています。Aさんは相談業務だけをしたいので、事務作業をBさんに任せたいと思っていますが、Bさんだけが事務作業を担うとどうしてもBさんを頼りにしていた家庭から不満が出てきます。さてどうしよう?」みたいな。

こんな感じの、どの会社でもありそうな業務の分担についての話のほうが良かったですかね。もしそうだったら、またどこかのタイミングで質問してください。うまく答えられるか分かりませんが、自分では難しそうだったら友人にも聞いてみます。

それでは、また。

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