現役転職エージェントが思う、今の転職エージェント業界の問題点【2】理由が分からない不採用理由
転職エージェントを求職者が利用する中で、不満の一つとして出てくることの一つに、書類選考の結果連絡が遅い & その理由が分からない、ということがあります。
私の会社では、求職者の登録時に、事前アンケートにご協力を頂いているのですが、
そのアンケートの中で、転職活動中に困った事として、
「選考結果がなかなか来ず、待たされた理由が分からない事があった(エージェント利用時)」
に約16%の方が回答されました(困ったと感じていない方は集計していませんが、それも含めると、もっと多くの方が同じ経験をしていると思います)。
そして、この項目以上に、
「不採用の理由について説明がない(エージェント利用時)」
の項目に約18%の方が、転職活動中に困った事として回答されました(こちらも、困ったと感じていない潜在的な方も含めると、もっと多くの方が経験していると思います)。
私自身、転職エージェントの仕事をさせていただく中で、この点は、エージェントとしての品格にもかかわる大きな問題点だと、私は考えています。
この記事では、このことがどうして問題なのか?この問題が起こる背景について取り上げた上で、この件に関して、私がエージェントとしてあるべき姿と考えている事についてお話をいたします。
① なぜ、不採用理由の説明がないことが問題なのか?
1-1 求職者の期待に応じていない
求職者が転職エージェントに期待する事は、
良い求人を紹介してもらうこと
市場価値について知りたい
キャリアプランについて相談したい
などが挙げられます。
これらに共通して言えることは、転職エージェントからは、自己応募の活動では得られない情報が得られる、という事です。
上記を言い換えると、このようになります。
非公開案件(転職サイトには載っていない案件情報)を紹介してもらう
自分の市場価値を知るための情報
キャリアプランを考える上で必要な情報
また、エージェントに求められるものは、担当者(いわゆるキャリアアドバイザーなど)の親身な対応にもあります。
これは、具体的には次のようなことが挙げられます。
求人案件に関する内容、その案内
選考中の対企業へのフォロー、求職者への情報提供
転職活動中に発生した様々な悩み相談 など
求職者は、エージェント利用により様々な情報を得ることにより、活動を成功させるために何をすればいいのか?何をやってはいけないのか?を理解して、効率よく進めたいと考えています。
書類選考や面接などで選考が通過せず不採用となった理由を教えてもらうことは、求職者にとって、
企業からの客観的な評価を知る
それにより、市場価値や自分の立ち位置を知る手掛かりになる
次の選考に向けて、何をすべきかが見えてくる
など様々な学びが得られる貴重な情報になります。
普段の仕事などでも、良い部分を認められると嬉しく、自信にもなりますが、どこに課題があるのかという情報は、その人が成長していく上で必要不可欠な情報です。
これらは、実際に私自身が転職活動でエージェント会社を利用した際、エージェント会社から届いた書類選考お見送りの時の連絡です(原文ママ)。
”総合的に判断”、”求める応募要件”、”より条件に合致する”など、具体的な説明は何もありません。
この内容に、求職者が選考に落ちたという事実を知る以外、具体的な自分自身を知る、今後どうするかを考えるための学びは得られません。
そしてこの文章は完全なテンプレートで、一字一句、全く同じ文章を使いまわしています(一番目の”総合的に~”は、私は少なくとも5回受け取りました(笑))
求職者から見て、このテンプレート配信対応に、親身になって対応してもらえている、という感情は沸くのでしょうか?
具体的な情報提供が肝となるエージェントが、求職者に情報提供をしない、且つ機械的な対応をしていること姿。
これは、エージェントの役割を果たしていない姿だと、少なくとも私は考えております。
1-2 求人企業との、採用成功に向けた動きではない
選考見送りの理由について、エージェント側も「はい、そうですか」としているわけではなく、企業側に理由を確認する動きは取っているものです。
ただ実際に、エージェント側が確認しても、企業によっては詳細を説明しない所や、エージェント側の確認連絡(メール、電話など)をスルーするところも実際あったりします。
面接まで進めば大体理由の説明は得られるのですが、特に書類選考のお見送りになると、こうしたケースは非常に多くなります。
エージェント側が不採用理由の説明をしないのは、しないのではなくできない、という事もあるのです。私自身も、何度かこうしたことに直面しました。
ただここで考えるべきは「なぜ不採用理由を確認する必要があるのか?」という事だと思います。
不採用理由を確認する理由は、次の2つになります。
求職者に説明をするため
求人企業が採用成功をするため
2番について、不採用理由を確認することで、次にどういう求職者を推薦すれば、まず面接まで進められるのか?どのような方が内定までいけるのか?が分かってきます。
エージェントは求人企業に対して、求職者の紹介を通じてその企業の採用成功に貢献する立場にあります。
企業が成功するために、理由を確認することは必要不可欠な行動なのです。
今はエージェントを利用する求人企業は多く、それも複数と契約をしている企業が多くあります。
求人企業側からすれば、信頼できるエージェントもあれば、そうではない会社もあり、それによって詳細に説明をしてくれるか否かも変わってきます。
また一部の求人企業は、エージェントをいわゆる「業者」扱いし、きちんとしたエージェントに対しても丁寧な対応をしない会社もあります。
ただ、不採用理由は、求人企業の採用成功につながる手掛かりが得られることに変わりはなく、それがない状態は、求人企業の採用成功に向けた動きになっていない状態だという事を、エージェントは認識しておく事。
また、不採用理由を得られないことに対して、「あるあるだからしょうがない」とエージェント側が諦めない事は、とても大切なことだと、私自身は思います。
② エージェント側の意識の問題
1-2で、エージェント側が持つべき認識について触れましたが、ここではもう少し詳しく、エージェント側の意識の問題について触れていきます。
2-1 売上に近いことには一生懸命になる気質
エージェントは、典型的な営業会社です。
売上に対する貪欲さは、エージェントとして求められる気質です。
1件の成約で大きな売上が上がれば社内は沸き立ち、売上不振となれば厳しい目で見られるという雰囲気の会社が大半を占めます。
そして、不採用理由の説明がないことに関連するこの気質の問題点は、
売上の可能性がある事には一生懸命だが、そうでないものにはそっけない
という点です。
私がこれまで在籍していた会社や、協業する人材紹介会社などとのつながりの中で、非常に多いと感じてきました。
エージェントにとって、書類選考を通過した案件 → 1次面接に合格した案件 → 最終面接まで進んだ案件 → 内定が出た案件 と、選考が進むにつれて売り上げの可能性が高まっていき、エージェントとしても当然モチベーションが上がってきます。
求人企業との調整、情報収集、交渉にもがぜん力が入り、必死になっていき、前のめりになっていきます。
2-2 売上の可能性が無いことにはそっけない
逆に、選考NGとなった案件は、売上の可能性が無い案件になります。
NGになった理由を企業側に確認し、求職者に説明をしていく。前述のように次につながる大切な行動ではありますが、すぐの売上にはなりません。
この時点で、エージェントの中には、売上の可能性が無いためモチベーションが下がり、自然と対応が雑になる会社が出てきます。
面接NGであれば、まだ企業側からも情報が得やすいものの、理由の回収がしにくくなる書類選考NGの詳細な理由を確認することは、モチベーションが下がったエージェントの中には「面倒な作業」と考える人間も出てきている事実があります。
③ まとめ~小さな事こそ丁寧にする姿勢~
選考NGとなった案件(特に書類選考NG)は、エージェントにおける売上可能性という点では「小さな事」に入るものになります。
しかし、小さな事を丁寧にできない人は、大きな仕事を成功させる事は難しいと思います。
また、求職者に対して、小さな事をそっけなくされ、大きな事になれば前のめりになる姿「良い時だけ一生懸命」な在り方をエージェントが見せてしまっているのはとても失礼な事と感じています。
ビジネスの成功云々の前に、一人の人として失礼のない、気持ちの良いかかわりをしていきたいものです。
最後までお読みいただきまして有難うございました。