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採用がうまくいかない会社の3つの課題~人事(採用責任者)の意識編~

現在の、企業同士の人材争奪戦が厳しさが増す中、そこそこ工夫をしただけでは、なかなか採用がうまくいかない状況が続いています。

私自身、転職エージェント、再就職支援と併せて12年間転職支援を経験し、
今は10数名の小所帯な会社で、採用業務にも携わっております。

採用を支援する立場、当事者としてする立場の両方を経験する中で、採用をうまくいかせるための最重要キーマンは、やはり

  • 人事(採用責任者)

が挙げられると思います。
採用に関して、どれだけ経営陣の理解があっても、配属現場が協力的でも、人事がリーダーシップを執り採用活動を牽引しなければ、決してうまくいきません。

この記事では、採用をうまくいかせる上での課題として「人事(採用責任者)の意識」に焦点を当てて解説いたします。
何かしらの参考になれば何よりです。

① 採用がうまくいかない人事の顕著な3つの特徴

採用がうまくいっていない時に、特によく見かける人事の特徴を、私見ですがTOP3として取り上げます。

1-1 「求職者を選ぶ意識」に染まっている

本来採用(≒転職)は、企業と求職者の立場は対等であるもの。
ましてや、コロナ禍は一時的に企業側の買い手市場になったが、いまでは求職者側の売り手市場が、多くの職種で顕著になっています。

それにもかかわらず、未だに人事の中には、”自分たちが選ぶ立場”という意識の方が強い人がいます。

その意識が強い結果、例えば…

  • 面接官が面接開始時間に遅れても謝らない

  • 面接で、求職者が話しやすい雰囲気作りを心掛けない

  • 面接が、人事が聞きたいことを訊くだけの尋問になっている

  • 応募者に、まず会社側の事を知ってもらおうという意識が薄く、会社の説明が乏しい

  • 就職差別につながる不適切な質問を面接でする

  • 「ウチは●●だから」「ウチでは▲▲もやってもらうから」「まずウチでは、××だから」など、企業側の要望ばかり伝えてくる

  • 採用したいと思う求職者に、「是非当社に来て欲しい」という素直なメッセージを伝えない

  • 求職者の意向を高める為に、好印象を持たれる対応をしない

等々。

採用選考は、多くの場合…

▼ 最初に求職者側から求人に応募
▼ それを受けて、企業側が書類選考を実施(まれにしない場合もあり)
▼ 書類選考で企業側がOKサインを出したら、求職者は面接に進むことができる
▼ 求職者が面接や適性検査に合格すると、企業側から内定を出す
▼ 出された内定に対して、求職者が受諾をするかを決める

という流れで進みます。
確かに、企業側が面接実施OKを出さなければ求職者は面接に進むことはできません。

しかし、内定受諾をするかどうか、その最終決定権は求職者側にあります。
求職者がOKをしなければ、採用は成立しません。
当然、企業側が内定を出すのを待つまでもなく、選考途中で求職者側から辞退をされることもよくあることです。

野球でいう、先攻が企業側、後攻が求職者側、というイメージでしょう。

まずは、人事が自分たちは「選ぶ立場」であると同時に「選ばれる立場」であり、求職者から厳しい目で見られている立場である、という意識が必要となります。

1-2 情報開示に乏しい

求人票や採用HPなどで、募集要項や業務内容などの記載が乏しい求人があります。
その理由を聞くと、人事からは、

「色々あるので、詳しい事は面接の時に話します」
「応募が減る可能性があるので、書きたくない」
「色々書きすぎで、そこで(応募可否を)判断されたくない」

などの答えが返ってきます。
今ではほぼなくなったと思われますが、かつては求人票に給与の金額も書いてない(金額に自信がないので書きたがらない)という事もありました。
共通しているのは、最初は言わずに面接になったら話す、というスタンスです。

しかし、このスタンスは面接を組めることが前提の考え方です。
ここで問題になるのは、開示をしないことによって、そもそも求職者から応募されず、面接すら組めない事態が起こることです。

当然、企業側としては、機密事項については記載を避けたり、誤解を招くと思われるものは書きたくない、というのは事実と思います。

しかし、今は転職に限らず、何をするにもユーザーはまずネットで色々な情報を仕入れ、ある程度意向を固めてから行動を起こす傾向が顕著です。今はほとんどの人の手元にスマホがあり、情報はいつでもどこでも簡単に仕入れる事が出来ます。

また、ある調査によるとスマホを見ている人間の脳はチンパンジーレベル、という話もあるくらい、集中力がない状態でスマホを見ています。
そのため、分かりにくいサイト、説明が不足しているサイト、パッと読んですぐ頭に入ってこないサイトは最後まで読まれず、すぐに別のサイトへと離脱してしまいます。

今の求職者は「よくわからないから、まずは応募しよう」ではなく「よくわからないから応募は止めて他を探そう」という傾向にあります。
かなり条件が良い案件や、有名な企業の案件であっても、掲載をすればどんどん応募が集まる、という状態ではなくなっています。

人事は、まず求職者に対して積極的な情報を開示し、会社の事を知ってもらい、応募する前から会社への興味関心を高めて応募をしてもらう、という意識が必要です。

情報開示は、面接においても同様です。
面接では、求職者に対して質問をぶつけるだけの「尋問」をしている人事はいまだ存在します。

面接は、企業が「選ぶ」場であるのと同時に求職者から「選ばれる」場となっています。
人事としては、求職者に自社のことを知ってもらい、理解を深めてもらうために会社としての考え方、取り組んでいること、これからの事など色々と伝えていくことが必要です。

求職者は、その会社に対する理解が深まるほど、自分と会社とマッチする点が多く見え、親近感を感じ、意向が高まる傾向があります。

特に、良い部分だけでなく、現在課題となっている部分についても正直に伝える事は大切です。

この部分は、企業側としては伏せたくなるものですが、求職者はその会社の本当の姿を知り、その上で自分に合うかどうかを判断したいと考えています。
肝心なことを伝えず入社まで漕ぎつけたはいいが、「入社前の説明と違った」「イメージと違った」などとミスマッチが起こり、早期退職につながります。
求職者のキャリアにもマイナスとなり、企業の評価も落とすようなことは、避けたいところです。

1-3 関係者の言いなりになっている

ここで言う「関係者」とは、「配属現場」と「トップ(≒経営陣)」を指します。

言いなりというのは、採用基準や選考作業、関連する情報収集・調査や上記の情報開示などについて、現場やトップが考えを変えない、協力したがらない、面倒くさがる、などの反応に押され、言われるがままになっている状態の事です。

例えば、

  • 書類選考の結果や、面接結果を人事が催促しているのに、忙しいなどの理由でなかなか返答しない(特に配属現場)。

  • 面接結果(合格、不合格両方)の詳細な理由を聞いても、面倒くさがって回答しない。又は説明が不十分。

  • 業務詳細について現場に細かい質問をしても、なかなか返答しない。

  • トップや現場が求める選考基準が、転職市場にいない(特に、今の自社のレベルでは求職者から選ばれない)レベルにもかかわらずそれを変えようとしない(トップ → 人物面の目線が高すぎる。現場 → スキルを求めすぎる、など)

配属現場の人間は、現場の仕事が回るかどうか、今の現場メンバーに合うかどうかが大事で、トップは自分の会社の一員として迎えるにあたり、理念への共感度を大事にする傾向が有ります。

採用責任者のミッションは、採用枠を充足させることにあります。
勿論それは、トップの方針を理解し、現場の意向を汲み、会社に合う人材で充足させるという事が前提となります。

しかし同時に、採用は企業側の思いだけで成り立つものではありません。
採用にも市場があり、人材の需給バランスというものがあります。
その状況を受け入れた上で動くことが求められます。

人事は、社内で採用市場を一番熟知している存在として、一番適切な採用方針を認識し、時にトップであっても、現場に対しても提案・要請を行い、動かしていく強いリーダーシップが求められる存在であると思います。

② その他にある、採用がうまくいかない人事の特徴

上記3つ以外にも、採用がうまくいっていない時に見られる特徴を挙げます。

2-1 対応が遅い

今、多くの求職者が複数の転職エージェント、転職サイトに登録し、複数の案件を同時に応募して転職活動を進めています。

せっかく自社に合うと思える求職者が応募に来たとしても、その後の対応が遅れ、面接を設定した時にはすでに他社で内定が出て、面接実施前に辞退をされる

また、順調に選考を進めていたのに、どこかのタイミングで他社が巻き返してきて、内定を出す頃、気が付いたら他社の方が先にオファーを出してそちらに奪われてしまう、という事もあります。

そして、スピード感ある対応は、求職者としても嬉しく、好感度が上がる重要な要素になります。

応募者に対して好印象の対応をしており、情報も開示していても、スピード感のある対応がなければそれらが無駄になってしまいます。
対応が早い事は、基本ですが重要な事です。

2-2 ルールを見直す柔軟性がない

内定を出す時に求職者が希望する年収が、従来の社内規定だと出せないため、希望年収を下回るオファーを出した結果、内定辞退をされるという事が起こります。

また、最近ではテレワークを希望されているのに、それまでテレワークを認めていなかったためにその求職者を逃す。
副業をやっている求職者に対して、副業禁止であることを伝えて辞退される、という事も起こっています。

社内規定は、簡単に変えられるものではありません。
しかし、今は働き方に対する意識の変化も早くなっていて、それまで当たり前であった社内規定も、今の優秀な人材から見ると時代遅れであったり、働き方に合わないと敬遠されたりするようになっています。

この動きがある中、ベンチャーなど新興企業や、変化をいとわない先進的な企業は、報酬体系や制度を積極的に変えて対応してきています。

さほど変化を好まない老舗企業(大手、中小零細含む)であっても、特別な手当を付与する、ポジションを新設するなどして希望年収を満たす。
特別な規定を作り、テレワークや副業を部分的に認める対応をするなどの企業が出てきています。

社内規定が●●だから、うちは無理!と簡単に結論付けず、人事であれば今の社内規定が時代に合っているものなのか?と前提条件を疑う事。
他社はどのような取り組みをしているのか?といったことにアンテナを立てて外部の情報を得て、変えるべきものと思えばその提案をする、実際に企画するという動きが求められます。

2-3 業者に横柄

ここで言う業者とは、求人媒体会社や人材紹介会社、採用支援会社(スカウトサービス提供会社や採用代行会社など)などを指します。

人事の中には、こうした会社に対して上から目線で対応し、採用成果が出ていない時にこうした業者に当たるような対応をする人もいます。

例えば、、、

  • 求人を出したけど募集が全然来ない → 求人媒体会社を詰める

  • 内定や、選考途中で面接を辞退された → 人材紹介会社を責める

  • 母集団が集まらない → 採用支援会社を詰める

など。
私自身、前職までは「詰められる」立場。現職では「詰められる」だけでなく、ともすれば「詰めたくなる」立場でもあります。

確かに、成果にコミットも責任も感じず、高いプランを売り込む事しか考えない求人媒体会社。求職者のサポートをろくにせず、起こるべくして辞退を引き起こす人材紹介会社。成果を挙げられず値段ばかり高い採用支援会社は、実際に存在します。

「提案」と称してろくな根拠もデータも示さず、単に高いプランを売り込んできたり、サービスをもっと有効活用せよと上から目線で言ってくる会社に対して、私自身「詰めまくった」事は何回もあります。

しかし、私自身の反省も含めて言うならば、採用成果が上がらないのは、人事の責任である事は事実です。
そして、すぐに業者を責め立てるような在り方は、人事として他責な姿勢であり、関心しないと考えています。

募集媒体の効果が上がらないのであれば、まずその募集記事のクオリティを見直す。条件面でマイナスになっていないか、他社の募集記事と比較検討する。

エージェントからの紹介人材に辞退されたのであれば、自社の魅力を伝えきれていたのか?意向を高める為の努力をする余地が本当になかったのか?
母集団形成がうまくいっていなければ、業者任せにせず業者と議論し、一緒に対策を考える、等。

採用をうまくいかせるには、誰よりもまず、人事が採用に関して様々な勉強をし、ノウハウを培っていく事が求められます。

求人媒体もエージェントも採用支援サービスも、あくまで人事が活用するもの。「手段」であり、採用活動の主役は人事です。

手段を使うことで他責になるのではなく、人事が当事者意識を持って取り組むことが必要と思います。

③ まとめ

採用がうまくいかない人事の特徴は、実に様々な事が挙げられます。
それだけ挙げられるという事は、人事の役割は重要で、それだけの資質、スキルが求められるポジションでもあるのだと思います。

人事は、非常にハードなポジションと私は思っています。

管理系でありながら営業マインドが求められ、上記のように求められること、やることが多い。
しかも社内で「花形ポジション」「楽をしているポジション」「営業をしていないポジション」のように、やっかみを持って見る人も未だに存在します。

だからこそ、人事は会社の顔といえ、会社にとってのキーポジションになるのだと思います。社内のエース人材を、人事に持ってくる会社があるのも納得がいきます。
苦しいところですが、、、頑張りましょう!

最後までお読みいただきまして有難うございます。

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