採用がうまくいかない会社の3つの課題~トップの考え方編~
現在の採用市場は売り手市場。少子化が今後も進み、企業同士の人材の奪い合いの厳しさが増す中、採用がうまくいかない、苦戦をしている会社も少なくありません。
私自身、転職エージェント、再就職支援と併せて12年間転職支援を経験し、
今は10数名の小所帯な会社で、採用業務にも携わっております。
これまでの経験から、採用をうまくいかせるためにクリアすべき課題の一つとして
トップの考え方
が挙げられると思います。
この記事では、採用をうまくいかせる上での課題として「トップの考え方」に焦点を当てて解説いたします。
何かしらの参考になれば何よりです。
① トップに求められること
1-1 採用活動に対してトップが本気であること
採用を成功させるために必要なのは、何よりまず、トップが採用活動を重要な活動と捉え、採用を成功させることに本気になっていること。
そして、トップが本気であることが全社に伝わっていることです。
採用活動は、人事だけでなく、今は配属現場の人間も積極的にかかわる、人事に協力を惜しまないことが必要となっています。
しかし、配属現場にとっては、採用業務は自分がかかわる事でないと思われることも少なくありません。
トップが採用に本気であることで、まず現場の意識が変わります。
人事も、採用が事業運営に直結する重要活動であるという意識を新たにすることも期待できます。
何より、トップという何より強力な後ろ盾が得られることで、様々な社内関係者に協力を得ることが必要な採用業務を、力強く進めていくことができます。
また、トップ自身が採用業務に積極的に参加していることも重要です。
参加といっても、トップ自身が採用実務をやったり、面接官をやる、ということではありません(そのあたりは採用担当が行います)。
採用活動の進捗状況を適宜確認し、苦戦をしているのであれば必要なサポートをする。最終面接などで自身が面接官になる場合、できるだけ面接日時を調整できるようにする、必要に応じて内定を出した後のオファー面談に参加する、などが挙げられます。
まずトップが、採用に関する本気の旗を掲げることから、採用活動はスタートすると考えております。
とはいえ、大きな会社になればなるほど、トップが採用にかかわることは難しくなります。
その場合は、他の役員クラスや人事部長級の人間に任せること。任された人間は、トップの代行として責任を持って活動することが必要となります。
1-2 トップの考え方が伝わること
トップが、どのような考え方を持っていて、どのように展開していくのか、という考え方が求職者に伝わることは、採用を成功させる上で大切な事となります。
求職者は、条件を重視する人は当然ながら多いです。
しかし会社としての考え方、それを元に事業をどうしていくかを注視している方も多く、入社可否を決める動機付けにつながるからです。
トップの考え方が採用チームや現場に伝わっていることで、彼らが面接の場で求職者に伝えることができます。
伝えられることで、求職者は募集要項の内容だけでなく、会社としての考え方も十分考えて決めることができるようになります。
どれだけ条件が良くても、考え方が大きく異なる会社では、力を発揮し長く働くことは難しくなります。
採用の本当の成功は、採用ができて、且つ定着することと考えれば、トップの考え方が求職者に伝わり、共感を得ていることは重要な事となります。
② 注意すべきこと
トップが本気であること、考え方が伝わるようにする上で、その意味をはき違えないようにする必要があります。
2-1 ワンマンな選考になる
トップが採用に積極的に参加をすること=トップのワンマン選考をする、ということではありません。
採用市場の動向や求職者の志向性については、採用活動の最先端で実務を行っている人事の方が詳しかったりします。
また、配属現場の実務や、どういう人が適応しやすいかなどは、配属現場の人間の方がイメージできていたりします。
人事、現場それぞれの立場で考え方が凝り固まっていれば、それを崩して考えていくことは必要と思います。
ただ、トップが採用市場、現場状況を理解しないまま、トップの考えだけ押し付けるような事になると、人事や現場がいくら1次面接(ないし2次面接)で合格を出しても、トップの最終面接で不合格が続き、労をかけているのに一向に採用ができない、という事態に陥ります。
そうなると、人事サイドも現場に適合するかという視点や、採用市場的にチャンスがあるかという視点ではなく、単にトップが気に入るような人だけを選考通過させるようになります。いわゆる「上の顔色をうかがう仕事」です。
こうした人が入社しても、結局仕事がまともにできず早期退職、ということはよく起こりえます。
また、こうしたことが続くと、人事や現場もだんだん消極的になり、採用活動が停滞していく可能性も高くなります。
トップ自身が積極的であること自体は大切ですが、人事、現場の意見をくみ取った上で大きな方向性を示し、トップ ― 人事 ― 現場で意思統一をしておくことが重要です。
2-2 欠点探しの選考基準になる
トップは経営を指揮する立場。仕事においても社内で一番厳しく、選考の目線も当然高くなる傾向があります。
1次面接(2次面接)を高評価で通過しても最終面接でNGになるのは、トップと人事・現場とで評価の視点に乖離があることで起こります。
しかし、目線が高いことが、単に求職者の欠点探しをしてしまい、結果として厳しさの意味をはき違えていることもあります。
今の採用市場は売り手市場であり、これまで以上に会社が求めるような理想的な人材を見つけることが難しくなっています。
そのため、どうしても必要な採用要件に絞った上で、可能性を広げていく努力が必要となっています。
また、もともと採用は企業側・求職者側と対等な関係ですが、売り手市場にある中、企業側としても見極めるだけでなく、求職者からいかに選ばれるかを考えなくてはうまくいきません。
厳しさをはき違えて、求職者の良い部分を見落とし、動機付けの努力を怠り、欠点探しに走ってしまうと、本当はその会社に合うであろう人材も採用できなくなります(求職者からも選ばれなくなります)。
2-3 「任せる」を勘違いして「丸投げ」になる
特に大きな会社になれば、トップが直接採用に関与せず、他の役員や人事部長級の人間を責任者として任せる。採用を決める前の決裁だけトップ自身で行う(決裁も責任者が担うケースもある)する、というケースがあります。
その際に注意したいのは、「任せる」が「丸投げ」になっていないかどうか、ということです。
採用におけるトップの考え方について、任せる人間と共通認識を持つこと。
その上で、任せた人間の採用可否のジャッジを信頼することが大切です。
よくないケースとしては、採用の実務全般を任せておき、いざ、採用しようとなったタイミングで、様々な理由をつけて責任者の採用ジャッジを覆す、ということがあります。
これは、トップの考え方の共有が不足しているだけでなく、単にトップが任せていない、信頼していないという事も原因となります。
また、採用ジャッジだけでなく、このタイミングで採用そのものを中止する、ということになれば、そもそも採用活動を行うことを何故OKしたのか?となり、トップの信頼が損なわれる可能性があります。責任者はじめ人事、現場の労力も全て無駄になります。
任せるのであれば、責任者と十分な意思疎通をして共通認識を作った上で、最後まで任せる、ということが必要となります。
③ 求職者、転職エージェントからも見られている
今回のお話は、求人企業の内部の話で、社内でトップがどのような人で、どのような話をしているか、などは求職者には見えないことです。
それでも、採用がうまくいかない会社は常に転職サイトやハローワークにその会社の求人が掲載されていたりします。
求職者側も、長く掲載されている会社の求人に対しては、「まだ募集しているのは何か(良くない)理由があるのでは?」と考え、良いイメージを持たなくなります。
また、転職エージェントについては、最終面接だけでなく、書類選考NGなど全ての選考プロセスにおいて、不採用理由を企業の採用担当者/責任者に確認してきます。
特に、これまでの選考評価が非常に良かったのに落ちた。
例えば、これまで前向きな姿勢だった採用担当者が急に連絡をしなくなり、消極的な対応となって、選考も見送りになったなど。
ネガティブで大きな変化があった時、エージェント側も「何かおかしい」と勘づき、詳細な理由を求めてきます。
その際、その”不可解な”見送り理由mの原因がトップにあるとなれば、エージェントとしてはいくら紹介手数料が好条件であっても、その会社の求人を求職者に紹介しなくなります。
決まる見込みがない案件に注力しても、エージェントとしては売上に結び付かずビジネスとして成立しないですし、何より紹介した求職者からの信頼を失うことにつながるからです。
採用がうまくいかない状態は、求職者・転職エージェントからも見られており、採用成功が遠のく可能性があるということは考慮すべきことと思います。
④ まとめ
就活、転職フェアなどに出展する企業や、自社主催での会社説明会などで、トップが登壇して様々な話をするシーンが一段と増えてきました。
特に、大企業のような認知度がない中小企業では、その動きは活発になっています。
それだけ、採用活動はトップにとって重要な活動であることを示している表れと思います。
トップが変わることで、採用活動は大きく変わり、成功が近づく。
その意識は非常に大切と思います。
最後までお読みいただき有難うございます。