できる人でもプレゼンができない - 話すコツ -
”越境者”による”越境思考”、今回は「できる人でもプレゼンができない」ことについて。
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昨日、友人が主催するあるセミナーを参観した。メインゲストとなるスピーカーはまさに”越境者”と呼ぶのにふさわしいすさまじい越境経歴を持っていたので興味があったからだ。
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その方には1時間ほどの時間が与えられていた。しかし、結局のところその方が言いたい結論までは到達できず、最後は駆け足、早口になってしまった。大半の視聴者はこの1時間でその方の真髄、本質に迫るギフトを持ち帰ることはできなかったはずだ。
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なぜそうなったのか。
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その方は自己紹介スライドを4, 5枚準備していて、その説明に時間の80%ほどを費やしてしまったからだ。残り20%となった時点で、本論を構成するスライドは20枚以上も残っているので、消化できなかったという訳だ。
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すごい能力と実績を持っている人が話し上手とは限らないことは、長嶋茂雄が証明している。いわんやプレゼンにあまり慣れていない人をや。
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ということで、1時間で視聴者にギフトを持ち帰ってもらうためのプレゼンテクニックについて。
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(1) 自己紹介は雰囲気づくりと思っておく
(2) 結論から入る
(3) 常識を越えた問いを用意しておく
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(1) 自己紹介は雰囲気づくりと思っておく
プレゼン慣れをしていない人はだいたい自己紹介が重たい。一般的に、自己紹介には組織と肩書が羅列されている。視聴者はそんなものにあまり興味がない。興味があるのは、その人がなぜその組織を選び、その肩書で何をやってきたのか、であり、それそのものが本編を構成する要素となる。
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もっと端的に言うと、組織と肩書で自己紹介を重たく行う人は、そのこと自体にコンプレックスがある。人は組織と肩書でできている訳ではないと感じていながら、頭ではそれに縛られている。そのことを少しでも意識すると、自己紹介に対する向き合い方が変わる。
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それでも自己紹介がしたいのなら、開始時に視聴者全体の雰囲気を変えることを目的としたら良い。結果、雰囲気が変えられないのであれば、あまりやる意味はない。紹介を端折っても、怒る視聴者はほとんどいないし、いるのであれば無視すれば良い。
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(2) 結論から入る
ここでは散々物語の重要性を問いているが、そうは言っても飽きっぽい現代の視聴者たちの興味・関心を惹きつけるためには現代的なテクニックも必要になる。物語は惹きつけてからゆっくり語ろう。
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人はせっかちだ。だから結論から言う。なぜその結論に至ったのかについての、論証や説明は後からすれば良い。ポイントは、その結論が視聴者の興味・関心を十分に惹く力があるかどうか、だ。
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(3) 常識を越えた問いを用意しておく
誰もが知っている当たり前の結論を話したところで、視聴者は時間を無駄にしたと感じるだけだろう。だららこそ、十分に魅力的な結論を用意しておく必要がある。視聴者の大半が知らないこと、知ってはいるが方向性が異なること、解釈が異なること、そこに至る過程が異なること、などだ。
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そしてそれが問いかけになっているとなお良い。
視聴者が巻き込まれるからだ。
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社交辞令を続けると心が壊れます。
あなたは好きでもない相手に曖昧な返事をしていませんか?
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割り勘をする相手は重要な友人ではありません。
あなたには勘定を持ち合う相手は何人いますか?
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など。自分の結論について世の中の常識的な人々がどのように振る舞っているのかを想像し、自分の結論によってその人々がどのように変化するのか、そしてそのこと自体を人々がどのように検証すれば良いのか、を問いに変える。
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日本人は最初に課題を構造化して考えて、それを解いていくことが苦手で、目の前にある問題をコツコツと解決し続けることが得意だ。結果として、当初の課題が何で、どのような問いを立てて、結果として何を解決して来たのかが、整理されていない。本人も分かっていない。
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だから、経歴から始まり、その過程をダラダラと話すことになる。
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このような背景があるからこそ人前でのプレゼンは、人に自分の人生における問いが何で、結論がどのようなもので、その過程で具体的に何をしてきたのか、について整理をする良い機会となる。
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プレゼンすることによる人生棚卸し。
上記の3点を意識しながら是非試してみて欲しい。
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