「体験過程」の漠然としたイメージ: ジェイムズやベルクソンをてがかりに
ジェンドリンの著作では、「体験過程 (experiencing)」は、「単位となった体験 (a unit experience)」とは対照的に、数えられない名詞として使われることがほとんどです。
そして、動詞erlebenをそのまま名詞形にしたdas Erlebenの時にも、ジェンドリンはexperiencingという独自の英訳語を当てています。
しかし、数えられない、流れとしての体験過程という発想を理解するためには、ヴィルヘルム・ディルタイの著作よりも、ウィリアム・ジェイムズやアンリ・ベルクソンの著作をむしろ私は参考にしています。
まず、ジェイムズの「意識の流れ」という考え方はもちろん参考になります。
次に、「体験過程」のこうした特徴を直観的に理解する上で、私を助けてくれたものをもう一つ挙げましょう。ベルクソンが彼独自の「持続」という切れ目のない原初的な状態について論じているところです。
ただし、ジェンドリンは、ベルクソンと違って、「言葉や概念は信頼できない」とか、「空間化されていない純粋な時間——『持続』が優位である」という立場には立っていません。
文献
アンリ・ベルクソン [著]; 原章二 [訳] (2013). 思考と動き. 平凡社
Gendlin, E. T. (1950). Wilhelm Dilthey and the problem of comprehending human significance in the science of man. MA Thesis, Department of Philosophy, University of Chicago.
Gendlin, E. T. (1962/1997). Experiencing and the creation of meaning: a philosophical and psychological approach to the subjective (Paper ed.). Northwestern University Press.
ウィリアム・ジェイムズ [著]; 今田寛 [訳] (1992). 心理学 (上). 岩波書店.