映画 La Strada「道」、映画批評は苦手です
私は、映画であれ、音楽であれ、小説であれ、あらゆる創作作品は、四の五の言わず、解説に頼らずとにかく直接見たり聞いたり読んだりした方がいいと思っているので、作品を評価することは後回しにしたほうがいいと思っています。
映画 La Strada「道」は、黒澤明監督の「七人の侍」と同時期1954年のイタリア映画で、戦後初めてイタリアの映画として日本に配給されました。この「道」が「シネフィルWOWOW プラス」で無料公開されていたので鑑賞しました。
上記の山下泰司さんのnoteの解説はとても親切丁寧でとても共感できるもので、読者に対してとても思いやりのある文章です。
実は、この「道」が無料公開されていることを、いつもお世話になっている友人でもあるアニメーション監督に教えてもらいました。
映画は、カメラを通して、人間模様を映し出すものだと私は思っていますが、この「道」が描き出そうとしたものは、「人の愚かさと人の優しさ」のシンメトリーだと思います。愚か者と優しき人のシンメトリーの描き方が、この映画の秀逸なところです。
この物語のあらすじっぽいものは、あってもなくてもどうでもいいものですが、ただ一言言えるとすれば、この映画は「楽しくも不条理で悲しい物語」です。
楽しくも不条理で悲しい物語はいつの時代にもあり、社会がどんなに世知辛くても、どんなに成熟して豊かになってもなくなりません。
「道」が描く「楽しくも不条理で悲しい物語」の構造の中心は、「愚かな男」と「優しき女」との二人ですが、男の愚かさを映し出す鏡のような存在として、「優しき男」も登場します。物語構造としては、それほど複雑ではありません。
今の映画やドラマの物語構造はどんどん複雑化していますが、描かれる人間模様は本質的には変わらないと、私は思っています。
古い名画を鑑賞して、つくづく思うのは、物語構造が単純であっても、CGを使った凝った演出がなくても、人間ドラマを丁寧に描き伝えてくれているなということです。
そしてまた思うことは、名画が描く人間模様は普遍的なところがあり、時代が変わっても、人間って変わらないなということがわかります。だから名画は何度見ても飽きないのだと思います。