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課長の最重要任務:部下のモチベーション管理と維持:いまのたかの組織ラジオ#208

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第208回目「課長の最も大事な仕事」でした。ここでは、中間管理職、特に課長という役割において最も重要とされる仕事についての議論です。
 課長という立場が果たすべき責務の中で「部下のやる気を管理し、高め、維持すること」がどれほど大切であるかということが最も大きなテーマになっています。ポイントを整理し、企業、人事としてどう考えるかを考察してみます。

1. 部下のやる気を管理することの重要性

 課長の最も重要な役割として強調しているのは、「部下のやる気を管理すること」です。この点は、単に日常の業務を遂行させるだけではなく、部下が前向きに、そして意欲的に仕事に取り組むように促すことを意味します。モチベーション管理とは、部下の意欲を維持することに加えて、それをさらに向上させ、長期的に高いモチベーションを保つことが目的となります。これが成功すれば、部下は自発的に行動し、課題に対して積極的に取り組むようになり、最終的にはチーム全体のパフォーマンスが向上します。

 「エナジーヴァンパイア」と「アクティブエナジャイザー」という対比的な例が提示されています。エナジーヴァンパイアは、職場のエネルギーを吸い取り、部下のやる気を奪ってしまう存在を意味し、職場の雰囲気を悪化させます。
 逆に、アクティブエナジャイザーは、職場に前向きなエネルギーを供給し、部下を鼓舞し、チーム全体のモチベーションを高める存在です。この2つのタイプの違いは明確であり、課長としては意識的にアクティブエナジャイザーになることが求められます。どれほど優れた技術や知識を持っていても、部下のやる気を引き出せなければ、最終的な結果には結びつきません。したがって、課長にとっての最優先事項は、部下がエネルギッシュに働ける環境を整えることなのです。

 この「モチベーション管理」が成功すれば、チーム全体が一体感を持ち、共通の目標に向かって進むことができます。逆に、エナジーヴァンパイアのようなリーダーがいると、部下たちはやる気を失い、最悪の場合、職場全体がネガティブな方向に進んでしまいます。こうしたリスクを避けるためにも、課長は積極的に部下のやる気を引き出し、維持するリーダーシップを発揮することが求められるのです。

2. 部下を個人として理解すること

 部下を管理するうえで、単に業績や結果を見るだけでなく、「個人」として深く理解することが課長には求められます。これは、部下を一人ひとりの「人間」として尊重し、彼らのバックグラウンドや価値観に関心を持つことを意味します。「個人として理解する」とは、部下の過去の経験や家族構成、趣味、価値観、そして強みや弱みといった要素を包括的に知ることを指します。このような情報を持つことで、課長は部下の仕事の進め方や悩みに対してより的確なサポートを提供でき、部下に対して「自分のことを理解してくれている」という信頼感を生むことができます。それには、私も散々述べていますが、「部下を観察する」ということが大切であると思います。

 部下がしばしば「自分のことを見てもらえていない」と感じることは、仕事に対する不満やモチベーションの低下につながります。課長が部下と頻繁にコミュニケーションを取り、一人ひとりに対して注意深く目を向けることが必要です。課長が「自分は部下をちゃんと見ている」と思っていても、実際には部下にその思いが伝わっていないことが多いでしょう。課長が本当に部下を理解し、意見や感情に耳を傾ける姿勢を持つことで、部下はより積極的に仕事に取り組むようになります。

 また、部下を「人間として扱う」ことが、信頼関係を築くうえで非常に重要です。部下を単なる「労働力」や「駒」として見るのではなく、彼らのキャリアや成長に対して真剣に向き合い、支援する姿勢を持つことが、課長の仕事の一部です。部下が「自分は大切にされている」「課長は自分のことを理解してくれている」と感じることで、モチベーションが高まり、職場全体の雰囲気も良好になります。

3. 将来のビジョンとの連携

 部下のモチベーションを向上させるためには、現在の仕事が彼らの将来の目標やビジョンにどう結びついているかを理解し、それを明確に示すことが不可欠です。この文章では、課長が部下の「将来」を知ることが、モチベーション管理において極めて重要であるとしています。
 課長が部下の過去や現在の状況だけに焦点を当てるのではなく、彼らの将来の目標やキャリアパスに対するビジョンを共有し、それに向けたサポートを行うことで、部下は自分の仕事に対する意義を見出しやすくなります。

 例えば、部下が「今の仕事が将来の自分にどう繋がるのか」を明確に理解できるように課長がサポートすることで、彼らのモチベーションは大きく向上します。部下に対して将来の目標やビジョンについての対話を促し、それに基づいた指導やアドバイスを行うことは、課長にとって不可欠な役割です。このような対話を通じて、部下は自分の成長に対する期待を高め、日々の業務に対してより前向きな姿勢を持つようになります。

 また、課長が部下の「将来」を知り、そのビジョンに基づいてアドバイスを行うことで、部下は自分のキャリアに対する方向性を確認しやすくなります。部下が「今何をすべきか」「将来に向けてどう成長すべきか」を具体的に考えるための支援を行うことは、課長の重要な役割の一つです。こうした取り組みがあることで、部下は自分の仕事に対する意欲をさらに高め、職場での成果も向上します。

4. 組織の文化と環境

 次に、部下が自由に将来のビジョンや目標について語れるような職場環境を整えることが、課長の責務として挙げられています。職場内で、単に業務の遂行にとどまらず、部下が自分のキャリアや将来に対する考えを共有できる環境を作ることが、モチベーションを維持するうえで非常に重要です。特に、課長が積極的に部下との対話を促進し、彼らが自由に夢や目標を語れる雰囲気を作ることで、チーム全体のモチベーションも向上します。

 逆に、仕事以外のことを話すことがためらわれるような雰囲気がある場合、部下は自分の将来について考えたり、それを課長と共有することが難しくなります。その結果、現在の仕事に対するモチベーションが低下し、目の前のタスクだけをこなすような状況に陥りがちです。課長の役割は、こうした状況を避け、部下が自分の将来についても自由に話せる職場環境を整えることです。このためには、課長自身がオープンな姿勢を持ち、部下とのコミュニケーションに時間を割くことが求められます。

 具体的な例として、課長が部下の夢や目標について定期的に話し合うことが挙げられます。多くの部下は「自分の将来について話す機会がない」「夢や目標について話したことがない」と感じていることが少なくありません。課長がこのような対話を積極的に促すことで、部下は自分の将来に対するビジョンを明確にし、それに向かって努力する意欲が高まります。課長にとっては、部下の将来を知り、それに向けたサポートを行うことで、チーム全体のパフォーマンスが向上することに繋がります。

5. トラブルや危機に直面した時の対応

 さらに、組織や会社がトラブルや危機に直面した時に、課長がどのように対応するかも非常に重要です。業績が悪化したり、予期せぬ問題が発生した場合、部下たちは一時的にモチベーションを失うことがあります。こうした時に、課長が適切にリーダーシップを発揮し、部下を支えることで、チーム全体の士気を保つことができます。課長の冷静かつ前向きな対応は、困難な状況でもチームを前進させるために欠かせません。

 例えば、高野氏が取り上げていた、リーマンショックのような大規模な経済危機が起こった時、多くの企業が困難に直面しました。この時期、課長としての役割は非常に大きく、部下たちが失望や不安を感じる中で、彼らの士気を維持し、前向きなメッセージを発信することが求められました。過去の成功体験や顧客からの評価を思い出させることで、部下たちは自信を取り戻し、再び前向きに仕事に取り組むことができるようになります。

 特に、外部からの評価や過去の成功に基づいたフィードバックは、部下たちが現在の困難な状況を乗り越えるための大きな励みとなります。課長として、これまでの努力が無駄ではなく、将来に繋がっているというメッセージを伝えることが、困難な時期において非常に重要です。このような時こそ、課長がリーダーシップを発揮し、部下たちに希望を持たせることが必要です。

 また、課長自身が過去の成功体験を共有することで、部下たちに「自分たちは過去にこれを成し遂げた」という誇りを持たせることも有効です。このように、課長がチームを支える役割を果たすことで、部下たちは困難な状況でも自信を持って取り組むことができ、最終的にはチーム全体のモチベーションを高めることができます。

まとめ

 繰り返し述べられている、課長としての最も大事な仕事は「部下のやる気を維持し、高めること」であるということです。どれだけ優れたスキルや知識を持っていても、部下がやる気を失ってしまえば、その成果は得られません。課長は、部下のモチベーションを高めることができるかどうかで、チーム全体のパフォーマンスや成功が決まると言っても過言ではありません。

 この役割を果たすためには、部下を個人として深く理解し、彼らの過去だけでなく、将来に対する目標やビジョンを共有することが大切です。また、職場内で自由に将来のビジョンについて話せるような文化を作り、部下が自分のキャリアについて考える機会を提供することも重要です。さらに、組織が困難な状況に直面した時には、課長が冷静にリーダーシップを発揮し、部下たちの士気を保ち、前向きなメッセージを発信することが求められます。

 課長がこれらの要素を実践することで、チーム全体のモチベーションが向上し、より高いパフォーマンスを発揮できるようになります。特に、部下の将来に対するビジョンを共有し、それに向けたサポートを行うことで、部下は現在の仕事に対して意義を感じ、積極的に取り組むことができるようになります。このように、課長の最も重要な役割は「部下のやる気を管理し、高め、維持すること」であり、これがなければ、どれだけ優れた戦略や計画があっても成功は難しいでしょう。

人事の視点から考えること

 課長が部下のモチベーションを管理し、高めることが組織全体にどのような影響を与えるのか、また、人事部門としてどのようなサポートができるのかを考え手みたいと思います。

1. 人材育成とパフォーマンス管理

 課長の役割において、最も重要な要素の一つは「部下のやる気を管理し、向上させること」です。これを人事の視点から捉えると、課長が部下のモチベーションを適切に管理することは、組織全体の人材育成の基盤となるものです。部下が自ら意欲を持って業務に取り組むことで、その成長が促進され、ひいては組織の競争力を高めることにもつながります。

 まず、課長は部下の強みと弱みを深く理解し、その上で適切なフィードバックを提供することが重要です。このプロセスは、部下のパフォーマンスを向上させるだけでなく、長期的なキャリア形成においても重要な役割を果たします。こうしたパフォーマンス管理をサポートするために、課長に対して効果的なフィードバックの手法や、部下のキャリアパスを理解するためのツールを提供する必要があります。

 具体的には、課長が部下の成長を正しく評価し、彼らに成長機会を提供できるように、人事部門は研修やコーチングプログラムを用意することが有効です。たとえば、部下が自分の弱点を克服し、強みを伸ばすための具体的なアクションプランを作成する手助けを行うことが、課長の役割として期待されます。このように、部下の能力開発を課長が主体的に支援できるよう、人事部門は定期的に研修やワークショップを開催し、課長自身のスキル向上を図ることが重要です。

 さらに、課長が部下のパフォーマンスを正確に評価し、適切なフィードバックを行うことで、部下のモチベーションを維持することが可能になります。人事部門としては、課長がパフォーマンス管理に必要なデータや評価基準を持っているかどうかを確認し、必要に応じてデジタルツールの導入や評価制度の改善を行うことも求められます。

2. メンタルヘルスと働きがいの向上

 「部下のメンタルヘルスを管理すること」も非常に重要です。部下が自分のことを課長に理解されていないと感じる場合、仕事に対する不満やストレスが溜まり、最終的にはメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。課長が部下のメンタルヘルスに配慮できるよう、定期的なトレーニングを提供し、職場のメンタルヘルス環境を整えるサポートを行うべきです。

 具体的なアプローチとしては、定期的なアンケート調査や面談を通じて、部下が抱えているストレスや悩みを把握する仕組みを整えることが考えられます。こうした情報を元に、課長が部下のサポートを適切に行えるようにすることが、人事部門の役割です。また、課長が部下の個々の状況を深く理解し、適切なサポートを提供することで、部下のストレス軽減につながり、結果的に組織全体のメンタルヘルスの向上に寄与します。

 また、「働きがいの向上」も、部下のモチベーション管理において重要な要素です。働きがいとは、仕事に対する充実感や、仕事を通じて自己実現ができているという感覚を意味します。課長は、部下が自分の仕事に意義を感じ、働くことに喜びを見出せるよう、仕事の意義や目的を定期的に説明し、部下が目指すべき目標を明確にすることが求められます。

 課長が部下に対して適切な目標設定を行い、その達成をサポートできるよう、適切な評価制度やインセンティブ制度を整備することが重要です。また、職場全体のエンゲージメントを高めるために、定期的に従業員満足度調査を実施し、その結果をもとに課長が改善点を見つけ、働きがいを向上させる施策を講じることも効果的です。

3. 目標設定と評価システムの整備

 課長が部下の将来に対するビジョンを共有し、それに向かってモチベーションを高めるためには、明確な目標設定が不可欠です。部下に対して適切な目標を設定し、その達成度を評価することは、課長にとって重要な役割の一つです。課長が効果的に目標設定を行い、適切な評価を行えるようなサポート体制を整える必要があります。

 たとえば、SMART目標(具体的、測定可能、達成可能、現実的、期限を設けた目標)を活用することで、部下が明確なゴールを持って仕事に取り組めるようにすることが考えられます。課長が部下に対して明確な目標を設定し、その進捗を定期的に確認することで、部下は自分の成長を実感しやすくなり、モチベーションが向上します。

 また、評価システムにおいては、公平かつ透明性のあるプロセスが求められます。部下が自分の努力や成果が正当に評価されていると感じることが、仕事への意欲を維持するために重要です。課長が公正な評価を行えるよう、評価基準を明確にし、評価プロセスを一貫して適用するためのトレーニングを提供することが求められます。

 さらに、評価結果を基にしたフィードバックも重要です。課長は、評価の結果だけでなく、どのように改善すべきか、どのような点が評価されているかを具体的に伝えることで、部下が自己成長を実感しやすくなります。人事部門は、こうしたフィードバックを行うためのガイドラインやツールを提供し、課長が効果的に部下の成長をサポートできるようにすることが重要です。

4. 組織文化とリーダーシップの強化

 課長が部下とのコミュニケーションを深め、将来のビジョンを共有するためには、組織全体としてオープンで信頼できる文化が必要です。組織全体のリーダーシップを強化し、部下が自由に意見を述べたり、将来のキャリアについて話し合える環境を整えるためのサポートを行うべきです。

 具体的には、リーダーシップ研修やコーチングプログラムを提供し、課長がリーダーシップを発揮できるようにすることが重要です。課長が適切なリーダーシップを持ち、部下を前向きに導くことで、チーム全体のモチベーションが向上し、組織全体のパフォーマンスも向上します。

 また、課長自身がアクティブエナジャイザーとして、部下に対して前向きなエネルギーを供給できるよう、リーダーシップスキルを強化するためのトレーニングやサポートを提供することが効果的です。リーダーとしての成長が、組織全体の成功に直結するため、課長のリーダーシップスキルを育成することは非常に重要です。

 さらに、組織内でのフィードバック文化を強化することも、課長と部下の関係を良好に保つために重要です。課長が部下に対して日常的にフィードバックを行い、改善点や成功点を共有することで、部下は自分の成長を実感しやすくなります。このようなフィードバック文化を推進するために、定期的なトレーニングやワークショップを提供し、組織全体でのフィードバックの重要性を浸透させる必要があります。

5. 危機管理とレジリエンスの育成

 組織や会社がトラブルや危機に直面した時、課長が部下のモチベーションを維持し、前向きなメッセージを発信する役割を果たすことが求められます。特に、業績が悪化したり、会社が大きな問題に直面した際、課長が適切にリーダーシップを発揮し、部下を支えることが組織全体のレジリエンスを高める鍵となります。

 課長が危機管理能力を高めるためのトレーニングやシミュレーションを提供することが効果的です。たとえば、危機時にどのように部下を支え、モチベーションを維持するかについての具体的な事例やシナリオを用いた研修を行うことで、課長が実際の状況で冷静に対応できる力を養うことができます。

 また、課長が困難な状況でも部下を前向きに導くためには、普段からの信頼関係の構築が重要です。日常的に部下とのコミュニケーションを大切にし、彼らの悩みや課題に寄り添うことで、危機時にも課長の指示やアドバイスが効果的に機能します。こうした信頼関係の構築を支援するための研修やメンタリングプログラムを提供することが求められます。


 課長の役割は単なる業務遂行だけでなく、部下の成長やモチベーションを引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要な要素です。人事部門としても、課長がこれらの役割を十分に果たせるように、さまざまなサポートや教育プログラム、評価システムを提供し、組織全体の成長と成功に貢献する役割を担うことになるでしょう。


課長が自信を持ってチームと積極的にコミュニケーションを取り、部下たちがやる気に満ちた職場のシーンです。課長は、リーダーシップを発揮しつつ、親しみやすい雰囲気で部下に指示を出し、チームは積極的にアイデアを共有しながら協力的な姿勢を見せています。明るくソフトな照明が、チーム全体に活気と生産性をもたらし、ポジティブな職場環境を強調しています。


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