支援実績:人事課題(女性リーダー育成、人事制度運用サポート)ー2024年、卸売業
2024年に、某企業A社様(卸売業)の人事課題支援を行いました。簡単に内容を紹介します。当内容の公表は支援企業様からの承諾済みではありますが、大枠の内容に止めていることはお許しください。
A者様に対しては、2023年にも支援を行っていますが、少し時間を置き、テーマを変えて支援を実施させていただきました。以下は2023年の支援内容でした。
以下に、今回の実施概要をまとめます。
支援企業・実施概要
業種、従業員規模:卸売業、従業員100名程度
場所:(自身の居住地である)福島県外の地方企業
実施期間:2024年4月~2024年12月
方法:現地訪問(数回)+オンライン(1回/1~2週)
主たる窓口:人事担当取締役および課長
内容:女性リーダー育成、人事制度運用サポート(管理職向け)
女性リーダー育成の支援活動
同社では、次世代の管理職候補として女性リーダーを積極的に任命し、彼女たちがリーダーシップを発揮できる環境を整えるための活動を本格的に開始しました。同社は女性リーダーの育成を支援するためのさまざまな施策を実施しています。
その中で、具体的な進め方のアドバイス、女性リーダー向けの研修の実施、さらに研修後の継続的なフォローアップなどを実施しました。これにより、女性リーダーが安心してリーダーシップを発揮できるようになってきたと考えています。
女性活躍推進法の背景
2016年に施行された女性活躍推進法は、女性の社会進出を後押しし、特に企業において女性社員の活躍を促進するための法的な枠組みを提供しています。当初、この法律は従業員数が301人以上の大企業を対象としていましたが、その後段階的に対象範囲が拡大され、現在では従業員数が101人以上の企業にも適用されています。A社においても、この法令の適用基準近づいているため、女性リーダーの登用や育成は急務となっていました。
この法律は、企業に対して女性社員の採用や昇進を積極的に進めることを求めており、特に女性を管理職に登用するための取り組みが重要視されています。また、企業には女性に関する様々な情報を開示し、その透明性を高める責務が求められています。
この取り組みは、特に中小企業においても重要な課題となります。大企業と異なり、まだ十分な体制が整っていない中小企業では、女性活躍推進に向けた取り組みが他社との差別化を図る一つの大きな機会となります。女性が活躍できる環境を整えることは、優秀な人材の確保に貢献し、さらには企業イメージの向上にもつながると考えられています。
企業としてのメリット
企業にとって、女性活躍推進への取り組みは単なる法的な義務ではなく、長期的な競争力を高めるための戦略的な一環となるものです。女性社員の採用や管理職への登用を積極的に進めることにより、多様性のある職場環境が形成され、それが企業の創造力やイノベーションを促進します。
また、女性社員が活躍できる職場は、企業全体のエンゲージメントや働きがいを高め、離職率の低下にも寄与します。さらに、女性活躍に向けた取り組みは、社会的責任を果たす企業としてのイメージアップにもつながり、消費者や取引先からの評価向上にも寄与します。
アンコンシャスバイアスの問題
支援の中で、女性リーダー向けに女性活躍推進法の背景や企業に与える影響に加え、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)の問題についても詳しく説明しました。
アンコンシャスバイアスとは、性別や年齢、出身地などに対する無意識の固定観念のことを指し、それが個人の能力や適性を公正に評価することを妨げる場合があります。特に、職場においては、残業や育児休暇の取得、プロジェクトへのアサイン、さらにはキャリアアップや研修の機会など、様々な場面でアンコンシャスバイアスが影響を及ぼす可能性があります。これらのバイアスは、企業が多様な人材を活かし、彼らの能力を最大限に引き出すための障害となり得ます。
アンコンシャスバイアスに対する取り組み
アンコンシャスバイアスを完全に排除することは容易ではありませんが、まずは「その存在に気づく」ことが重要です。多くの人が、自分にはバイアスがないと信じていますが、実際には誰しもが無意識のうちに何らかの偏見を持っているものです。そのため、まずは自分自身の言動や態度を振り返り、自分がどのような固定観念を持っているのかを認識することが、改善の第一歩となります。
参加したリーダーたちから、アンコンシャスバイアスに関する具体的な質問や意見が寄せられました。
例えば、「アンコンシャスバイアスが根強い職場環境では、どのように対処すればよいか」「上司に理解してもらえない場合、どのように働きかけるべきか」といった問いがありました。
これに対して、まずは自身がアンコンシャスバイアスの存在を自覚し、少しずつその意識を周囲に広めていくことなどのアドバイスを実施しています。
また、組織全体としての共通認識を形成するために、特に管理職レベルでの意識改革が求められます。管理職がアンコンシャスバイアスについて理解し、部下に対する評価や対応においてそれを排除しようとする努力が重要です。さらに、こうした取り組みは短期間で結果が出るものではなく、時間をかけて粘り強く実践し続けることが必要です。管理職への支援については後述の内容で実施しています。
女性リーダーの育成は、個人の成長だけでなく、組織全体の成長にもつながる重要な取り組みです。女性が活躍できる環境を整え、多様な視点を取り入れた経営を推進することは、企業の競争力を高めるだけでなく、社会的な責任を果たすことにもつながります。したがって、女性リーダーの育成を進めることは、企業にとって極めて重要な課題であり、持続可能な成長を実現するための一つの鍵となるでしょう。
管理職の方へのフォローアップ実施
2023年より人事制度構築、評価者研修・被評価者研修を実施し、本年は上記女性リーダーの方への支援を行ってきました。
時間も経過し、大分浸透してきましたが、しっかりと浸透させるためには、継続的な運用支援が必要になりますし、また、上記女性リーダーの方の支援を実施したことで、全体のレベルが上がっています。管理職の方への継続的なフォローアップが必要となってきます。人事関連の制度は、継続的なフォローアップこそが命といっても良いでしょう。
今回は、研修の主なテーマとして評価とフィードバック、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)への対応(女性リーダー視点でも取り上げた)、そしてハラスメント防止に関する具体的な知識と実践方法を取り上げげました。管理職が日常の業務において部下をどのように適切に指導し、評価を行い、フィードバックを効果的に伝えるかについて、理論と実践の両面から理解を深めていただきました。
ダイジェストですが、実施した内容の要点になります。
1. 評価の考え方全般のおさらい
評価のプロセスは、期首の目標設定から始まり、期中の指導、期末の評価、そしてフィードバックという4つのステップで構成されています。これらのプロセスは、管理職が評価を行う際に適切に実施することが求められます。
また、人事考課の目的としては、部下の処遇を決定することと、部下の成長を促進することが挙げられます。処遇の決定は、考課結果に基づき、報酬や昇進、異動などが決まります。一方で、部下の成長においては、評価結果をもとに能力開発の方法を検討し、成長に結びつけることが重要です。人事考課は、どうしても処遇の決定のみが注目されがちです。
さらに、評価が適切に運用されるためには、会社、評価者、そして被評価者が三位一体となって協力することが求められます。この協力関係が、効果的な人事評価制度の運用を支える基盤となります。
2. 部下の観察とフィードバック
部下を適切に評価するためには、上司が日常的に部下の行動を観察し、その観察に基づいてフィードバックを行うことが重要です。
「行動観察シート」を活用して部下の業務上および業務外での行動を記録し、その事実に基づいて評価を行う手法を改めて確認しています。これにより、評価が客観的で公正なものとなり、部下の成長を支援するための効果的なフィードバックが可能になります。
また、フィードバックはタイムリーに行われることが重要であり、評価プロセスの中でフィードバックを適切に実施すること説明しています。
3. アンコンシャス・バイアスについて
既述の、女性リーダーに対する支援の中で、「アンコンシャス・バイアス」について取り上げましたので、管理職に対しても共有しておく必要があります。
このバイアスは、職場における人事評価や意思決定に影響を与える可能性があり、特に性別、年齢、民族などに基づくバイアスが問題となることがあります。
例えば、性別による偏見として「男性はリーダーシップに優れ、女性は感情的である」といった無意識の思い込みがあり、このようなバイアスが人事評価において不公正な結果を招くことがあります。
年齢によるバイアスも同様で、若い社員には「経験不足」という理由でリーダーシップの機会が与えられず、年配の社員には「柔軟性の欠如」という偏見がある場合があります。
これらの偏見をしっかりと理解し、人事考課に影響がないようにしなければなりません。
4. ハラスメントについて
ハラスメントは、職場における不適切な言動によって他者に精神的・身体的な苦痛を与える行為を指します。セクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)など、さまざまなハラスメントの種類とその特徴について説明しました。
その中でも特に、パワハラについては、多くの場合は、上司が部下に対して権力を利用して過剰な業務を強制したり、無視をする行為が挙げられます。
一方で、適切な指導も必要です。部下の成長を支援し、フィードバックを通じて具体的な改善策を提供する行為であり、パワハラとは異なるものです。管理職は、この違いを理解し、日常の業務において部下に対する適切な指導を心掛けることが求められます。
実施してみての所感
前年から引き続きA社様への支援を行う中で特に強く感じたのは、社員の皆さんが昨年よりも大きく成長されているという点でした。支援を通じて得られた知識やスキルを現場で実践し、それを自分たちのものとして確立しつつある姿に接することができたのは、私にとっても非常に感慨深いものでした。
特に、女性活躍推進の取り組みに関しては、中小企業にとっては難易度の高い課題であるにも関わらず、A社様はその重要性を理解し、積極的に挑戦されている点が非常に印象的でした。このような姿勢は、企業としての成長を促進するだけでなく、他社との差別化という観点からも非常に有意義であると改めて感じました。
女性活躍推進の具体的な成果としては、女性リーダーたちが次第に自信を持ち、リーダーシップを発揮できるようになってきている点が挙げられます。研修やフォローアップを通じて、彼女たちが持つ潜在能力が引き出され、職場での存在感が高まっている様子は、支援者として非常に励みになるものでした。
一方で、組織全体の風土改革の難しさもあります。女性リーダーが個々に成長しても、職場全体がその成長を受け入れ、支える環境が整っていなければ、その成果は限定的なものにとどまる可能性があります。この点については、継続的な取り組みが必要でしょう。
また、アンコンシャスバイアスの問題に関しても、管理職層を中心に着実な進展が見られました。研修当初は、自分自身にバイアスがあるとは気づかなかった参加者も多かったのですが、研修の中で具体的なケースを共有し、自己分析を行うことで、その存在を自覚し始めた方が増えてきました。このプロセスは、非常に重要な第一歩であり、今後の職場環境の改善につながるものと期待しています。さらに、アンコンシャスバイアスへの理解が深まることで、評価やフィードバックの質が向上し、部下のモチベーション向上や成長支援にも寄与している様子が見受けられました。
一方で、深いレベルでの文化的な変革には、より長い時間と努力が必要であることを痛感しました。また、女性リーダー育成の成果が組織全体に波及するには、研修だけではなく、継続的な教育プログラムやフォローアップが必要です。特に、管理職層における意識改革が進むことで、彼らが部下への評価や指導の場面でバイアスを排除し、より公正で透明性の高い環境を作り出すことができるでしょう。
私自身も、この支援活動を通じて大きな学びを得ることができました。特に、参加者の皆さんから寄せられる質問や意見は、私に新たな視点を提供してくれるものであり、それを通じて支援の内容をより実践的で効果的なものに改善することができました。
また、地方の中小企業が持つ独自の課題や強みに触れることで、今後の支援活動の幅を広げるための貴重なインサイトを得ることができたと感じています。このような双方向の学びのプロセスが、私自身の成長に繋がっていることを実感しました。
A社様のように、変革に真摯に取り組む企業と共に活動できることは、私にとって大変ありがたい機会であり、責任でもあると感じています。この支援を通じて得られた成果や課題を踏まえ、今後も引き続きサポートを継続し、さらに大きな変化を生み出すために努力してまいります。この活動を通じて得られる未来の可能性を信じ、一歩一歩着実に進んでいきたいと考えています。