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【対応シート付き】1on1のコミュニケーションスキルとL.E.T.を統合的に活用する

 1on1は、上司と部下が1対1で対話する貴重な機会であり、互いの理解を深め、信頼関係を構築し、成長を促進するための重要なツールです。この時間を最大限に活かすためには、効果的なコミュニケーションスキルが不可欠です。そのスキルは多種多様ではあるのですが、その中で、3つの重要なスキルとして、傾聴・質問・認知について、詳細な解説と具体的な事例を交えて考察しました。以下の記事です。

L.E.T.のスキルとどう統合するか

 一方、リーダー・エフェクティブネス・トレーニング(L.E.T.)で学んだ様々なスキルを効果的に活用することで、1on1の効果をさらに高めることができます。今回はその面を考察してみたいと思います。

行動の窓における、「問題のないエリア」での活用

 L.E.T.において、「問題のないエリア」とは、リーダーとメンバーの双方が問題を抱えておらず、お互いのニーズが満たされている状態です。この状態では、建設的なコミュニケーションが自然に生まれ、リーダーは、指示、指導、助言、解決策の提案、質問、評価、冗談などを、人間関係を損なうことなく行うことができます。


1on1で問題のないエリアを積極的に活用することで以下の効果が期待できます。

  • 部下のモチベーションと生産性を向上させることができます。

  • 創造性や新しいアイデアが生まれやすい環境を作ることができます。

  • リーダーと部下間の信頼関係を構築することができます。

  • チーム全体の目標達成を促進することができます。

 問題のないエリアを積極的に活用するためには、1on1における以下の3つのコミュニケーションスキルが重要です。

傾聴
 部下の話を積極的に傾聴し、共感を持って理解する姿勢を示すことで、部下は安心して自分の考えや気持ちを話すことができます。
 具体的には、部下の言葉にしっかりと耳を傾け、相槌を打ったり、頷いたりするなど、非言語的なコミュニケーションも活用しながら、部下の話を遮ることなく最後まで聞きましょう。

質問
 部下の話を深掘りし、新たな気づきを与えるために、効果的な質問を投げかけます。オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを使い分け、適切なタイミングで質問することで、部下の思考を深め、成長を促すことができます。
 例えば、部下が目標について話しているときに、「その目標を達成することで、あなたはどうなりたいですか?」といったオープン・クエスチョンを投げかけることで、部下のモチベーションや将来のビジョンを引き出すことができます。

認知
 部下の行動や成果だけでなく、その背後にある努力や成長を認め、感謝の気持ちを伝えます。「I(私)」メッセージで伝えることで、部下は自分の価値を認められたと感じ、モチベーションを高めることができます。
 例えば、部下が難しいタスクを達成したときに、「今回のプロジェクト、本当に大変だったと思うけど、最後までやり遂げてくれてありがとう。君の粘り強さには本当に感心したよ。」というように、具体的な行動と感謝の気持ちを伝えることで、部下は自分の貢献を実感し、自信を持つことができます。

問題を抱えている部下への対応

 部下の行動が、部下自身の問題を示すサインである場合は、部下の話を傾聴し、問題解決を支援する姿勢を示すことで、問題のない領域を拡げることができます。

 1on1で部下の問題解決を支援するためには、以下のスキルが重要となります。

  • アクティブ・リスニング
     部下の言葉にしっかりと耳を傾け、共感を持って理解する姿勢を示します。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーン、身振り手振りなど、非言語的な情報にも注意を払い、相手の感情や考えを正確に理解しようと努めます。
     例えば、部下が「最近、仕事でミスが多くて…」と話してきたら、「ミスが多くて、不安になっているんですね」と、部下の言葉の奥にある感情を理解し、それを言葉にして伝えることで、部下は安心して話せるようになります。


ドア・オープナー
 部下が話しやすい雰囲気を作り、心を開いてもらうための言葉です。「何か困っていることとかある?」「最近、元気がないみたいだけど、何かあった?」など、相手に寄り添う姿勢で、話を促します。部下が問題を抱えていると感じたときは、ドア・オープナーを使って、部下が安心して話せるように促しましょう。

リーダー自身が問題を抱えている場合の対応

 部下の行動が、リーダーにとって問題を引き起こすサインである場合は、I-メッセージで相手に率直に気持ちを伝え、行動変容を促すことで、問題のない領域を拡げることができます。 もし、部下がI-メッセージに抵抗を示したら、アクティブ・リスニングに切り替え、部下の話を傾聴することで、お互いに納得できる解決策を見つけることができます。

  • I-メッセージ
     相手の行動を非難するのではなく、その行動が自分にどのような影響を与え、どのような感情を抱いているのかを具体的に伝えます。
     例えば、部下が報告書の提出期限を守らない場合、「あなたが報告書の期限を守ってくれないと、私は困ります。なぜなら、あなたの仕事がチーム全体の進捗に影響を与えてしまうからです。」というように、I-メッセージで自分の気持ちを伝えます。

  • ギア・シフト
     相手の反応に応じて、伝える姿勢から聴く姿勢へと柔軟に切り替える技術です。I-メッセージを伝えた後、相手が抵抗や反論を示した場合は、アクティブ・リスニングにギア・シフトし、相手の言い分を聞きます。
     例えば、部下が「締め切りに間に合いませんでした。申し訳ありません。」と抵抗を示した場合は、「締め切りに間に合わなくて、何か困っていることがあるのかな?」と、アクティブ・リスニングに切り替えて、部下の話を聞きましょう。

対立が起きた時の対応

 部下との間に意見の食い違いや価値観の衝突などが起こり、対立が生じた場合は、メソッドⅢ(No-Lose 対立解決法)を用いて、双方にとって納得できる解決策を一緒に探すことが重要です。

メソッドⅢでは、以下の6つのステップを踏みます。

  1. 問題を特定し定義する

  2. 代替案を出す

  3. 代替案を評価する

  4. 意思決定する

  5. 解決策を実行する

  6. 解決策を評価するためフォローアップする

まとめ

 このように、1on1ミーティングでは、L.E.T.で紹介されている様々なスキルを活用することで、部下との良好な関係を築き、問題解決を促進し、組織全体の目標達成に貢献することができます。リーダーはこれらのスキルを意識的に使い分け、状況に応じて適切な対応をすることで、効果的なリーダーシップを発揮できるようになるでしょう。


モダンなオフィスで行われている1on1ミーティングの様子です。上司と部下が長方形のテーブルを挟んで向かい合い、活発な会話をしています。上司は手振りを交えて積極的に話を聞いており、部下は熱意を持って話しています。背景にはデスクやコンピューターが並ぶオープンスペースがあり、数人の同僚が働いている様子が見えます。大きな窓からは都市の景色が見え、いくつかの観葉植物が配置されていることで、プロフェッショナルでありながら温かみのある雰囲気が感じられます。

 今回の内容を1on1で使えるシートを作成しました。傾聴、質問、認知と、L.E.T.の「行動の窓」をチェックできるシートです。是非ご活用下さい。

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