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感情の波を乗りこなす:自分と他人に振り回されない生き方ー大芝義信氏

 大芝義信著『自分や他人に振り回されないための感情リテラシー事典』(フォレスト出版、2024年)を拝読しました。大芝さんは、私と同じBBT大学院を修了された方でもあります。そういえば、『ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』の西村栄基さんもBBT大学院修了生。出版される方が多いなぁ、と思います。

 私たちは日々、感情という見えない羅針盤に導かれながら生きています。喜びや希望、愛といった心温まる瞬間がある一方で、怒りや悲しみ、不安に振り回されることも少なくありません。このように感情は、私たちに幸福をもたらす源でありながら、時に混乱や苦悩を引き起こす要因にもなります。しかし、感情の仕組みを正しく理解し、それをコントロールする力を身につければ、感情は人生を豊かにする大きな味方となるでしょう。

 本書は、感情という複雑なテーマを丁寧に紐解きながら、自分の内面を見つめ、他者とのより良い関係を築くための具体的な手法を解説しています。著者の大芝氏は、長年の研究と実践を通じて、感情が私たちの生活や仕事、そして人間関係に与える影響を体系的に分析し、感情を力に変える方法を明らかにしました。

 感情の波に振り回されるのではなく、それを乗りこなす術を学ぶことで、私たちはより充実した人生を送ることができるはずです。本書はその第一歩を踏み出すための地図となり、心の羅針盤を手にする鍵を提供してくれるものでした。また、「感情」の問題は企業にとっても関心度が深い問題であります。人事視点から考察してみたいと思います。

感情の複雑さを解き明かし、心の羅針盤を手に入れる

 私たちは、まるで絶え間なく変化する波のように、日々、様々な感情の波に乗りながら生きています。喜び、高揚感、愛情といったポジティブな感情もあれば、悲しみ、怒り、恐れ、不安といったネガティブな感情も、私たちの心の中で常に渦巻いています。
 これらの感情は、私たちを動かす原動力となり、人生を彩る豊かな色彩であると同時に、私たちを混乱させ、時に制御不能な状態に陥れることもあります。朝、目覚めた瞬間の爽快感、愛する人と過ごす温かな時間、目標を達成した時の高揚感、これらは感情がもたらす幸福な側面です。
 しかし、その一方で、子供の些細なことで一日中不安を感じたり、職場での些細な出来事に激しく怒りを感じてしまったり、過去の失敗体験に囚われて将来への一歩を踏み出せない、といった経験は、多くの人が抱えている心の悩みであり、感情がもたらす苦痛の側面といえるでしょう。さらに、進学や就職、結婚など、人生を左右する重要な決断の時でさえ、感情に振り回されてしまい、後悔するような選択をしてしまうこともあります。

 しかし、感情は、私たちを苦しめるために存在しているわけではありません。感情は私たちの生存本能に深く根ざしており、危険を察知し、大切なものを守るための防衛反応として、あるいは、より良い未来へと進むための警告として、常に私たちをサポートしてきました。喜びは目標達成へのモチベーションを高め、悲しみは失ったものへの哀悼を通して新たな価値観を育み、怒りは正義感や不当な状況に対する抗議として私たちを奮い立たせてくれます。このように、本来、感情は私たちの生活に欠かせない、非常に重要な機能なのです。

 しかし、文明の発達、社会の複雑化、情報化社会の到来とともに、私たちの感情を取り巻く環境は大きく変化しました。複雑な人間関係、絶え間ない情報過多、多様化する価値観、競争社会のストレス、これらの要因が絡み合い、私たちの感情はより複雑で繊細なものとなり、時には、不必要な感情に苦しめられたり、感情に左右されて正しい判断ができなくなったり、感情的な行動によって後々後悔するような事態を招いたりすることも少なくありません。かつては命を守るための防衛反応であったはずの感情が、現代社会においては、私たちを苦しめる要因となってしまっているのです。だからこそ、感情を正しく理解し、より良い方向に導くための「感情リテラシー」を身につけることが、快適な毎日を送り、充実した人生を築く上で、不可欠な要素となっているのです。

感情リテラシーの真髄:自己理解と他者理解を深め、より豊かな人間関係を築く

 感情リテラシーとは、単に自分の感情を理解するだけでなく、その感情がどこから生まれ、どのように変化していくのか、その本質を深く理解する能力を指します。感情の波に乗りこなし、自分自身の内面をコントロールする力、そして、他者の感情を敏感に察知し、共感する力、さらに、感情をうまく表現し、他者とのより良い関係性を築く力、これらすべてを含んだ総合的な能力が、感情リテラシーなのです。

 感情リテラシーの高い人は、自分の感情を冷静に分析し、感情の波に飲み込まれることなく、常に建設的な行動をとることができます。また、他者の感情を理解する能力が高いため、相手の立場に立って考え、より円滑なコミュニケーションを築くことができます。感情的な対立や誤解を避け、より協力的で、信頼関係に基づいた人間関係を構築することができるでしょう。
 例えば、職場において、感情リテラシーが高いリーダーは、部下の感情を理解し、適切なフィードバックやサポートを行うことで、チーム全体のモチベーションを高め、より高い成果を上げることができます。また、家庭内においても、感情リテラシーの高い親は、子供の感情に寄り添い、共感的な対話をすることで、子供の成長を温かく見守り、より良い親子関係を築くことができるでしょう。

 さらに、感情リテラシーは、社会的な問題解決にも大きな役割を果たします。私たちは、日々、様々な感情を抱えた人々と接しており、怒り、悲しみ、不安、嫉妬といった感情が、時には、対立や争いの原因となってしまうこともあります。感情リテラシーを身につけることで、これらの感情を理解し、より建設的な対話や行動につなげることができます。感情に振り回されることなく、冷静に問題解決に取り組み、より良い社会を築くための第一歩を踏み出すことができるでしょう。

 しかし、感情リテラシーは、学校教育で十分に教えられる機会が少ないのが現状です。文学作品に触れて、人間の心の機微を学んだり、日々の生活の中で、感情について深く考えたりする機会がなければ、自然に感情リテラシーが身につくことは難しいでしょう。大芝氏は、長年にわたり、経営、IT、そしてEQ(感情知能指数)の専門家として、多くの企業をコンサルティングしてきました。その中で、従業員の方々が、感情リテラシーの低さによって、仕事だけでなく、私生活においても、様々な問題を抱えている現状を目の当たりにし、感情リテラシーを体系的に学ぶことの必要性を痛感したと言います。感情リテラシーは、誰もが身につけるべき、現代社会を生きる上で不可欠なスキルなのです。

本書が提供するもの:感情のメカニズムを解明し、心の羅針盤を使いこなす

 本書は、感情マネジメントの基礎となる感情リテラシーを体系的に学ぶことができる、実践的なガイドブックです。感情のメカニズムを解き明かし、感情をコントロールするための具体的な方法を学ぶことで、あなた自身の人生をより豊かに、より充実したものへと変えていくことができるでしょう。

 本書は、以下の構成で、感情リテラシーを段階的に高めていくための、具体的な方法を解説していきます。

  • 序章:感情の地図を描く

    • The Mood Meter(ザ・ムードメーター)
       
      自分の感情状態を客観的に把握するためのツールとして、心のエネルギーと気分の良し悪しを2軸で測定し、100種類の感情を示すマトリクスを紹介します。これにより、自分の感情状態を可視化し、客観的に認識することができます。

    • プルチックの感情の輪
       
      感情の構造を理解するためのツールとして、8つの基本感情を軸に、感情の強弱、複合感情の生成、感情同士の関係性を説明します。これにより、複雑な感情のメカニズムを理解し、自分の感情をより深く分析できるようになります。

  • 第1章:感情の基本要素を理解する:8つの一次感情を深く掘り下げる
     
    8つの基本感情(怒り、嫌悪、悲しみ、驚き、恐れ、信頼、喜び、予期)を、それぞれ詳細に解説します。各感情の強弱の段階、感情がもたらす身体的変化、感情の背景にある心理的要因などを深く掘り下げて説明することで、感情に対する理解を深め、感情の波に乗りこなすための基礎を築きます。

  • 第2章:感情の組み合わせを操る:複合された二次感情の理解とコントロール
     
    複数の基本感情が組み合わさって生まれる「二次感情」のメカニズムを解説します。楽観、攻撃性、軽蔑、後悔、失望、畏怖、服従、愛といった感情について、その特徴や原因を詳しく解説し、これらの感情をコントロールするための具体的な方法を提案します。

  • 第3章:感情の迷宮を解き明かす:複雑にこじれた複合感情への対処法
     
    さらに複雑な「複合感情」について、その成り立ちや背後にある心理的な要因を詳細に分析します。憧れ、嫉妬、恥ずかしさ、屈辱感、自尊心、劣等感、罪悪感、不満、孤独感、承認欲求、優越感、孤独欲、自己犠牲心といった感情を、その複雑な構造と原因を丁寧に紐解き、それぞれの感情に対して、具体的な対処法や、より建設的な感情へと転換するための方法を提示します。

  • 第4章:感情を操縦する技術:心のドライビング・テクニックで快適な感情を創造する
     
    感情に振り回されるのではなく、感情をコントロールし、より快適な状態を創造するための、実践的なテクニックを紹介します。

    • 不快な出来事を切り離す「当事者意識解消ワーク」
        
      感情的な出来事を、客観的に捉え、冷静に対処するための方法を、具体的なワークを通して学びます。

    • 「他責」ではなく「自責」で捉え直す「自己効力感」回復ワーク
       
      自分の感情や行動をコントロールできるという感覚を回復するための方法を、具体的なワークを通して学びます。

    • 感情別エマージェンシー「ToDoリスト」
        
      怒り、恐れ、悲しみといった緊急性の高い感情に対して、具体的な対処法を、ToDoリスト形式で提示します。

  • あとがき:喜びで満たされる人生を創る:感情を力に変えて輝く
     
    本書で学んだ感情リテラシーを、日々の生活にどのように活かしていくべきか、その具体的な方法をまとめ、読者一人ひとりが、より喜びで満たされた人生を創造するための、最後の指針を提示します。

本書が目指すもの:感情を味方につけ、自分らしく生きる

 本書は、単に感情をコントロールするテクニックを学ぶだけでなく、感情の本質を理解し、感情と上手に付き合うことで、より充実した人生を送るための指針を提供します。感情は、私たちの人生を豊かに彩るだけでなく、私たちが成長し、より良い未来を築くための、強力な原動力にもなり得ます。本書を繰り返し読み、その知識を実践することで、感情に振り回されることなく、感情を味方につけ、自分らしく輝き、喜びと幸福に満ちた人生を送ることができるでしょう。

人事の視点から深掘りする感情リテラシー事典:組織の成長と個人の幸福を両立させるための戦略的活用

 人事の視点から「自分や他人に振り回されないための感情リテラシー事典」を考察すると、この書籍は単なる感情コントロールのテクニック集ではなく、従業員の成長、組織の健全性、そして持続可能な発展に不可欠な、戦略的な経営資源となり得ることが明らかになります。

 人事としては、従業員の採用、育成、評価、配置、そして組織文化の醸成など、多岐にわたる役割を担っていますが、本書は、これらの活動をより効果的に推進するための、強力なツールとなるでしょう。以下に、人事の視点から見た本書の多面的な価値、具体的な活用方法、そして期待される効果について、さらに詳細に分析し、深掘りしていきます。

1. 従業員の成長と能力開発を加速する:感情リテラシーを個人の成長エンジンへ

  • 自己認識と感情理解の深化
     
    人事は、従業員の能力開発において、自己認識と感情理解を重要な要素として捉えています。自己認識とは、自分の性格、価値観、強み、弱みを客観的に理解する能力であり、感情理解とは、自分の感情がどのように生まれ、どのように作用するのかを深く理解する能力です。本書は、The Mood Meterやプルチックの感情の輪といったツールを活用することで、従業員が、自身の感情のパターンや反応、感情のトリガーとなる要因などを、より客観的に把握し、自己理解を深めるための具体的な手段を提供します。自己理解が深まることで、従業員は、自分の感情をコントロールし、より効果的な行動を選択できるようになり、自分の強みを活かし、弱みを補強するための具体的な計画を立てることができるようになります。

  • 感情マネジメント能力の体系的な向上
     
    感情は、私たちの思考、行動、意思決定に大きな影響を与える要因です。特にビジネスの現場では、ストレス、プレッシャー、人間関係の摩擦など、様々な感情的な課題に直面することが多く、これらの感情を効果的にマネジメントする能力は、従業員の仕事のパフォーマンスに直接的に影響します。本書は、一次感情、二次感情、複合感情といった感情の構造を理解し、それぞれの感情に対応した具体的なコントロール方法を学ぶための体系的なフレームワークを提供します。さらに、衝動的な感情の爆発を抑制する方法、感情的な反応をコントロールするためのテクニック、ストレスを軽減するための具体的なアプローチなど、従業員が感情の波に乗りこなし、より冷静かつ効果的に業務に取り組むための実践的なスキルを提供します。

  • キャリア開発とリーダーシップ育成への応用
     
    感情リテラシーは、単に自己管理能力を高めるだけでなく、キャリア開発やリーダーシップ育成においても重要な要素です。本書で得られる知識は、従業員が、自分の感情を理解し、効果的に表現することで、自己アピール能力を高め、キャリアアップを成功させるための戦略を立てるのに役立ちます。また、リーダーシップ研修においては、本書を活用することで、リーダーが、自身の感情をコントロールし、チームメンバーの感情を理解し、共感に基づいたコミュニケーションを実践することで、より効果的なチームを構築し、目標達成へと導くための、具体的なスキルを習得することができます。

  • 自己成長を加速させる具体的な行動指針
     
    本書は、単なる知識の提供にとどまらず、感情的な課題を克服し、自己成長を促進するための具体的な行動指針を提供します。感情の波に乗りこなすための実践的なテクニック、目標達成のための具体的な計画策定方法、困難な状況に立ち向かうための具体的な戦略、自己効力感を回復するためのワークなどを通して、従業員の自己成長を支援します。感情的な課題は、時に、成長の大きな阻害要因となり得ますが、本書は、その課題を乗り越え、より高いレベルの成長を達成するための、明確なステップと方法を提供します。

2. 組織の健全性を守り育む:感情リテラシーを組織文化の根幹

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  • ハラスメント予防と健全な職場環境の構築
     
    ハラスメントは、組織全体の生産性を低下させ、従業員の精神的な健康を害する重大な問題です。その原因の一つに、感情リテラシーの低さが挙げられます。本書は、自身の感情を客観的に理解し、コントロールする重要性を説き、感情的な衝動に任せた不適切な言動を抑制するための、具体的な方法を提供します。
     また、相手の感情を理解し、共感に基づいたコミュニケーションをとることの重要性を強調することで、ハラスメント発生のリスクを軽減し、誰もが安心して働ける、健全な職場環境を構築するための指針となります。さらに、本書で紹介されるアサーティブ・コミュニケーションスキルは、従業員が、お互いを尊重し、気持ちよくコミュニケーションをとるための具体的な行動指針を示し、より風通しの良い職場環境を醸成するでしょう。

  • チームワークの向上とコラボレーションの促進
     
    組織の成功は、チームワークにかかっていると言っても過言ではありません。しかし、メンバー同士の感情的な摩擦や対立は、チームワークを阻害する大きな要因となります。本書は、感情リテラシーを高めることで、メンバーが互いの感情を理解し、尊重し合うことができるようになり、チーム内のコミュニケーションを円滑にし、協調性を高め、より効果的なコラボレーションを促進します。感情リテラシーの高いチームは、困難な課題に対しても、お互いをサポートし、協力し合い、より創造的な解決策を見出すことができるでしょう。

  • 離職率の低下とエンゲージメントの向上
     
    感情的な問題を抱える従業員は、職場で孤立しやすく、ストレスを抱えやすい傾向にあります。このような状態が続くと、組織への帰属意識が低下し、離職へと繋がるリスクが高まります。本書は、自身の感情を適切に管理し、職場でのストレスを軽減するための具体的な方法を提供し、従業員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させる効果が期待できます。また、感情リテラシーの高い職場環境は、従業員が、自分の感情をオープンに語り合うことを許容し、互いに支え合うことができるため、安心して働き続けられる職場環境を作り出すでしょう。

  • 生産性の向上と革新的な企業文化の育成
     
    感情リテラシーの高い従業員は、感情的な課題に直面しても、冷静さを保ち、より合理的な判断を下すことができるため、業務効率の向上に貢献します。また、チーム全体の感情的なバランスが保たれることで、より建設的で創造的な議論が生まれやすくなり、革新的なアイデアが生まれやすい環境が整備されます。感情を理解し、尊重し合う企業文化は、従業員が、安心して新しいことに挑戦し、失敗を恐れずに、より創造的な仕事に取り組むことができるような、心理的安全性の高い職場環境を構築するでしょう。

  • 企業イメージ向上とブランディングへの貢献
     
    従業員が、感情リテラシーを高め、より魅力的な人間性を身につけることで、対外的な企業イメージ向上に貢献します。顧客とのコミュニケーションにおいて、感情に配慮した丁寧な対応を心がけることで、顧客満足度を高め、より強固な信頼関係を築くことができます。また、感情リテラシーの高い企業は、従業員のウェルビーイングを重視しているというメッセージを発信することで、より魅力的な企業ブランドを確立し、優秀な人材の確保と定着に貢献することができるでしょう。

3. 人事による戦略的な活用:組織全体の感情リテラシーを向上させるための具体的なアプローチ

  • 研修プログラムの再構築と高度化
     
    新入社員研修、リーダーシップ研修、マネジメント研修など、既存の研修プログラムに本書の内容を組み込むことで、研修効果をより高めることができます。感情リテラシーの基礎知識だけでなく、具体的なワークやロールプレイングを通じて、実践的なスキルを習得する機会を設けることが重要です。また、研修内容を定期的に見直し、最新の知見を取り入れることで、常に変化する社会情勢に対応できる、高度な感情リテラシーを育成するための研修プログラムを構築する必要があります。

  • 個別面談とコーチングの質の向上
     
    人事や管理職は、従業員との1on1ミーティングやコーチングの際に、本書で紹介されているThe Mood Meterなどを活用し、従業員の感情状態をより深く理解することができます。これにより、従業員が抱えている感情的な悩みや課題を早期に発見し、個々の状況に合わせた、適切なサポートやアドバイスを提供することができます。また、感情リテラシーを向上させるための具体的な目標を設定し、進捗状況を定期的に確認することも、従業員の成長を促す上で重要となります。

  • 自己啓発と継続学習の促進
     
    本書を従業員の自己啓発ツールとして提供するとともに、読書会や勉強会などを定期的に開催することで、従業員が、互いに学びを共有し、感情マネジメントのスキルを深める機会を設けることは、組織全体の感情リテラシーを底上げする上で非常に効果的です。また、オンライン学習プラットフォームや、社内SNSなどを活用し、感情リテラシーに関する情報共有や意見交換を活発化させることで、従業員の継続的な学習を促進することができます。

  • 組織文化の変革と浸透
     
    組織全体で、感情リテラシーの重要性を理解し、感情をオープンに語り合えるような企業文化を醸成するための取り組みが不可欠です。経営層から現場まで、すべての従業員が、感情リテラシーの価値を認識し、互いに尊重し合うことで、心理的安全性の高い、より働きがいのある職場環境を構築することができます。また、感情に関する社内イベントやワークショップなどを開催し、感情に対する理解を深め、組織全体の感情リテラシーを高めることも効果的です。

  • メンタルヘルスサポート体制の強化
     
    従業員のメンタルヘルスをサポートするために、専門家によるカウンセリングや相談窓口を設置し、感情的な問題を抱える従業員が、安心して相談できる環境を整備することが不可欠です。本書の内容を、カウンセリングや相談窓口での支援に活用することで、より効果的なメンタルヘルスサポートを提供することができます。また、従業員が、自身の感情の変化を早期に察知し、適切な対処ができるように、セルフチェックツールや、感情に関する情報提供を積極的に行うことも重要です。

4. 人事が目指す未来:感情を力に変え、組織と個人の両輪で成長する

人事が本書を戦略的に活用することで、以下のような成果が期待できます。

  • 従業員の自己理解と自己管理能力が向上し、より主体的にキャリアを形成できるようになる。

  • 職場におけるハラスメントや不当な扱いが減少し、誰もが安心して働ける環境が実現する。

  • チームワークと協調性が向上し、より効果的な組織運営が可能になる。

  • 従業員のストレスが軽減し、メンタルヘルス不調による休職や離職が減少し、組織の安定性が高まる。

  • 従業員のエンゲージメントと生産性が向上し、組織全体のパフォーマンスが向上する。

  • より温かく、共感的な企業文化が醸成され、より魅力的な職場環境が実現する。

  • 優秀な人材を確保し、定着させることで、持続可能な組織成長が可能になる。

  • 感情を力に変える組織文化を構築し、社会に貢献できる、より革新的な企業へと発展する。

まとめ:感情リテラシーは、人事戦略の核となる

 本書の内容は、組織の成長と個人の幸福を両立させるための、非常に強力なツールになり得ます。感情リテラシーは、個人の能力開発だけでなく、組織文化の醸成、チームワークの向上、メンタルヘルスのサポート、ハラスメント予防など、人事部の活動全般に大きな影響を与える、戦略的な要素となります。

 人事としても、本書を積極的に活用し、従業員一人ひとりの感情リテラシーを高めることで、より健全で、より生産的で、より魅力的な組織づくりを目指すべきです。感情を理解し、尊重し、そして活かす、それが、これからの人事部が、組織を成功に導くための、重要な役割なのです。感情リテラシーを、組織の成長と個人の幸福を両立させるための原動力として、戦略的に活用していくことが重要と思います。

感情のバランスを象徴する柔らかなグラデーションと、感情を象徴するアイコンが織り込まれています。中心のコンパスが感情リテラシーの象徴として、見る人の心に響くデザインです。感情理解への旅をさらに豊かにする手助けとなります。


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