【書籍】『致知』2024年4月号(特集「運命をひらくもの」)読後感
致知2024年4月号(特集「運命をひらくもの」)における自身の読後感を紹介します。なお、すべてを網羅するものでなく、今後の読み返し状況によって、追記・変更する可能性があります。
巻頭:高千穂神社宮司 後藤俊彦さん 「国民の心意こそが国家発展の力の源泉」p7
後藤氏による巻頭言では、国民の心意が国家発展の源泉であり、共生の道を歩むこと、そして「和」の大切さを強調しています。能登半島地震や羽田空港の事故など、災害や困難に見舞われた日本での経験を通じて、国民が一体感を持ち、相互に支え合う文化が形成されてきたことを述べています。また、寺田寅彦氏の「天災と国防」を引用し、科学的常備軍の必要性を説く一方で、諸行無常の仏教教えが日本人の災害に対する心構えに影響を与えていることを指摘します。
日本文化の深さを『源氏物語』や節分の習俗などを例に挙げながら説明し、日本の伝統と精神性、大和魂の重要性を強調しています。大和魂は、和魂漢才の精神であり、日本人が大切にしてきた清浄直心の心であると説明しています。
日本の伝統文化と精神、そして国民一人ひとりの心意が国の未来を形成する上での重要性を訴えかけるものです。災害や困難に立ち向かい、共生と和の精神を大切にすることで、国が発展し、より良い未来を築くことができるというメッセージが込められています。まさに、国民の心意こそが国家発展の力となるわけです。
後藤氏の言葉は、日本の伝統と精神性に対する深い洞察と敬意を示しています。彼の言葉は、災害と共生、歴史的な文化遺産の価値、そして政治や社会の課題に対する洞察を織り交ぜながら、日本の国民としてのアイデンティティと、国家としての方向性を模索する重要性を強調しています。人事の立場から見ても、多くの示唆に富んだ点があります。
災害と共生
後藤氏は、自然災害という日本が直面する課題を通じて、国民が示す「共生の道」と「和」の精神を称賛しています。企業文化においてもこのような精神を根付かせることが重要です。困難な時期においても、従業員が互いに支え合い、一体感を持って乗り越える力は、組織のレジリエンスを高める上で不可欠です。災害時の対応だけでなく、日常の業務においても、共生と和の精神を組織文化に取り入れることで、より強固なチームワークと組織の一体感を育むことができます。
歴史と文化の価値
「源氏物語」や節分の習俗など、日本の歴史と文化の豊かさを通じて、大和魂を語っています。企業文化を形成する上で、歴史や伝統に学ぶことの価値を再認識することが大切です。企業の歴史や創業者の精神、業界内での伝統的な価値観を理解し、それらを現代のビジネス環境に適応させることで、独自の企業文化を築き上げることができます。また、従業員に対しても、企業の歴史や文化を学ぶ機会を提供することで、組織に対する帰属意識と誇りを高めることができるでしょう。
リード:藤尾秀昭さん 特集「運命をひらくもの」p12
2024年1月27日の、「致知新春特別講演会」の開催と、その中で語られた運命に関する内容が紹介されています。講演会では、禅の高僧・青山俊董氏と作家の五木寛之氏が、長年にわたる彼らの経験と智慧を共有しました。彼らは、お釈迦様の教えを人生の信条とし、生涯現役であり、一筋の道を六十年歩み続けるという三つの共通点を持っています。
羽生善治氏の「一つのことに対して長年、同じ姿勢、情熱を傾けることが才能」という言葉を引用し、一つの分野に対する長期間の献身が天才性の一形態であると述べられています。天からの助けが得られるという考えは、稲盛和夫氏や二宮尊徳の言葉を通じても語られ、これは一心不乱に本業に取り組む人々に対してのみ訪れるとされています。
運命を開くための第一条件は、本業に没頭することであり、運命は人の心が創り出すものであると強調されています。心が荒れがちな時には、聖賢の教えや良い言葉に触れることで、心の雑草を取り除くことができると説かれます。
また、常岡一郎氏の言葉を引用し、運命に対する姿勢が人生の興亡を左右すると述べられています。松下幸之助氏の例を挙げ、困難な時期も決して悲観せず、一生懸命生きることの重要性が説かれています。最終的に、心構えによって運命が変わるというメッセージで締めくくられ、読者に対して運命を開くための実践的なアドバイスが与えられています。
この特集記事から浮かび上がるのは、長期にわたって一つのことに情熱を傾け続ける人々の素晴らしさと、その姿勢がいかにして運命を開く鍵となるかという点です。人事の立場からも、個人の成長、組織の発展、そして人事戦略の策定において重要な示唆を与えてくれます。
長期的な情熱と才能の関係
羽生善治氏の「一つのことに対して長年、同じ姿勢、同じ情熱を傾けられることが才能だ」という言葉は、人事管理の観点からも深く考察する価値があります。私たちは従業員がそのような長期的な情熱を持続させるための環境を提供する責任があります。これは、従業員が自身の才能を最大限に発揮できるようにすることも考えられます。
天の力を借りる「天才」
記事で述べられた「天の力を借りられる人」、つまり本業に無我夢中である人が天からの支援を受けられるという考え方は、従業員一人ひとりが自分の仕事に対してこのような姿勢を持つことができるよう、仕事の意義を理解し、それに情熱を持つことができる環境を作ることが求められます。これは、目標設定、フィードバックのプロセス、キャリア開発の機会を通じて実現できるでしょう。
運命を開く心の在り方
人の心が運命を創るという視点は、組織のリーダーや人事担当者にとって非常に示唆に富んでいます。従業員がポジティブな心持ちを維持し、挑戦的な状況にも前向きに取り組めるよう支援することが、個人だけでなく組織全体の運命を良い方向に導くことにつながります。このためには、組織文化が重要であり、人事はその文化の形成と維持において中心的な役割を果たします。
人事戦略への応用
これらの教訓を人事戦略に応用するには、以下のようなアプローチが考えられます。
個人の情熱と組織の目標の一致
従業員が自分の情熱を仕事に活かせるよう、彼らの強みや関心を理解し、それに合った役割を提供します。終身学習の促進
従業員が常に成長し続けることができるよう、教育と研修の機会を提供し、キャリアパスを明確にします。正の組織文化の醸成
ポジティブな心持ちを促進し、困難に直面したときにも前向きに取り組む文化を育てます。
従業員が長期的な情熱を持続させることができる環境を提供すること、そして彼らが自身の「運命を開く」ために必要な心の在り方を育む支援をすることが重要です。これらの努力が結集することで、個人も組織も持続可能な成長と発展を遂げることができるでしょう。多くの示唆を与えてくれます。
かくて運命の扉をひらいてきた(さだまさしさん、鈴木茂晴さん)p14
さだまさし氏は、日本のシンガーソングライター及び小説家として、長年にわたり文化界に多大な貢献をしてきました。さだ氏は、4600回を超えるコンサートと数多くのヒット曲を生み出し、小説家としても成功を収めています。また、公益財団法人「風に立つライオン基金」を設立し、被災地支援などの社会貢献活動にも尽力しています。彼の音楽は、多くの人々に感動を与え、支えとなってきました。
一方、鈴木氏は、大和証券グループ本社の名誉顧問として、長年にわたり日本の金融業界で重要な役割を果たしてきました。彼のキャリアは、慶應義塾大学を卒業後、大和證券に入社し、多岐にわたる重要なポストを経験してきました。代表執行役社長や取締役会長を務め、日本証券業協会会長としても活躍。その後、名誉顧問に就任しました。鈴木氏の経験豊富なバックグラウンドは、金融業界における深い洞察と、ビジネスと社会貢献のバランスに対する独自の視点を持っています。
対談では、さだ氏と鈴木氏が互いの経験と成功について話し合っています。さだ氏は、音楽を通じて人々に影響を与えることの重要性、そして人生の困難を乗り越えるためのポジティブな姿勢について語りました。彼は、自身の楽曲を通じて、生きる意味や人との繋がり、感謝の心を表現し、多くの人々に希望を与えています。
鈴木氏は、金融業界での長年の経験を生かし、ビジネスの世界で成功を収めるための戦略や、困難に直面した際の対処法についての洞察を共有しました。彼は、経済と社会の発展に貢献することの大切さを強調し、ビジネスリーダーとしての責任感を持つことの重要性を説きました。
この対談は、二人の著名な人物が、それぞれの分野での成功の秘訣、人生の価値観、そして将来への展望を共有する貴重な機会となりました。さだ氏の音楽と人生哲学、鈴木氏のビジネスにおける成功と社会貢献への取り組みは、多くの人々に影響を与え、彼らが直面する様々な課題に対して新たな視点と解決策を提供します。この対談を通じて、両氏は人生とキャリアを通じて得た知識と経験を次世代に伝え、彼らが直面するであろう挑戦に対処するための道標を提供しています。
さだ氏、鈴木氏の最も印象に残った部分を取り上げます。
さだまさし氏
人事プロフェッショナルとして、これらの原則を実践することで、組織の課題に迅速に対応し、組織の潜在能力を最大限に引き出すことができます。そして、それが組織全体の運命を好転させ、持続可能な成長と成功へと導く鍵となり得るのです。このような行動主義の精神は、組織をリードする全ての人にとって、運命を切り開く強力なツールとなるでしょう。
鈴木茂晴氏
成功している人々が共有しているポジティブマインドは、どのような職場環境においても、個人と組織の双方にとって大きな価値をもたらします。私たちはポジティブな考え方を持つ人材の発掘と育成に努め、そのようなマインドセットが組織文化全体に浸透するように支援することが、組織の成功に不可欠な役割を果たすことでしょう。ポジティブマインドを持つ人材がいる組織は、困難に対しても柔軟かつ効果的に対応できるため、変化の激しいビジネス環境においても持続的な成長を遂げることが可能になります。
あなたの中には未知の能力が眠っている 中澤公孝さん(東京大学大学院総合文化研究科教授)p38
人体と脳の持つ無限の可能性、そして障害を持つ人々が見せる驚異的な能力について深く掘り下げています。特に、中澤公孝氏によるパラリンピック選手たちの研究は、私たちが持っている潜在能力の一端を示しており、障害を抱える人々がどのようにして困難を乗り越え、時には健常者を超える能力を発揮するのかを理解する上で重要な洞察を提供しています。
障害や逆境があっても、人間の脳はその状況に適応し、失われた機能を補うために再編成する能力があるということです。この再編成の過程で、普段は使われない脳の部分が活性化され、新たな能力や技能が開花する可能性があります。特に、パラリンピアンとして知られる障害を持つアスリートたちは、このような脳の再編成を体現しており、彼らの努力と成果は、障害を持つ人々だけでなく、私たち全員にとって大きなインスピレーションとなります。
中澤氏の研究は、障害によって生じた物理的な制約を乗り越え、運動能力や認知機能を高める脳の能力に光を当てています。例えば、脳性麻痺を持つパラ水泳の世界王者や義足を使うパラ走り幅跳びの世界記録保持者の研究からは、脳がどのようにして障害のある部分を補い、特定の運動能力を最適化するかの貴重な洞察が得られます。
これらの研究結果は、障害者スポーツのみならず、リハビリテーション医学や神経科学の分野においても、人間の潜在能力を最大限に引き出すための新たなアプローチや治療法の開発に役立つ可能性があります。障害を持つ人々が直面する身体的、精神的な課題を理解し、克服するための支援を提供することは、社会全体で取り組むべき課題です。
「失われたものを数えるのではなく、残されたものを最大限に生かす」ことの重要性を認識することが大切です。パラリンピアンたちのストーリーは、障害を持つ人々が直面する挑戦を乗り越え、その過程で新たな能力や可能性を発見することの美しさと力を教えてくれます。これらの教訓は、障害がある人々だけでなく、私たち全員に適用できるものであり、人間の精神の強さと脳の驚異的な適応能力を称賛するものです。
すべてのものに感謝ー長沼昭夫さん(きのとや会長)p42
北海道を代表する洋菓子メーカー「きのとや」の創業者、長沼昭夫氏の挑戦と成功の物語を紹介しています。長沼氏は、会社経営と登山を例に挙げ、順調な時は全体を見守り、逆境時にはリーダーが前に立つ必要があると説明しています。経営哲学において、社員の幸せを最優先に考え、事業を通じて社員とその家族、さらには地域社会に貢献することを目指しています。
創業時は苦労も多かったですが、「八割主義」や「六・三・一の原理」などの考え方を持ち、おいしさにこだわり続けることで、徐々に顧客基盤を築き上げました。しかし、1997年の食中毒事故は大きな試練となり、長沼氏は全ての責任を自らに負い、被害者一人ひとりに直接謝罪しました。
この経験もあり、事業の目的を「社員の幸せを実現すること」と改め、経営理念を再定義しました。
また、長沼氏は「すべてに感謝」することの重要性を強調し、困難を乗り越えてきた原動力は「決して諦めない精神」と語ります。貧しい家庭で育ち、若くして両親を亡くした経験が自立心を育み、創業から四十周年を迎えた今も、社員、顧客、業界への感謝の気持ちを忘れずに事業を展開しています。
この物語は、困難に直面しながらもそれを乗り越え、成長してきた一人の経営者の姿を通じて、リーダーシップ、経営哲学、そして人生観について深く考えさせられる内容となっています。
率先垂範とリーダーシップ
長沼氏は、事業が順調な時は後方からチームを見守り、困難が発生した時は自ら前線に立つというリーダーシップを発揮しました。この行動は、組織内での信頼関係構築や社員のモチベーション維持に不可欠です。人事管理の観点からは、このようなリーダーシップが社員のエンゲージメント向上につながり、結果的に組織の成果に大きく寄与することを示しています。
危機管理とコミュニケーション
食中毒事件への対応から、経営者としての危機管理能力と誠実なコミュニケーションの重要性が分かります。長沼氏は、直接被害者のもとを訪れて謝罪し、全責任を自らに負うことで、社会への信頼を回復しようと努めました。人事の観点からは、この透明性と責任感は、社内外のステークホルダーとの信頼関係を築く上で極めて重要です。また、この経験は社員にとっても大きな学びであり、組織の倫理観や危機への対応力を高めることに貢献しました。
社員の幸福と組織文化
長沼氏は、社員の幸福を最優先する経営理念を持っています。これは、従業員が企業の最も重要な資源であるという考え方を体現しており、人事管理においても中心的なテーマです。社員の幸福を基盤とする組織文化は、高いエンゲージメント、低い離職率、そして長期的なビジネスの成功に直結します。
継続的な学習と成長
長沼氏自身の生き方や、社員に対する期待からは、継続的な学習と自己成長の重要性が伝わってきます。個人の成長を支援することは、組織が革新的で競争力を保つために不可欠です。人事戦略において、教育や研修、キャリア開発支援は、社員が自己実現を果たしながら組織の目標達成に貢献するための基盤を提供します。
長沼氏の経営哲学と実践は、人事管理の観点から見ても多くの示唆を与えます。リーダーシップ、危機管理、コミュニケーション、社員の幸福と成長の支援は、どの組織においても成功の鍵です。これらの原則を組織運営に取り入れることで、より強固なチームを築き、持続可能な成長を実現することができるでしょう。
一念三千【仏教と量子力学の融合が世界平和をひらく】堀澤祖門氏、村松大輔氏 p56
この対談は、仏教と量子力学の融合から新たな人生観や世界観を探求する内容です。堀澤祖門老師と村松大輔氏が、一元絶対の世界観と個々の存在が仏であるという仏教の教え、そして量子力学の理論が示す現象世界の本質について深く語り合っています。彼らは、すべての存在が一元的な源から生じ、その本質においては分離していないこと、そしてこの理解が人々の生き方や世界の平和に大きく貢献する可能性があることを論じています。
堀澤老師は、一元絶対の世界観を理解することが、人々の苦悩や対立を超えるための鍵であると語り、村松氏は量子力学の視点から、私たちの意識や感情が現象世界にどのように影響を与えるかを説明します。彼らは、意識の変容が人生や人間関係にポジティブな変化をもたらし、それが広がることで社会や世界に平和をもたらすというビジョンを共有しています。
対談では、仏教の悟りの経験が量子力学によって示される一元の世界観とどのようにつながるか、そしてこの理解がいかにして人々の生き方や世界観を変えるかについて深く掘り下げられています。また、私たち一人ひとりが日々の中でどのようにしてこの深い理解を実践に移し、より良い世界を実現していくかについても触れられています。彼らの対話は、科学と宗教が互いに補完しあい、人間の精神性と社会の発展に貢献する新たな可能性を示唆しています。
現代社会における人間の苦悩や対立、そしてそれらを克服するための知恵について、仏教と量子力学の融合を通じ、掘り下げてみる価値があります。特に、「一念三千」や一元絶対と二元相対の関係性に焦点を当てることで、現代人が抱える様々な問題に対する新しい解釈と解決策を提供することが可能です。
一元絶対と二元相対の視点
一元絶対の世界観は、仏教と量子力学の共通点として捉えられます。この概念は、全ての存在が根源的には一つであるという見解を示しています。仏教では、この一元性を宇宙の根本的な真理と捉え、個人の苦悩や社会的な対立が、この一元性を見失っていることから生じると解釈します。量子力学もまた、宇宙の最小単位である素粒子のレベルで見れば、全ては繋がっており、分離された存在ではないことを示しています。この理解は、私たちが日常で感じる分離や孤立が、実は幻想に過ぎないことを示唆しており、より大きな全体の一部であるという認識に立ち返ることで、これらを克服できる希望を与えています。
意識と現実の関係
量子力学における観察者の役割は、観察される対象の状態を決定するという点で、意識が現実を形成するという仏教の教えと深い関連があります。人間の意識や思考が実際の現象や体験を引き寄せるという理解は、個人が自身の思考や行動を意識的に選択することの重要性を強調します。自らの運命を積極的に開いていくためには、ポジティブな意識を持つこと、そしてその意識に基づいて行動することが不可欠です。この視点から、人間は自らの内面的な変化を通じて、自身の生活だけでなく、周囲の人々や社会全体に対してもポジティブな影響を与えることができると言えます。
実践的な変化への道
村松氏と堀澤老師の対談では、量子力学と仏教の教えを生活の中で実践することが、個人の生活、人間関係、そして社会の平和に向けた重要なステップであると強調されています。一元絶対の世界観を理解し、日々の中でその理解を深め、実践することが、より良い個人の生活、豊かな人間関係、そして平和な世界の実現に繋がります。これは、単に理論的な考察に留まるのではなく、具体的な行動と変化を伴う実践的なプロセスを意味します。
まとめ
仏教と量子力学の融合は、現代社会が直面する問題に対して、新たな視角と具体的な解決策を提供しています。この対談が示す通り、一元絶対の世界観を深く理解し、それを日々の生活の中で実践することは、個人の内面的な変化だけでなく、より大きな社会的な変革へと繋がる可能性を秘めています。仏教と量子力学の教えが示す一元絶対の世界観を通じて、私たちは自身の運命を積極的に開き、より良い世界の実現に貢献することができるのです。
繁栄するものと廃れゆくものの道 田口佳史さん、今井博文さん p66
富士製薬工業は産婦人科関連医薬品のトップクラス企業で、特に徳目評価を組み込んだ独自の人事制度で知られています。以下ページの「Point③『徳目評価制度』の導入」もご覧下さい。
約20年前、会長の今井博文氏は、事業での徳の重要性に気付き、徳に重点を置いた経営を行い業績を向上させました。同社の徳目評価は、「仁」「義」「礼」「智」「信」の五常に加え、「覚悟」と「中庸」を含む独自の徳目を設け、これらを基に社員の評価を行っています。この人事制度は、当事者意識の強化や業務の質の向上に貢献し、徳目評価が高い社員ほど実績も上がっていることが示されています。
徳を核とする経営理念は「成長と貢献」に集約され、徳の実践を通じて社内外の人々との共鳴共感を大切にしています。また、国内外の企業との連携や支援を通じて、徳を基軸とした経営が企業の繁栄に繋がっていると今井氏は考えています。この独特な人事制度と経営理念は、富士製薬工業が持続的な成長を遂げる秘訣となっています。
富士製薬工業が採用している徳目評価に基づいた人事制度は、従来の人事管理におけるパラダイムシフトを示しています。私も、長く人事を経験、多くの人事制度を見てきましたが、徳目評価は大変興味深い観点です。この制度の導入が持つ意義、人材育成への影響、及び将来的な課題と展望について深掘りします。
徳目評価の導入背景
富士製薬工業の徳目評価制度は、企業の基本理念と深く結びついています。徳を重視する企業文化は、単にビジネスの成功を追求するだけでなく、社会に対しても良い影響を与えることを目指しています。この取り組みは、従業員の行動や態度に対する評価を、純粋に業績や成果だけでなく、その人の倫理観や人間性にも焦点を当てることで、企業文化を形成し強化します。人事領域で見ると、これは極めて革新的なアプローチであり、徳に基づく評価が業績にもポジティブな影響を与えることを示唆しています。
人材育成への影響
徳目評価は、人材育成の観点からも大きなメリットをもたらします。徳目に基づく評価を行うことで、社員は自己の成長を促され、仕事だけでなく人としての成熟も目指すようになります。また、仁、義、礼、智、信といった徳目は、業務遂行能力の向上だけでなく、チームワークの促進や組織内のコミュニケーションの改善にも寄与します。このように、徳目評価は社員のモチベーションの向上と個人の成長、組織の繁栄を同時に実現することを目指します。
課題・展望
徳目評価制度の実施には、その評価基準の主観性という課題が存在します。徳目は文化や価値観によって解釈が異なる可能性があり、そのため、評価基準を公正かつ客観的に設定することが求められます。また、社員が徳目を日常業務にどのように落とし込むかという点も、成功の鍵を握ります。これには、継続的な教育やトレーニング、徳目に基づいた行動の具体例を提示することが効果的です。
徳目評価制度の未来は明るいとは思います。社会全体が倫理観や持続可能な経営を重視するようになる中で、徳目評価は、企業が社会的責任を果たす上で重要な役割を果たすと期待されます。また、このような評価制度は、企業のブランドイメージを向上させ、優秀な人材の獲得と保持にも寄与するでしょう。徳目評価は、単に業績を向上させるだけでなく、社員の幸福感や満足度を高めることにもつながり、結果的に高いエンゲージメントと生産性の向上に貢献します。
富士製薬工業による徳目評価の導入は、人事管理における新たな地平を開き、企業が倫理的かつ持続可能な方法で成長を遂げるためのモデルを提供しています。この取り組みは、人事領域において多くの示唆を与え、他の企業が徳目を重視する文化を築くための参考となるでしょう。私も、継続して注目していきたいと思います。
連載・第百五十二回 二十代をどう生きるか 二十代は人と出逢い、世界を渡り歩き、視野を広げる時 隈研吾さん p114
隈研吾氏の建築家としての歩みから、二十代をどう生きるかについての考えが紹介されていました。隈氏が建築家の道を志したのは、1964年の東京オリンピックで丹下健三氏が設計した国立代々木競技場に感銘を受けたことからです。幼少期から家族との増築活動や、父親から学んだレポートの書き方などが、彼の建築への関心と学びの基盤を形成しました。大学院では原広司先生に師事し、アフリカでの集落調査を通じて人間の普遍性や建築に対する考え方を深めました。社会人としての経験は、現場監理の仕事を通じて、チームワークの重要性と建築の現実を学ぶ貴重な機会となりました。
隈氏は、自身の設計事務所を立ち上げる前に、異文化を学ぶためアメリカへ留学しました。この経験から、建築家としての視野を広げ、説明能力の重要性や日本の建築に対する新たな認識を得ました。帰国後、隈氏は東京で設計事務所を開設し、限られた予算の中でも地場の素材を活用し、多くのプロジェクトを成功に導きました。
隈氏は二十代を、世界を渡り歩き、さまざまな人々と出会い、視野を広げる重要な時期と見なしています。自らの経験を通じて、人生や建築においては、不安を恐れず前向きに取り組むこと、そして興味を持ち続けることの大切さを説いています。隈氏の人生観と建築に対するアプローチは、新しい世代の建築家や若者たちに対して、自らの道を探求し、困難に立ち向かう勇気を与えるメッセージとなっています。
隈氏の建築家としての歩みは、多くの若者や仕事に悩む人々にとって大きな示唆を与えます。二十代をどう生きるかに関する彼の経験は、ただ単に建築の世界に留まらず、人生を豊かにする普遍的な価値を持ちます。私は残念ながら(涙)二十代ではありませんが、改めて学び直すところはありますし、また、人事企画業務に長く従事してきたものとして、考えるところが多くあります。
早い段階での情熱の発見
隈氏が建築家への道を歩み始めたのは、幼いころに体験した純真無垢な感動からです。この早期からの情熱は、仕事を選ぶ上で非常に重要な要素です。若いうちから自分の興味や情熱を深掘りし、それを仕事につなげる努力をすることが、後の充実したキャリアに繋がります。
幅広い経験と学び
隈氏は、日本国内だけでなく、世界中を旅し、多様な文化や価値観に触れました。アフリカでの集落調査やアメリカでの留学経験は、彼の建築に対する視野を大きく広げたと言えるでしょう。これらの経験から学ぶことは、二十代を生きるうえで多くの人々との出会い、さまざまな場所への旅、そして新しいことへの挑戦の大切さです。こうした経験が、将来的に自分自身の個性や強みを形成し、差別化されたキャリアパスを築く基盤となります。
コミュニケーションの重要性
アメリカでの留学中、隈氏は建築家としての設計だけでなく、その説明や伝える力の重要性を痛感しました。これは、あらゆる職種に共通するスキルです。自分のアイデアや成果を効果的に伝え、相手を納得させる能力は、職場で成功するために不可欠な要素です。特に人事領域では、組織内の異なるステークホルダーを説得し、共通の目標に向かって動機づける能力が求められます。
不安との向き合い方
隈氏のキャリアには、不安や挫折がつきものでした。しかし、彼はこれらを乗り越え、常に前向きに物事に取り組む姿勢を崩しませんでした。仕事においても人生においても、不安や恐れは避けて通れない部分ですが、それを乗り越えることで成長し、新たな機会を引き寄せることができます。人事領域で働く私たちにとっても、変化する組織環境や新しい人事政策の導入など、常に不確実性に直面します。こうした状況に対しても、隈氏のように前向きに、そして柔軟に対応することが求められます。
隈氏の建築家としてのキャリアは、二十代を生きる上での多くの教訓を提供してくれます。自分の情熱を見つけ、幅広い経験を積み、コミュニケーションの技術を磨き、不安と正面から向き合う勇気を持つこと。これらは、どの業界であっても成功に導く普遍的な要素です。人事の立場から見ても、これらの価値は従業員の成長や組織の発展に直結するため、非常に重要な教訓といえます。
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