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「被評価者研修」は自社の人事制度の「成熟度」を考えて実施検討することが望ましい

被評価者研修の在り方と実態

 人事制度の適正な運用において、評価者のみならず、被評価者の理解を深めるということが非常に重要です。評価者研修とともに、被評価者研修をしっかりすることが理想です。以下にて記載しました。

 一方、実態として、「評価者研修は真面目にやっているけれど、被評価者研修には追いついていない」という企業も多かろうと思います。以下記事でも紹介したとおり、「2016年 評価制度の運用に関する調査」によると、被評価者(評価される側の従業員)に対しての研修は22.6%と全体の2割にとどまっているというデータもあります(評価者としての研修は7割実施)。

 「かなり差がある」と思ったかも知れません。しかし、評価者研修がしっかりと実施されていない中で、被評価者研修を実施すると、被評価者側が強くなりすぎるというリスクもあります。
 
被評価者にも、一定程度の理解はしていただいておく必要があると考えていますが、その程度は、人事制度運用の「成熟度」をもとに検討したほうが良いでしょう。

一般的な「被評価者研修」の内容

 被評価者研修は、一般に以下のような内容で構成されています。

人事制度の全体観、被評価者としての心構えの理解
 
被評価者が人事制度理解していないことでの問題の発生、モチベーション低下が起きる可能性があります。まずはしっかりと人事制度の全体観を理解し、被評価者としての心構えを認識します。

目標設定の理解
 
目標設定のレベルにより、適切な評価ができなくなってしまう可能性があります。できる限り具体的な目標を設定することの重要性を理解いただきます。

評価面談の心構え、活用の理解
 
自己評価~面談~実際の行動計画~評価の受け止めまで、必要なポイントを押さえていただきます。


人事制度の「成熟度」に応じた運用にするために

 原則的には、人事制度-評価者-被評価者のすべてが、人事制度および運用を同じレベルで、正確に理解しているのが良いでしょう。しかしながら、人事制度の運用状況、評価者研修と被評価者研修のレベル感は異なるため、その成熟度によって、内容・程度を調整する必要があります。
 人事制度、評価者研修および被評価者研修は一体のものであり、また、評価者研修の実施状況に合わせて、被評価者研修の内容も検討する必要があります。

 評価者は、主として管理職が多く、能力、実績、考え方など、一定レベルにある方が多いでしょう。一方、被評価者は人数も多く、訓練もされていないことも多いことから、難しい側面もあります。評価者研修の実施程度があまり強くない状態で、フルコースの被評価者研修を実施することは、必ずしも適切ではないでしょう。ではどのように実施すればよいでしょうか。

大前提として共有しておきたい内容

 どの段階にあれど、以下の2つは大前提として実施しておいた方が良いと考えています。

・評価者研修、被評価者研修とも、それぞれ「どんなことが説明されているのか」ということを共有することが望ましいです。それだけでも、評価者と被評価者のギャップを埋めることができます。

「人事評価」と「査定」は区別することです。人事評価は「絶対基準」で行います。それに対し、査定は「相対基準」です。「成果があったのになぜ給与が上がらないのか」という問いがあります。それは査定があり、相対基準があるからです。この点は、はっきりさせておいた方が良いと考えています。

その上で実践する内容

 上記がきちんとされていることを前提として、以下のキーワードを中心に、組み合わせて説明していけばよいと思っています。これらの内容を、評価者も被評価者もしっかりと理解していることです。

1.コミュニケーションにより、評価制度の理解
 評価者とのコミュニケーションを重視し、評価プロセスや評価基準について確認します。評価実施の「目的」も共有すると良いです。

2.目標設定の重要性の理解
 評価者と共に目標を設定します。目標は具体的で明確であり、被評価者が達成可能な範囲内に設定されていることが重要です。

3.フィードバック
 定期的にフィードバックを受け、強みや改善点を確認します。評価プロセスは単方向(評価者→被評価者)ではなく、被評価者からのフィードバックも行います。これにより、自身の思いも伝えられるとともに、自身の成長、会社の成長にも寄与します。

4.スキルアップの機会
 被評価者のスキルや能力向上のために、研修やトレーニングプログラムなどを受講します。会社の成長と自身(被評価者)の成長を両立させることが重要です。できれば、育成プログラムがあれば良いですが、なかなかない企業もあり、また、あってもうまく運用されていない企業も多いのではないかと思います。

5.目標達成の確認
 目標達成や成果に対して適切に確認を行います。成果を評価し、被評価者がその成果に応じた評価の形で認められることで、モチベーション向上につながります。

 

まとめ-適切な運用の中核はコミュニケーション

 人事制度の適切な運用には、やはりコミュニケーションが非常に重要になります。どうしても「制度をしっかりと構築する」「しっかりと評価をする」方向に傾きがちですが、最も大切なのは、評価者と被評価者が同じ土俵上で話ができることでしょう。


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