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メンバーの声を聞く:信頼関係を築くための相談対応のアプローチ

 メンバーから受ける相談は、単なる業務上の問題解決にとどまらず、その人の内面や感情に深く関わる重要なコミュニケーションの機会です。だからこそ、相談を受ける側の姿勢が、その後の展開を大きく左右し、ひいてはチーム全体の雰囲気や生産性にも影響を及ぼします。

 まず、相談者が安心して話せる雰囲気作りが何よりも大切です。忙しい時でも、まずは「時間を取ってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝え、相手の心に寄り添う姿勢を示しましょう。例えば、部下がプロジェクトの進捗に悩んでいるとします。ただ単に「どうしたの?」と聞くだけでなく、「最近、プロジェクトで何か大変なことでもあった? いつでも相談に乗るからね」と具体的に尋ねたり、「一人で抱え込まずに話してくれてありがとう」と感謝を伝えたりすることで、相手は安心して悩みを打ち明けやすくなります。

 話を聞く際は、相手の言葉だけでなく、表情や声のトーン、身振り手振りにも注意を払いましょう。言葉ではうまく表現できない感情や悩みが、非言語的なサインに表れていることがあります。例えば、言葉では「大丈夫です」と言っているのに、表情が曇っていたり、声が震えていたりする場合、それは本心ではない可能性が高いです。

 また、相手が話している途中で遮ったり、自分の意見を押し付けたりするのは避けましょう。まずは相手の話を最後まで聞き、「つらかったね」「それは大変だったね」など、共感の言葉を伝えることが大切です。その上で、「何か私にできることはある?」「一緒に解決策を考えてみようか?」と、具体的なサポートを提案することも有効です。

 相談内容によっては、解決策をすぐに提示するのではなく、一緒に解決策を探っていく姿勢も重要です。例えば、部下が新しい業務に戸惑っている場合、「まずは一緒に現状を整理してみようか?」「何か参考になりそうな資料や情報はないか探してみよう」などと提案することで、相手は主体的に問題解決に取り組むことができます。

 さらに、相談を受けた後は、必ずフォローアップを行いましょう。「その後、どうなった?」「何か困ったことがあれば、いつでも相談してね」と声をかけることで、相手は安心して業務に取り組むことができます。

 このように、相談を受ける際は、ただ話を聞くだけでなく、相手の感情に寄り添い、共感し、具体的なサポートを提案することで、より深い信頼関係を築くことができます。そして、それは、メンバーの成長を促し、チーム全体の活性化にもつながるでしょう。

 相談を受けることは、相手の人生に寄り添う貴重な機会です。相手の言葉にしっかりと耳を傾け、心を込めて対応することで、あなたは誰かの心に寄り添い、支えることができるでしょう。

人事の視点から考えること

 メンバーからの相談へ対応することは、単なる問題解決にとどまらず、組織文化の醸成、人材育成、そして最終的には組織全体の成長へとつながる重要なプロセスです。仕組みづくりの観点からも重要でしょう。

 まず、相談しやすい環境作りは、組織文化に深く根ざしたものです。例えば、定期的な面談や1on1ミーティングを設けることで、日頃からコミュニケーションを円滑にし、悩みや課題を早期に発見できる体制を整えることが重要です。
 また、相談窓口を設けるだけでなく、相談内容に応じた専門部署や外部機関との連携体制を構築することで、より専門的なサポートを提供できる体制を整えることも大切です。例えば、メンタルヘルスに関する相談であれば、産業医やカウンセラーとの連携をスムーズに行えるようにすることで、より適切なケアを提供できます。

 相談内容の記録と分析は、組織全体の課題を浮き彫りにし、具体的な対策を講じるための貴重な情報源となります。例えば、特定の部署でハラスメントに関する相談が多い場合は、ハラスメント防止研修の実施や、相談しやすい環境作りを見直す必要があるかもしれません。
 また、キャリアに関する相談が多い場合は、キャリアパス制度の設計や、個別のキャリアカウンセリングの実施など、人材育成の観点からの対策が求められます。

 相談対応を通じて得られた情報は、個人の成長だけでなく、組織全体の能力向上にもつながります。例えば、あるメンバーが新しい業務に挑戦したいという相談を受けた場合、そのメンバーの能力や適性を考慮した上で、適切な研修プログラムやOJTの機会を提供することで、組織全体のスキルアップに貢献できます。また、相談内容を他のメンバーと共有することで、組織全体の知識や経験の共有を促進し、組織学習を活性化させることも可能です。

 さらに、相談対応は、企業の社会的責任(CSR)を果たす上でも重要な役割を担います。従業員の健康や安全、働きがいを確保することは、企業の持続的な成長にとって不可欠な要素です。従業員が安心して働ける環境を提供することは、企業のブランドイメージ向上にもつながります。

 このように、人事としても、相談対応を通じて、組織文化の醸成、人材育成、組織全体の成長、そしてCSRの推進といった多岐にわたる役割を担っています。相談者一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、適切なサポートを提供することで、より良い組織作りに貢献することになります。

マネージャーがチームメンバーの相談を受けているシーンが描かれています。チームメンバーは安心して話せている様子で、マネージャーは共感と理解を示しています。デスクにはノートパソコン、書類、植物、コーヒーマグが置かれており、温かみのある雰囲気が感じられます。背景には整然とした職場環境が広がり、柔らかな照明とモチベーショナルポスター、窓からは穏やかな晴れた日の景色が見えています。
このようなコミュニケーションの場は、メンバーが安心して相談できる場を提供し、チーム全体の信頼関係と生産性を高める助けとなります。マネージャーの共感とサポートが、チームの成長と活力を引き出す重要な要素となるでしょう。


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