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戦略的目標管理の基盤:OKRとKPIの役割と相乗効果:いまのたかの組織ラジオ#218

野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第218回目「今さら聞けないOKRとKPIの目的と役割の違い」でした。

 前回の番組の中で、KPIとOKRの話題が出てきましたが、その続きの内容となります。

1. 目標達成を支える二つの柱:KPIとOKR

 組織やチームが持続的な成長を遂げ、設定した目標を確実に達成するためには、適切な指標とフレームワークを戦略的に活用することが不可欠です。その中でも特に重要な役割を担うのが、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な成果)です。これらは、組織が目指すべき方向性を定め、その進捗を正確に把握するための、それぞれ異なる目的と役割を持つ二つの柱と言えるでしょう。両者を適切に理解し、効果的に運用することで、組織全体のパフォーマンスを最大化し、目標達成をより確実なものとすることができます。この二つを単に管理ツールとして捉えるのではなく、組織文化や成長戦略と密接に結びついた、不可欠な要素として認識することが重要です。

2. 現状を可視化する:KPIの役割と機能

 KPは、組織やチームの活動が、事前に設定された目標に対してどの程度進捗しているかを、定量的に測定するための指標です。KPIの主な目的は、現状を数値で明確に可視化し、目標達成の度合いを客観的に評価することにあります。
 例えば、企業の売上高、新規顧客獲得数、ウェブサイトの訪問者数、顧客満足度スコアなど、具体的な数値で表される指標が用いられます。これらの数値は、過去のデータや業界のベンチマークと比較することで、組織の強みと弱みを特定し、改善のための具体的な戦略を立てるための基礎データとなります。KPIは、目標に対する進捗を「測る」ことに重点を置いており、現状分析、ボトルネックの特定、そして改善活動において、不可欠な役割を果たします。また、KPIのモニタリングを通じて、早期に問題を発見し、迅速な対策を講じることも可能です。

3. 目標達成への道筋を示す:OKRの役割と機能

一方、OKRは、組織やチームが達成したい目標(Objectives)と、その目標達成度合いを測定するための具体的な成果指標(Key Results)を明確にするためのフレームワークです。OKRは、組織全体の活動の方向性を定め、チームメンバーを共通の目標に向かわせる羅針盤のような役割を果たします。OKRの主な目的は、目標設定と進捗管理を効果的に行うことです。
 「目標」は、組織やチームが目指す方向性を示す定性的な目標であり、例えば「顧客満足度を大幅に向上させる」「業界をリードするイノベーションを創出する」「従業員のエンゲージメントを高める」といった、具体的な行動指針を示すものです。一方で、「成果指標」は、目標の達成度合いを数値で示す指標であり、「顧客満足度アンケートの平均スコアを4.5にする」「製品開発サイクルを20%短縮する」「従業員満足度調査のスコアを80%以上にする」といった、具体的かつ測定可能な目標として設定されます。
 OKRは、目標を「達成する」ことに重点を置いており、組織全体の戦略的な行動を促進します。OKRを導入することで、組織全体の優先順位が明確になり、より効率的なリソース配分が可能になります。

4. KPIとOKRの連携:目標達成への相乗効果

 このように、KPIとOKRはそれぞれ異なる役割を担っていますが、両者は密接に連携することで、組織の目標達成をより効果的にサポートします。KPIは、目標に対する進捗を数値で測定するための具体的な指標であり、現状分析や改善活動において重要な情報を提供します。
 一方、OKRは、組織全体の目標を設定し、その達成度合いを具体的な成果指標で測定するためのフレームワークであり、組織全体の戦略的な行動を促進します。KPIは、OKRのKey Resultsの中で、具体的な数値目標として活用されることも多く、両者は互いに補完し合う関係にあります。
 例えば、OKRで「顧客満足度を大幅に向上させる」というObjectiveを設定した場合、Key Resultsとして「顧客満足度アンケートの平均スコアを4.5にする」といったKPIを設定することができます。このように、KPIとOKRを組み合わせることで、目標設定から進捗管理、そして目標達成までのプロセス全体を効果的に管理することが可能になります。

5. まとめ:両者を効果的に活用するために

 KPIは「測る」もの、OKRは「達成する」ものということができます。KPIは、組織の現状を正確に把握し、改善点を見つけるための重要なツールであり、OKRは、組織全体の目標を設定し、その達成に向けた具体的な道筋を示すフレームワークです。組織の目標達成のためには、KPIによって現状を把握し、OKRによって目標を設定し、進捗を管理することが不可欠です。両者を効果的に活用することで、組織はより効率的に、より効果的に目標を達成し、持続的な成長を実現することができるでしょう。両者を独立したツールとして捉えるのではなく、組織の成長戦略に組み込まれた、不可欠な要素として認識し、継続的に改善していくことが重要です。

人事の視点から考えること

1. 人事戦略におけるKPIとOKRの位置づけ

 人事部門は、企業の持続的な成長を支える重要な役割を担っています。そのため、人事戦略を策定し、実行していく上で、KPIとOKRは非常に有効なツールとなります。KPIは、採用、研修、人事評価、離職率など、人事部門の活動成果を数値で把握し、課題を特定するために活用できます。
 例えば、採用活動の効率性を測るために「採用単価」や「内定承諾率」をKPIとして設定したり、研修の効果を測るために「研修後のアンケート評価」や「業務成果への貢献度」をKPIとして設定することができます。
 一方でOKRは、人事部門が目指す中長期的な目標を設定し、その達成度を具体的な成果指標で測るために活用できます。例えば、「従業員のエンゲージメントを向上させる」という目標に対して、「従業員満足度調査のスコアを〇%向上させる」「離職率を〇%削減する」といったKey Resultsを設定することができます。このように、KPIとOKRを組み合わせることで、人事部門の活動が、より戦略的かつ効果的なものとなります。

2. 人材育成と成長を促進するKPIとOKR

 人事部門は、社員一人ひとりの能力開発と成長を促進する役割も担っています。KPIとOKRは、社員の成長を支援する上でも非常に有効です。個人の目標設定にOKRを導入することで、社員は自らの成長目標を明確化し、主体的にキャリア形成に取り組むことができます。例えば、「〇〇スキルを向上させる」というObjectiveに対して、「関連書籍を〇冊読む」「〇〇研修に参加する」「プロジェクトで〇〇の役割を担う」といった具体的なKey Resultsを設定することで、社員は自身の成長を可視化し、目標達成に向けて積極的に行動することができます。
 また、KPIを個人の業務成果と結びつけることで、社員のモチベーション向上にもつながります。例えば、営業職であれば「新規顧客獲得数」や「売上目標達成率」、開発職であれば「プロジェクトの納期遵守率」や「バグ発生率」などをKPIとして設定し、それらを人事評価や報酬制度と連携させることで、社員の成果に対する意識を高めることができます。

3. 組織文化の醸成とエンゲージメント向上

 KPIとOKRは、組織文化の醸成と社員エンゲージメントの向上にも寄与します。OKRを組織全体で共有することで、社員は組織全体の目標を理解し、自身の業務がどのように貢献しているのかを認識することができます。これにより、組織に対する一体感や当事者意識を高めることができます。
 また、OKRの進捗状況を定期的に共有し、チームで協力して目標達成に取り組むことで、チームワークやコミュニケーションの活性化にもつながります。KPIに関しても、個人の成果だけでなく、チーム全体の成果も評価対象にすることで、チームとしての目標達成意識を高めることができます。このように、KPIとOKRを適切に運用することで、組織全体の目標達成と社員一人ひとりの成長が両立する、より健全な組織文化を醸成することができます。

4. KPIとOKR導入時の課題と対策

 KPIとOKRの導入は、組織にとって大きな変革を伴います。導入時の課題を事前に把握し、適切な対策を講じる必要があります。導入初期には、社員の理解不足や抵抗、目標設定の困難さ、進捗状況の管理体制の不備などが発生する可能性があります。これらの課題に対処するためには、まず導入の目的やメリットを丁寧に説明し、社員の理解と協力を得ることが重要です。
 また、OKRの目標設定に関する研修やワークショップを実施し、社員が効果的に目標を設定できるように支援する必要があります。さらに、進捗状況を共有するためのツールや会議体を整備し、定期的に進捗状況を確認・改善していくPDCAサイクルを確立することが重要です。

5. 人事部門が果たす役割

 人事部門は、組織全体の目標と連動したKPIとOKRを設定し、その進捗状況をモニタリングしていく必要があります。また、社員の成長を支援するための目標設定や研修プログラムを企画・実施し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献する必要があります。さらに、KPIとOKRを人事評価や報酬制度と連携させ、社員のモチベーション向上と成果への意識を高める役割も担います。人事部門は、KPIとOKRを単なる管理ツールとしてではなく、組織文化の醸成や人材育成を促進するためのツールとして活用し、組織の持続的な成長に貢献していくことが重要です。

 このように、KPIとOKRは、組織の目標達成と社員の成長を両立させるための重要なツールであることがわかります。人事部門は、これらのツールを適切に活用し、組織全体のパフォーマンス向上に貢献していくことが求められます。


KPIとOKRの役割と連携を視覚的に表現しています。左側には「進捗を測るKPI」、右側には「目標を達成するOKR」を象徴する要素を配置し、中央で両者の相乗効果を強調しました。組織の成長を支える枠組みを象徴しています。


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