シングルループとダブルループ：組織の成長と変革を促進する二つの学習プロセス

シングルループ学習とダブルループ学習とは

　シングルループ学習とダブルループ学習は、どちらも組織学習の手法ですが、異なるアプローチを取っています。
　シングルループ学習は、既存の枠組みや過去の知見をもとに改善を進めるフレームワークであり、手段や方法の改善を主としています
　一方、ダブルループ学習は、既存の枠組みを超えた抜本的改善を目指す組織学習のため、従来の行動規範やフレームワークにとらわれることなく、新しい価値観を生み出していくため、組織の革新的進化のために不可欠なプロセスです。

併用によるメリット

　シングルループ学習とダブルループ学習を併用することで、以下のようなメリットが得られます。

シングルループ学習で得られた知見を、ダブルループ学習で再検討することで、より深い洞察が得られ、、より効果的な改善が可能になる。また、ダブルループ学習で得られた新しい価値観を、シングルループ学習で定着させることで、組織全体の変革が促進される。

併用の注意点

　シングルループ学習とダブルループ学習を併用する場合、以下のようなポイントに注意することが重要です。

　シングルループ学習で得られた知見を、ダブルループ学習で再検討する際には、従来の枠組みにとらわれず、新しい視点で問題を捉えることが必要です。
　ダブルループ学習で得られた新しい価値観を、シングルループ学習で定着させる際には、従来の行動規範やフレームワークにとらわれず、新しいアプローチを取り入れることが必要です。
　シングルループ学習とダブルループ学習を併用することで、組織全体の変革が促進されるため、上層部からのサポートが必要です。権限の問題もあるかもしれません。

具体的な事例

（1）顧客からの苦情対応
　具体例として、ある企業が顧客からの苦情対応において、顧客に対して謝罪することで問題解決を図っていたとします。
　シングルループ学習では、謝罪の方法やタイミングを改善することで、顧客満足度を向上させることができます。
　一方、ダブルループ学習では、顧客に対して謝罪することが問題解決につながらない場合があると認識し、顧客とのコミュニケーションの在り方を根本的に見直すことで、顧客満足度を向上させることができます。

（2）企業における人材採用
　企業における人材採用がうまくいかない場合にも適用することができます。
　シングルループ学習では、これまでの成功体験を踏襲し、既存のプロセスを繰り返して改善を目指す手法です。人材採用においては、以下のようなものがシングルループ学習の例として挙げられます。

• 採用ターゲットや採用基準を過去の成功事例に基づいて設定する

• 採用方法や選考プロセスをこれまでのやり方を踏襲する

• 採用後研修の内容や期間をこれまでの採用基準に合わせて設定する

　これらの施策は、これまでの成功体験に基づいているため、短期的には成果が出やすいというメリットがあります。しかし、市場の変化や企業の状況変化に対応できないというデメリットもあります。
　例えば、これまでは新卒採用で即戦力となる人材を採用することに成功していた企業が、市場の変化によって新卒採用で即戦力となる人材を獲得できなくなったとします。
　このような場合、シングルループ学習では、これまでの採用ターゲットや採用基準を変更しない限り、採用成功率の向上は見込めません。一方、ダブルループ学習では、問題の前提条件を疑い、軌道修正を図る手法です。人材採用においては、以下のようなものがダブルループ学習の例として挙げられます。

• 採用ターゲットや採用基準を、企業の長期的な戦略に基づいて設定する

• 採用方法や選考プロセスを、市場の変化や企業の状況変化に合わせて見直す

• 採用後研修の内容や期間を、採用した人材の能力や成長に合わせて設定する