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「小世界大戦」の【記録】 Season1-13

「おはようございます!」
一人の快活な女生徒が挨拶をして校門を通り過ぎていった。
永山先生は、
 「はい、おはようございます。」
そう挨拶を返した。吾郎もつられて挨拶を返した。
だが、どうもぎこちない。

「素直そうなよい子ですね・・。」

吾郎がそう言うと、永山先生はニヤリと笑った。

「そう思うかい?」
「はい、服装もちゃんとしてましたし。」

永山先生は、ふふっとわらいながら、つぶやいた
「あの子は、片山結香という、わが校一番の要注意生徒ですよ・・。」
「・・え?・・・。」
「いわゆる、影番・・、って言うのかな、黒幕なんだ。
表面はああやって優等生なんですがね、なんとなく人為的な。
っていうか、フィクションの匂いがしないか?」

そういえば、まさに「絵に描いたような」清純な女生徒だった。
悪魔は天使の顔で降りてくる。というやつなのだろうか。
最前の様子からはとても考えられない事だった。

「酒巻先生、本当のよい子と,うわべのよい子。
それを見抜くのも教師としての修行ですよ。
外面で判断すると、えらい目に遭う。

アホな格好をしていても、本当によい子はいるんです。
むしろ、その方が多い。」

吾郎は、わかったようなわからないような、
そんな不思議な気持ちにとらわれていた。

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 ある程度の生徒たちが登校してきた。
ただ、永山先生の話では、
これから「重役出勤」の生徒たちがいるのだという。
授業がなかったら、一緒にその生徒の対応につきあえとだけ告げて、
その日の「登校指導」は終わった。

最初の授業は、生徒たちも緊張していたのか大きな混乱もなく無事、
その日の日課を終え、吾郎は退勤時間を迎えた。

相変わらず、財前、満仲コンビが、
帰りに一杯やろうと誘ってきたが、
吾郎は今日はさすがに遠慮した。
それは、婚約者の涼美が
今日「就職祝い」をしようと言っていたからだった。
さすがに、今後を考えるとこれをすっぽかすわけには行かなかった。

「なぁんだ、吾郎ちゃん、つきあい悪いなぁ。」

満仲はそう言ってむくれたが、
まぁ、すまん!と特殊事情まがいの事をにおわせて、
この日吾郎は帰路についた・

駅のホームで電車を待っていると、
少し先に今朝がた挨拶してきた「片山結香」がいるのが見えた。
制服姿ではあったが、旅行でもできるような大きめのバッグを持って、
吾郎と同じ、東京方面行きのホームに立っていた。
朝の顔とは少しちがい、なんとなくアンニュイな表情をしていたのが、
吾郎にはなんとなく気になっていた。

結香は吾郎に気づくわけでもなく、
ごく自然に入線してきた電車の、2個向こうのドアから電車に乗り込み、
シルバーシート向かいの連結口脇にちょこんと座った。
そして、特急が止まる次の駅で、そそくさと降りていった。


吾郎がアパートに帰ると、涼美はもう帰っていて、
何やら美味しそうな匂いが、玄関をあけると漂ってきた。

「ただいま、涼美ちゃん。」
「あ、お帰りなさい、」

小さなテーブルには、ちょっとしたごちそうが並んでいた。

「今日、午前中で年休とってきちゃった。」
この一言で、あの二人の誘いを断って正解だったと心から思った。

「美味しそうだな・・。」
「でしょ?・ちょっとよりをかけたから。」
「給料前だから、ホント助かるなぁ・・。」

 吾郎の教員としての給料は、月末でないと入らないうえ、
赴任旅費も1ヶ月遅れで入るので、
特にこの初任のひと月は、引っ越しとか、諸々の出費で、
アルバイトで貯めていた貯金は、ほとんど底をついていた。

 涼美が急いで「同棲」を断行したのは、
自分の苦い経験があったからだ。
それがわかったからこそ、
吾郎はあらためて、涼美が伴侶になることに心から感謝した。

「どうだ、吾郎ちゃん、先輩としてのあたしの慧眼、畏れ入ったか。」
「・・ありがとうごぜえます~、卑弥呼さま~。」
「なぁに、それ、あはは。」

缶ビールで乾杯したあと、ささやかな「宴」がはじまった。
仕事仲間と帰りに一杯もなかなか良いが、
気のおけない婚約者とこうして飲むのも
また良いものだと感じていた。

吾郎と涼美は、学生の頃からすでに男と女の関係になっていた。
もともと抵抗はなく、さらに酔いもあり、
ごく自然に「夜伽」に入った。

「ねえ、今日はゴムなしでしよっか・・。」
涼美がそう提案した。
吾郎は、少しぎょっとした顔で涼美を見た。

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美しい。

本心からそう思った。
吾郎は、涼美を求め、涼美は切ない声を出してそれに応え、
そして、何度も歓喜の声を上げた。
 吾郎の欲望は頂点に達し、涼美の熱い誘いの壺の中に、
熱い熱い欲望をほとばした。

「・・あああっっ・・いくっ・・。」
涼美はその裸体を弓なりにして、吾郎をきつく抱きしめた。

「・・・はぁっ・・・。」
涼美は、身体を離して横たわると、
ぎゅっと両足を閉じた。

「吾郎ちゃんの種は逃がさない・・。うふふ。」
「・・え・・それって・・。」
「吾郎ちゃん、あたしの仕事知ってる?」
「はい、保健室の先生」
「1点減点、正解は、養護教諭。」
「だからなに?」

そういう吾郎に涼美は吾郎の額をちょんと付いて。

「女はね、本能的に計算するんだよ。今日は排卵日。
つまり、妊娠する確率が最も高い日なのよ。
一番それに詳しいあたしが、それを実行した。
覚悟して、あたしはあなたの子を必ず産むから。」

「・・え?そうなのか?」

「あまいなぁ・・吾郎ちゃん。
これはね、たとえ子どもであっても、
女子は、そういう戦略で生きてる
んだって、
肝に銘じた方が良いよ。」

涼美はにやっと不敵な笑みを浮かべて、そう言った。

・・・なるほど・・・

吾郎は、例の気になる「女子生徒」の事について。
涼美なら何か解るのではないかと感じていた。


To be CONTINUE

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