少女漂流 Monologue by HARUKA Ω(最終章)
センパイのカミングアウト、そして封印の真相
数日後だった。
うっちーセンパイからメールが来ていた。
就職を機に、センパイは実家を出て、
洛外にアパート住まいを始めていた。
だから、さすがにあたしのアパートで
「時間つぶし」なんて事はしなくなっていた。
<新居整理できたで、遊びにこんか?>
いつもの「お兄ちゃんメール」だ
<いいよ、お土産何がいい?>
<何か食べたい>
はいはい、いつも自分で決められないっていうか、
何だっていいっていうか。
マジ恋愛したくないタイプだけど・・。
なんか。
憎めない・・・。
ふと疑問に思ったのは、
焦がれる愛情があるから身体を重ねるのか、
身体を重ねるから愛情が生まれるのか・・・。
あたしには後者がわからない。
でも、あたしは先輩にキスをしたことで
それを想い「興奮」できたのは確かだ。
だから、あたしは出がけにさくっと「シャワー」を浴びた。
なんとなくの・・「期待」だ・・。っていうか「保険」
しかし、その行為はすべてではなく、
ただの「アイテム」でしかない。
あたしが普段食べたり、話したり、寝たり。
「欲」においては全くの平等だ。
だけど、それを突き動かす、
「何か」が常にそこにあるんだろう。
あたしはそれにゆだねることにしたんだ。
あたしの「はだかの気持ち」はどうなんだろう・・・。
電車に揺られながら、
あたしはあたしの心に問いかけていた。
一つ気がかりがあった・・。
はだかの身体とはだかの心は「同期」した関係なのだろうか。
答えは「NO」だった。
ベストアンサーは
「限りなく近ければ、それはそれでいい」ということだろう。
でも、あたしは、いく。
「心」を試したいんだ。
そんなわけのわからない動機なのかも知れない。
・ * * ・ * *
センパイのアパートは、意外と瀟洒だった。
くそ、あたしのアパートはどうなんだよといいたいが、
仮にも社会人が、学生が住むようなところにいるのもなんだろう・・。
チャイムを押す、・・何かいつもにない緊張感の原因は何だ??
あたしはセンパイに迎え入れられて、部屋に座った。
「はるかちゃん、なんか飲むか?」
「・・うん、」
センパイは意外にもジュースを持ってきた。
「あたし、お酒がいいな・・。」
「ああ、子ども扱いしてゴメンな・・。成人済んだもんな。」
センパイは、今日は何か妙だった。
「はるかちゃん、実はな、いわにゃいかんことがある。
わし、女の子好きになる資格ないんや。」
「・・・はい????」
何いってんのこの男は・・・またあたしは混乱した。
あたしは、体よく振られるながれか?・・これ。
「伯母ちゃんに聞いた。はるかちゃんも聞いたやろ。」
ああ、センパイのおかんの「狂言」のことね。
「あれなぁ、みんな、その話にしてしまった・・。
あることを隠すためにな。」
「・・・・え・・・?」
あたしはいつになくシリアスなセンパイを感じていた・・。
この人は今、あたしに真剣に向き合っている・・。
うん、そこにいたのはあたしにとっての「内海耕作」
はだかの彼だ。
「・・・こうさくさん・・・・」
わざと言ってみた・・。
「・・・え?・・」
センパイは驚いた風にあたしをみた。
少年のような澄んだ目だった
「はるかちゃん、それはやめてぇな。
・・実はわしな・・中坊の時、間違いおかしたんや。」
「・・・え・・・??」
意外な告白だった。ちょっとヤバいアプローチだったかな。
「1年後輩の子やったんだが、
その事でおかんや伯母ちゃん、御前様まで巻き込んで、
えらいことになったんや。
相手の親にもさんざん責められた、
おかんが一番ひどいいわれかたしてたな、
それでおかんに、もう二度と女に近づくなって言われたんや。
中坊のわしにむかってやで。」
センパイの「封印」はそこにあったのか・・。
単なるおかんのマインドコントロールじゃなかったんだ。
じゃ・・、そうだね、大人はみなあたしに隠してたって事だろうけど、
もしかするとあたしが、この呪縛を解く事ができる
という期待してたのかな・・。
それはあたしの思い上がりだった。
でも、何かうれしかった。
センパイは、自らその鎖を解いたから
「・・・ありがとう・・。」
あたしは思わずそんな言葉を言っていた。
センパイはびっくりした顔をした。
「はるかちゃん・・、せやさかいな、
わしは、女性を妹とか姉とかという目でみることにしたんや。」
「ふ~~~~~ん」
心は決まった。
あたしは思い切って、センパイに抱きついた。
「ねえ、なんとも思わない?・・こうさくさん」
あたしは耳元で囁いた。
・・処女のやることじゃないよな・・。
でもやってみた。
「はるかちゃん・・・あかんて、『妹』とはそうやれへん。」
「関係ないよそんなこと。あたし、今、『はるかという女』として抱かれたいんだ。」
そうだ、このことに意味なんかないところに意味があるんだ。
あたしが思った瞬間に、それは真実の表れになるんだ。
・・・・そうだよ・・・。
あたしは、女になるよ・・
「・・はるか・・・」
そんな声が、耳元で時々聞こえた、時々うずいて、
そして痛く、時々切ない時が流れた。
そのたびにあたしは、抑えることなく喘いでいたかも知れない。
とにかく縛りを解放したかった。
あたしも、そしてセンパイにも。
あはぁ・・・いぃ・・・・・・
うッ・・・。
でもね、あたしは、これで急速に
センパイを好きになるって事じゃない・・。
ただ、センパイの心の闇を
少しだけ明るくできたかも知れないんだ。
それがうれしいだけ。
でも、これは、バーターで、
あたしも心の闇があるから。
その解消は一人では無理だと思ってた。
でも、今このあたしの感覚と共になんかできる感じがした。
身体あわせるって、こういう事もあるのかな・・。
すべてだとは思わないけどね。
とにかくあたしの関門をこじ開けてくれて
ありがとうセンパイ、
あたしも一つ皮が剥けたと思う。