はるかが・・繫ぐ η(eta)
はるかの「秘密」
「こんばんは、遅くなってすみません。」
「だいぶ忙しそうだね。良いことなのか、悪いことなのか。」
「ええ、なんか、最近の高校生見てると、よその星の住民みたいで。生活指導が忙しいのはこりゃ良くないですよ。」
「先生、それはないっしょー。」
「はるかはまだマシな方かな、ははは。」
「あたし、そうやってひとくくりに『高校生は』なんって言われるのイヤだなぁ。先生いっつもじゃん。」
はるかはむくれた。
純は浦上からビールをつがれると、一気にあおりつつふと、はるかを見た。
「あれ?はるか、今日はまたずいぶんおとなしい格好だな。」
はるかは、意味ありげにすっと立つと、ポーズを付けた。
「わかる?先生。この服、ママのなの。」
「へぇ・・・。」
純は驚いた顔を見せた。
「おっきくなったんだなぁ・・はるか。」
「あれ?反応が微妙にちがう・・・・。」
はるかは飛鳥の方を見ながら、ちょっと困った顔をした。飛鳥は涼しい顔でワインを傾けながら、からかうように言った。
「あら、死んでもイヤだって言ってたのあんたでしょ?丁度良いじゃない。」
「ちょっとショックぅ。」
そう言うとはるかはイスに腰掛けて、恨めしそうに純を見た。
「え?何の話だ?また飛鳥となんかたくらんでただろ?」
「へへへ・・当たりだよ。」
「バカなことやってないで、来週の生徒総会のスピーチは考えたのか?はるか。」
「あー、マジ忘れー。でもぉ、原案は一応、まとめたんだよ、あとは推敲だけ。多分間に合う。」
はるかは舌を出しつつ言った。
「・・・しかし、よくあんたに勤まるわよね、生徒会長・・。大丈夫なの?あんた方の学校。」
飛鳥が憎まれ口を叩いた。
「あら、あたしはもう二期も生徒会長勤めてるんですからね。人望よ人望・・・。」
「よく言うよ・・。」
飛鳥は笑った。
「さて、勉強勉強・・。バイビー先生、今日はゆっくりして行くんでしょ?ごきげんよう~。」
はるかはウインクして二階に上がっていった。
浦上は苦笑しつつ、純にビールをついだ。
「まったく、子どもなんだか、大人なんだか・・・。よくわからんな、あの子は。」
「・・しかし、学校での人望は抜群なんです。まぁ、男子生徒にしたら、彼女にしたいナンバーワンみたいですね。まぁ、当然と言えばそうですけど。
ただ、そういう子って女子に嫉妬されがちなんですけど、逆に妙に女子の方に人気がある。」
「ふうん・・あたしにはバカギャルにしか見えないけどなぁ。」
純はビールをあおりながら続けた。
「くそ真面目よりは良いんじゃないかな。いや、時代に真面目であるからああなんだと思うが。はるかの生徒会長としての活動はすごいものがある。」
「・・・ふうん・・。」
「成績も運動も、すべてが群を抜いてるし・・・。我が校の誉れだと教頭が喜んでますが。」
純は自慢するように言った。
「私にはそこがちょいと怖い所なんだがね。妙に理想的に良い子すぎないか?出来過ぎの感じがする。それで良いのかと時々感じるのだが・・。」
浦上は静かに言った。そして純がそれに続けた。
「反動があるかも知れない・・・ですね。」
浦上はまたうなずいてこう言った。
「私は、本来のはるかが「期待されてるはるか」を演じているような気がしてならない。本当の『はるか』はもっと別の所にあるんじゃないかと、そんな感じがするんだがね・・・。」
遮るように、飛鳥がそこでつぶやいた。
「ね、あの子って本気で男に興味がないんじゃないのかな・・。」
皆は驚いたように飛鳥を見た。
飛鳥はそこで、ふうっと覚悟を決めて言った。
「実は、あの子、どうしても男の子より女の子が好きになる・・。そう言ってきたことがあったの。」
飛鳥は続けた
「バイセクシャルって言うわけでなく、恋愛対象に「男性」がいないって感じなの。あの子が中坊の時に、そんな相談を受けたことがあったの。ずっと黙ってたけれど。」
飛鳥は、二階のはるかに気取られないように、声を潜めて言った。
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