日本の仏教がお葬式と深い関わりがあるわけを探ってみる その5
法要や戒名はどんな意味がある?
さて、死後に贈られる戒名のお話をいたしましょう。
一文字何万とかよく言われていたり、戒名に格式があるように思われますが、目的は位牌とお墓につけられる依り代であると言うことです。
そして、院殿号居士大姉であろうが、信士信女であろうが、基本的に授戒は一切平等であるということです。
つまり、あの世は民主主義なのです。
よく、お釈迦様の説法を聞く「席次」だという言われ方をしますが、そんなコンサートの指定席なようなものではなく、仏教的にはなんの区別もないよと言うことを考えれば、当たり前のことだろうと思います。
あたし的には、立派な戒名は、生前の地位への執着にほかならないというのは、まぁ言い過ぎでしょうが、間違いはないと思います。
男性と女性とでは呼び名が違うのですが、とりあえず参考までに、戒名の序列みたいなものを挙げてみましょう。ですが、この序列って死後は何の意味もありません。
という序列になりますが、これをとらないのが浄土真宗で、男性には「釈」、女性には「釈尼」という法名と呼ばれる名を贈ります。つまり成仏ではなく、「仏弟子」になったという証になります。
さて、戒名などが刻まれるのは、位牌とお墓です。この風習はそもそも仏教が由来ではありません。
仏教は執着を否定しますから、ブッダ自身は、遺骨とか墓とか、そんなものに執着せずそのまま捨てればよい」・・。的な考えであったと言えます。
ただ、日本の風習では「遺体」はものすごく神聖化されます。意外に思えるでしょうが、実はお墓より「位牌」が重視されているのです。
この考えは「依代」という宗教的思想に基づきます。遺体から抜けた魂は、何かに宿ってこの世に現れるという信仰です。この信仰は中国の道教や日本の神道に共通した考えです。そして、その魂の依代が「位牌」というわけです。
位牌は白木からいずれ黒塗りになるのですが、院殿号やらのなんちゃらが生まれるのはこのあたりなのかもしれません。
そもそも位牌とは、中国において、白木に自分の官位姓名を記し、自分の立身出世を祈る風習の産物ですが、それを仏教が故人礼拝のアイテムとして借用した形になったのです。
この風習は、鎌倉時代に日本に伝わったと言われます。これが葬儀のアイテムとして取り入れられ、江戸時代になって一般に浸透したと言われています。
ですから、そこに記す「戒名」も、なんとなく格付けが行われていったのでしょう。社会学的な見地から言うと、ごく自然な流れです。
仏壇の歴史は意外と古く、奈良時代以前、白鳳時代に天武天皇が、各家に寺と仏像と経を安置せよという詔を出しています。で、各家に寺のミニチュアを作るべしという話になりました。それが「仏壇」の始まりで、仏壇とは「寺院」のミニチュアだというわけです。
さて、次回は「法要」の正体について深掘りします
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