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はるかが・・繫ぐ complement ι

衝撃的にクライシスはやってきた。


はるかはいつも一番に起き、
自宅の小さな部屋にあるチャペルの蝋燭をともして
毎朝礼拝する祖父を待つのがずっと日課だった。

それは、小さいときから
浦上がはるかに与えた日課だったからだ。

そして、それははるかの母の
咲の日課であったということも
合わせて言い聞かせていた。

茶髪の子ギャルの風体はしていたが、
はるかはこれだけは守り、
祖父がほめてくれるのをずっと日課にしていた。

ところが、時間になっても浦上が現れない・・。
はるかは、妙な胸騒ぎがした。

はるかは浦上の寝室に向かった。
祖母はとっくに起きていて台所にいたので、
はるかは祖父が疲れて寝坊したのだと考え、
少しいたずらっぽい起こし方をしようと考えていた。

「おじいちゃん!」

はるかは浦上の鼻をつまんでそう言った。

とたん、はるかは

「え・・・?」と声にならない声を出し、
祖父の鼻の冷たさが、顔全体に広がっているのを感じた。

「・・・うそ・・・。」
 
はるかは祖父を必死に揺り動かした。
反応はなかった。

はるかは、我を忘れ、半狂乱になった。


浦上慎一は逝った。


はるかは浦上の葬儀が終わると、
それきり部屋に引きこもり、
学校にも行かなくなってしまった。

飛鳥がそのことを純から聞き、
純と一緒に様子見にやってきた 

「・・え?はるか、部屋から出てこないのぉ?」

飛鳥は、無理ないかという顔はしていたものの、
はるかを引きずり出すしかないと考えていた。

飛鳥は階段を上がってはるかの部屋の前に立った。
「はるかぁ・・・入るよ、いい?」
「・・・・・。」
「あけるよ」
「・・・・・・うん・・。」

中からはるかの声がした。
飛鳥はドアを開けて、部屋の様子に驚いた。
部屋の荷物をすべて荷造り終えた中に
はるかがちょこんと座っていたからだ。

「はるか・・・あなた・・。」
「この家をでようかと思うの・・。」
「・・え?、どういうこと?」
「・・・うん、あたし、家を出る。」

はるかは、どこかうつろな返答をして、窓の外を見ていた。

「家を出るって・・、あなた。」

「ねぇ・・・お姉ちゃん・・・。」
「なんだ?」

「あたしって・・・
どんな存在だったんだろ・・。
あたしは、『作り物』だったんじゃないかな・・・。

あたしはなぜ生まれたんだろ、
で、あたしはどう存在したら良いんだろ。

・・・・この家にいる限り、ママが意識できた。
おじいちゃんもいた。だから、学校でもがんばっていた。
・・・でも、これからは・・・。
なんか不安・・・。理由は解らないけど。」

「・・・はるか・・・。」

飛鳥は釈然としないまま階下に降りてきた。

「・・はるか、家を出て行く宣言した・・・。」
「え?・・じゃあ、あの子、進路先を決めたのかしら」

祖母の裕子がが驚いて声を上げた。

「でも・・・なんか、普通じゃないな・・・。
お母さん、はるかにちょっと気を付けて見ててね。
何かあったらすぐ桜新町に連絡してね」
「・・ええ・・・、それはもちろんだけど・・。」

「俺がはるかに、なんか言ってみようか?」
純が言うと、飛鳥は強くかぶりを振った。
「ダメよ純、はるかは学校にも行ってないんでしょ?」

「ああ、担任が心配してる。」

「・・まったく、学校の先生ってのは結構ドンなんだね、
心配するだけで何の解決策も持ってないよ。
はるかはきっと学校に対しても、
お父さんに対しても、
そしてこの家に対してもなにかこう・・・・、」

「なにか?」

「うん、なんか、今を脱皮してるような・・・、
さなぎが孵ってるような・・、
そんな状態になってる感じがするのよ。

それもすごく難産・・・。

次章へ続く



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