研究不正はダメ!。絶対!
名古屋大学は、同大の研究チームが2019年に科学誌『ネイチャー』で発表して翌年に撤回した論文と、その関連論文の計3本について、データの捏造などの研究不正があったと発表しました。3つの論文はすでに撤回されたそうですが、撤回すればよいという問題ではありません。そもそも、研究不正はあってはならないのです。
論文は最先端の炭素素材・グラフェンナノリボンに関する論文だったようです。読んだ記事によれば、合成した物質の分子量や構造などを示す実験データの使い回しなど、3論文に載った27の図の計54カ所で捏造や改ざんがあったらしいのです。日常会話の雑談なら、多少”盛った”話のほうが面白いのですが、研究論文には小さな”盛り(誇張)”も許されません。このような研究の故意の編集は、捏造や改ざんと見なされます。図だけで54か所ですから、少しの”盛り”では済まされない数ですし、そもそも1つでもあってはいけません。
有名な大学での研究不正は、ここ数年だけでもしばしば報じられています。世間から”エリートと称される人たち”が、なぜバレるかもしれない研究不正に手を染める背景には、研究を取り巻く環境変化が関係しています。
最初の理由は、『研究費獲得の競争激化』です。大学自体や大学に勤める教員には、様々な評価が行なわれます。その評価指標の一つが獲得した研究費の額です。当然目立つ研究でなければ、大きな研究費は獲得できませんから、どうしても”研究成果を焦る人”がでてきます。
次の理由は、『研究者の任期付任用の増加』です。研究者のポストは限られていますから、ポスト獲得競争が激化し、特に若手研究者にとっては任期付きでないポストを早く得るために、優れた研究成果を早く出す必要性に迫られます。これが極端になると、不正行為につながる可能性があるのです。
アメリカでも過去に研究不正が蔓延した時がありました。そこでアメリカは1980年代から研究不正に正面から取り組みました。しかし、日本は約25年遅れの2006年にようやく文部科学省が、研究不正のガイドラインを作成しました。このことからわかるように、日本はアメリカに比べて研究不正に関心が低く、その結果、研究不正に対する知識や対処がとても貧弱なようです。この背景には、”大学の先生は決して不正はしない”という性善説(都市伝説?)があったのかもしれません。
ここ数年、文科省のガイドラインに沿って作られた研究不正に関するEラーニングの受講が、大学教員全員に義務付けられていますが、研究不正は無くなりません。今回の報道を知って、もっと根本的な対策が必要ではないかと思いました。
「研究不正はダメ!。絶対!」
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