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アンサング偉人伝#2 人間嫌いのキャヴェンディッシュ

 ヘンリー・キャヴェンディッシュ(Henry Cavendish)は、イギリスの化学者・物理学者だと紹介されますが、本人は全然そう思っていなかったようです。裕福な貴族の家に生まれ育ち、ケンブリッジ大学で学んだキャヴェンディッシュは、寡黙で人間嫌いな性格であったことが知られています。

 彼は、莫大な遺産による資金を背景に研究に打ち込み、数多くの研究成果を残しました。ビオ・サバールの法則で有名なビオが「キャヴェンディッシュは、科学者の中で一番の金持ちであり、金持ちの中で最も偉大な科学者である」と語っていますが、政治的な名誉や経済的な成功は一切望まず、生活は質素であったと言われています。

 キャヴェンディッシュが生前に公開した研究成果もありますが、彼の死後には、生前に発表されたものの他に、未公開の実験記録がたくさん見つかっています。その中には、ジョン・ドルトンやジャック・シャルルによっても研究された気体の蒸気圧や熱膨張に関するもの(ボイル・シャルルの法則)や、クーロンの法則およびオームの法則といった電気に関するものが含まれていました。実験記録の日付によれば、これらの法則はすべて再発見ということになります。

 キャヴェンディッシュは個人的な趣味で研究していたので、研究成果の公表には無頓着だったようです。自分が納得すれば、それで十分だったようです。物理探査と最も関係があるのは、万有引力定数の決定です。本人は、地球の平均密度が知りたかっただけのようですが、図のような大掛かりなねじり秤を製作して、重力の実験を行ないました。このねじり秤がエトベスのトーションバランス(磁気傾度計)を考案するきっかけになりました。さらに磁気傾度計の発明が、重力探査へと発展します。

 ケンブリッジ大学には、彼の名を冠したキャヴェンディッシュ研究所があります。キャヴェンディッシュ研究所は20世紀の核物理学の中心地で、初代所長はマクスウェル方程式で有名なマクスウェルです。その後、レイリー卿、J.J.トムソン、ラザフォード、W. L. ブラッグという錚々たるメンバーが所長をつとめ、2012年までに29人のノーベル賞受賞者を輩出しています。

 最後にキャヴェンディッシュ蘊蓄を1つ紹介します。現在流通しているバナナの大部分は、キャヴェンディッシュという品種だそうです。バナナの世界では、キャヴェンディッシュは超有名みたいです。


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