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偉人の名言#9 ウイリアム・トムソン

”測定することができなければ、改良することはできない”

  実は意外と知られていませんが、ウィリアム・トムソンケルビン卿は同一人物です.ウイリアム・トムソン(ケルヴィン卿)は、アイルランド生まれのイギリスの物理学者で、古典的な熱力学の開拓者の一人です。トムソンは早熟の天才で、10歳のときにグラスゴー大学への入学が許可されました。その後ケンブリッジ大学で学んだトムソンは、22歳のときに母校グラスゴー大学の物理学教授に就任しています。

 トムソンは、カルノー理論を発展させた絶対温度の導入や、熱力学第二法則(トムソンの原理)の発見、”温度勾配がある物質に電流を流すと熱の移動が起こる”というジュール=トムソン効果の発見などの業績で知られる、19世紀後半から20世紀にかけてのイギリス物理学会の重鎮です。

 トムソンはこれらの多くの業績により、1892年にイギリス王室から、バロン(男爵)の爵位を受けました。トムソンは、グラスゴー大学に勤めていた時の大学構内の小川の名前から、自らを”ケルビン卿”と名乗りました。このケルビンという名は、絶対温度の単位ケルビン(K)としても知られています。もし、小川の名前が別の名前、例えばゴードンだったら、温度の単位がGとなっていたかもしれません。

 トムソンは熱力学の大家だったので、フーリエの熱伝導理論を用いて、地球の年齢が数千万年、長くても4億年を越えることはないと推定しました。しかし、当時の地質学の見解とは矛盾し、まだ生まれたばかりの進化論を交えて、”地球の年齢”の論争になりました。

 トムソンの推定結果が今の知識(地球の年齢は約45億年)から大きく違っているのは、当時発見されていなかった放射性元素の崩壊熱が考慮されていなかったためです。また地球内部の熱伝導率が場所によらず一定という仮定も誤っていたため、正しい値からは大きくずれてしまいました。現代では、トムソンの地球の年齢推定が大きくずれていた理由は、地球内部の対流により熱が表層よりも内部で速く伝わることを知らなかったことが大きく、放射性崩壊熱の影響は小さいことがわかっています。

 トムソンは、地球の年齢を推定するための測定データとして、井戸を掘って地下の温度を測定し、地下の温度勾配を利用しました。そのため、トムソンは物理検層の元祖とも考えられています。冒頭の名言は、トムソンらしい含蓄のある言葉だと思っています。


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