博士の愛した”方程式”
工学博士の端くれである私は、仕事柄、多くの数式に出くわします。”愛した”までの感情は湧きませんが、”好きな”方程式はあります。その方程式は、『マクスウェル方程式』です。
マクスウェル方程式は、電場と磁場の物理現象を簡潔に示した4つの偏微分方程式から構成されます。マクスウェルがこれらの方程式を考案した時には、もっと数が多かったそうですが、電磁波の実証実験で有名なヘルツや、孤高の天才技術者ヘビサイドの尽力で、今のようなシンプルで洗練された方程式の姿になりました。
電場と磁場の相互作用は、マクスウェル以前にエルステッドやファラデーが実験的に発見していましたが、それを説明する理論的な方程式を見出したのがマクスウェルになります。私の主な専門分野は、電気探査や電磁探査ですから、最も身近な方程式がマクスウェル方程式になります。ただし、マクスウェル方程式はシンプルで綺麗ですが、理解したり実際に応用するには骨が折れる方程式でもあります。
『博士の愛した方程式』は、小川洋子さんの小説で、第1回本屋大賞を受賞したベストセラーです。映画化もされたので知っている人は多いと思います。この本の中では複雑な数式は出てきませんが、四則演算で構成された簡単な数式と、それに関係した様々な性質を持つ”不思議な数”が紹介されています。その中の一つが『友愛数』です。友愛数は、約数の和が同じになる二組の数のことです。本で出てくるのは、220と284です。
私の誕生日の28は『完全数』です。完全数というのは、その数を除いた約数の和が一致する数のことです。つまり、28=1+2+4+7+14 ということです。この本のタイトルから、数式が書かれていることは想像できますが、実は数式を説明するための図も、本文中に数多く描かれています。
この本は、理系と文系の橋渡しをするような本です。数学が苦手な文系の人でも、文学が苦手なガチ理系の人にも、面白く読めることは間違いありません。
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