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遺跡探査へのいざない

 私はガチの理系ですが、なぜか考古学が好きで、物理探査の応用の一つとして遺跡探査の研究も行っています。遺跡探査によく使われるのは磁気探査や地中レーダ探査です。磁気探査は地中に埋まった鉄製品を見つけるのに威力を発揮します。また、地中レーダは深さ2m程度なら、高分解能で地下を可視化できます。

 現在、遺跡探査というと、地中レーダを思い浮かべる人が多いかもしれません。これは早稲田大学の教授だった吉村作治先生の影響が大きいと思います。最近はテレビであまり見かけませんが、『世界ふしぎ発見』のエジプト編では、ほぼ毎回出ていました。その放送の中でも、地中レーダ探査を紹介することが多かったためだと思います。

 地中レーダは、送信アンテナから放射した電磁波が、地中の対象物の表面で反射して地表に戻ってくる電磁波の往復時間を計測することで、対象物までの距離を測定します。これは、コウモリやイルカが使っている反響定位という特技の模倣です。このような生物を模倣することを生物模倣(バイオミミテーション)といいます。

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 私は九州大学の工学研究院に所属していますが、九州大学にはアジア埋蔵文化財研究センターという文理融合組織があって、私はそこの教員も兼任しています。ここでは、文化財調査法開発部門というところに籍を置いて、遺跡探査の研究をしています。昨年度は、福岡市のお隣の糸島市からの依頼で、新町支石墓しせきぼ群と泊大塚とまりおおつか古墳で、地中レーダ探査を実施しました。

 遺跡探査は文理融合した面白い学問分野だと思いますが、研究者は年々減っています。私は、日本文化財科学会という学会に所属していますが、年一回の学術講演会での遺跡探査に関する件数は、数件あるかないかで、絶滅の危機にあります。遺跡探査の人気が無ければ自然淘汰されるので、いずれ遺跡探査の研究者が日本から居なくなるかもしれません。

 絶滅しそうな学問分野・遺跡探査をやってみようと考える、奇特な若者はいませんか。いまからでも一生懸命勉強すれば、すぐに日本の第一人者になれるかもしれません。


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