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アンサング偉人伝#9 化石採集者・メアリー

 メアリー・アニング(Mary Anning)は、18世紀から19世紀に活躍したイギリスの初期の化石採集者で古生物学者です。

 メアリーの父リチャードは家具職人でしたが、ライム・リージス村沿岸の崖で化石を採集し、それを観光客に売ることで生計を立てていました。この村は古代には赤道直下の熱帯の海底だった場所で、豊富な化石に恵まれた土地でした。彼は子供達に化石採集のノウハウを教えてましたが、特に強い関心を示したのが娘のメアリーでした。

 18世紀終わりから19世紀始めにかけて、化石採集がブームになったそうです。初期の頃は切手収集と同じ余暇(趣味)の位置付けでしたが、しだいに地質学や生物学の理解に必要な科学に育っていきました。生活のために観光客相手に化石販売をしていたメアリーでしたが、高い値段で買ってもらえる化石に科学的な興味を抱いたようです。

 メアリーの学術的な貢献は、イクチオサウルスの全身骨格の化石の発見です。イクチオサウルスの化石の一部は、1699年にウェールズで発見されていましたが、全身の化石は見つかっていませんでした。これは重要な発見で、化石はすぐに英国王立協会の手に渡りましたが、メアリーはこの時12歳でした。彼女はその後も、2体の別のイクチオサウルスの化石を発見しています。彼女発見したイクチオサウルスは、現在はテムノドントサウルス・プラティオドンと再分類されています。下はメアリーが発見した頭骨の絵です。

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 メアリー・アニングの発見した様々な化石は、絶滅した古代の生物への正しい理解を導びきました。なかでもベアゾールとよばれる石が、”化石化した糞”であると結論付けた発見は、古代の生き物の暮らしを知るうえで極めて重要な発見でした。化石化した糞は、いまではコプロライトと呼ばれています。

 メアリーは死後、一旦は歴史から忘れ去られたが、その功績が後に再発見され、ロンドン地質学会は彼女を追悼して聖ミカエル教会にステンドグラスを作りました。その銘にはこう書かれています。「このステンドグラスは、1847年3月9日に亡くなったこの教区のメアリー・アニングを追悼するために作られたものである。これは、司教代理とロンドン地質学会の会員有志によって、彼女の博愛、高潔と地質学への貢献を記念して作られた」。英国科学史ジャーナルは、メアリー・アニングを”世界の歴史上で最も偉大な古生物学者”と称賛しています。

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 メアリーは、She sells sea shells by the sea shore.(彼女は海岸で貝殻を売った)という早口言葉のモデルになった人物であると考えられています。この早口言葉は知っていましたが、メアリーと関係があることは初めて知りました。


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