【CRAFTSMAN PREVIEW vol.03】 砥部焼職人・宮内太志さん
住まいの道具研究所では、様々な職人さんとコラボレーションをして住まいの道具づくりをしています。
今回は、いつも手洗い鉢の制作を依頼している宮内太志さんの工房を訪れました。
砥部焼職人 宮内太志さんとは
宮内さんは、砥部の工房で作陶を学び、現在は窪野町という、松山市の里山に工房を構えています。
味わい深い色合いと、手への収まりがやわらかな丸みを帯びたフォルム。
ほかの作品と混ざっていても
「あ、宮内さんのうつわだ」と気づかされる
宮内さんらしさがあふれているものづくりをされています。
うつわは、衣・食・住でいうと「住」
うつわは食事や飲み物と一緒にあるもの、というイメージがあります。
ところが宮内さんにとって、
うつわは衣食住でいうところの「住」にあたるのでは?と考えます。
うつわ自体は、どんなに頑張っても食べられないじゃないですか?
どちらかというと「きぶんの栄養」だと思うんです。
そこにあって、気持ちの良いもの、だから。
そんな考えのもとつくられる、宮内さんのランプシェードは
「明かりとり」というより「隅っこにあって雰囲気をつくってくれるもの」。
なくても生きていけるけれど、
あるとより住まいが豊かになるもの。
まさに、僕がつくりたい住まいが、そのようなものなのです。
きれいなものより、崩れかかっているものが好き
宮内さんの工房は、古い日本家屋です。
冬場は隙間風でとても寒く、
薪ストーブを焚いて作陶しています。
宮内さん曰く
「寒いけれど、崩れかけじゃないと落ち着かない」のだそうです。
目指す陶芸も「骨董のようなもの」。
これは宮内さんの宝物だという初期伊万里。
拾ってきたものです。
きれいなものより、崩れかかったもの
荒々しかったり、ムラがあるもの。
そういうものに憧れているけれど、
まだまだたどり着けないのだそうです。
“あの人”がつくった住まいの道具
僕は、施主様を連れてよくこの工房を訪れます。
施主さんのイメージを宮内さんに伝えるのはもちろんのこと、
宮内さんという職人さんを施主さんに伝えたいからです。
こんな工房で、こんな想いで、こんな人柄なんだということがわかれば、
さらに道具が大切なものに思えてくると思うのです。
「あの寒い工房では、アニソンアカデミーを吹き込んだテープがかかってたなぁ」とか(笑)
道具に一つ一つ思い出ができてきて
さらに大切なものとなる。
僕が目指しているのは、そういう豊かさです。
「住まいの道具展」でつくり手の温度を伝えます
11/30-12/1 開催の「住まいの道具展」は、
愛媛のクラフトマンの顔、声、想いを伝えるようなイベントにします。
「○○さんがつくったピーマン」みたいな感じで
食のシーンでは、だいぶ“顔の見える化”が進んでいます。
「宮内さんがつくった照明」みたいな感じで
住のシーンでも、使っているとその人の顔が浮かんでくるように。
温度が伝わって、使うたびに豊かな気持ちになれるように。
そんな住まいを提案していける時間にしたいです。
ぜひ足をお運びください。
text by 大木春菜