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人材紹介会社の構造を理解し、採用のパートナーとして力を発揮してもらうには

中途採用を進める中で、人材紹介会社さんの力を借りることはとても有効です。ただ、友人・知人の経営者や人事の方と話すと、人材紹介会社さんと良い関係が築けず、もったいなと思うことが多いので、私なりにポイントを考えてみたいと思います。


まず人材紹介の構造を理解する

「人材紹介会社って企業から求人出たら、自社の登録者DBから該当者探して、推薦するんでしょ?」と多くの方が理解してると思います。
確かに上記のようなパターンもありますが、多くの場合、もっと多くの複雑な工程が存在していたりします。
※このへんは私の知る範囲で書いてるので「違うぞー」みたいなのがあったら、人材紹介会社の方、教えてください。また今回はサーチ型やリテナー型は除き、一般的な人材紹介会社を想定して書いています。


一般的な人材紹介会社の業務を分解すると、「企業側」と「求職者側」の2つに分かれます。
それぞれにどんな業務があるかというと、

【企業側】

・求人の獲得
・候補者の推薦
・面接の日程調整

あたりが主な業務。

それに対して
【求職者側】

・登録者を集める
・登録者に対してキャリア面談
・案件の提案
・面接の日程調整
・合否の連絡
・入社条件の交渉代行

といった感じでしょうか。

想像に難くないと思いますが、人材紹介は成功報酬という仕組み上、「求人の獲得」よりも「求職者の獲得、マッチング」の方が難易度が高く、そこに多大なコストをかかります。


人材紹介会社はどのくらい求職者の獲得とマッチングにコストかかるのか

ここではわかりやすいように、手数料率30%で年収500万円の人を1名決定する場合のコスト内訳を例に考えてみます。

手数料率30%で年収500万円なので、企業から人材紹介会社に払う費用は150万円(①)!

この1名の採用決定を出すために、自社の登録者DBから候補者が出ればいいですが、最近ですと人材紹介会社自体も候補者を集められないことも多く、リクナビNEXTやen、ビズリーチなどの媒体(以下、二次媒体)の登録者にスカウトを送って登録者を集めていることが多いと聞きます。

その場合、スカウト費用は無料だったり月額5万円くらいとのことですが、スカウト経由の登録者が採用決定した場合は、企業から人材紹介会社に払われた手数料額の30%程度を二次媒体に支払わなければなりません。

この場合も二次媒体経由の候補者だったとすると、150万円の30%=45万円(②)を二次媒体に支払うことになります。


また人材紹介会社の方数社からヒアリングすると、キャリア面談した人が採用決定までする確率は約10%程度なようです。

なので1名採用決定するために10名の面談を集める必要があります。もちろん前述の通り、二次媒体も使用しますが、人材紹介会社独自で広告も出稿してます。よく見かけますよね!?

広告出稿から登録面談までのCPAはどんなもんなんでしょうね。職種によるでしょうが、1万円とかかかりそうですね。(上場されてるJAC RecruitmentさんのIRだと広告宣伝費は売上の5〜7%くらいなので、まぁ妥当かと。)
とすると、1名採用のために募集広告費として10万円(③)が必要。


さらに、
1名採用決定の為には求人開拓の営業やキャリア面談など多くの人が関わってます。その人件費で約37.5万円(④)くらいでしょうか。(これもJACさんのIRから。売上の25%が人件費として計算)

あと家賃や雑費もあるでしょうが、いったんそこはなしと考えます。

以上を計算していくと、
①150万円−②45万円−③10万円−④37.5万円=57.5万円

手数料率30%、年収500万円で1名採用決定した場合の人材紹介会社に残るのは「57.5万」で手数料率換算すると11.5%です。

感覚値ですがこれは良い方で、もっと少ない人材紹介会社も多いのではないでしょうか。(広告宣伝費とかもっとかかってる会社はざらにありそうですし)
本当なら経費がもろもろ引かれるわけなので、さらに営業利益率となると下がりそうですね。。。

「採用のパートナーとしてコスト削減に協力してほしい」と手数料率引き下げを強引に迫っている会社をたまに見かけますが、上記のような構造なので手数料率を5%でも下げられたらかなりきつそうです。

なので、
むやみやたらに人材紹介会社に対して値下げを要求する=「ウチの会社のために赤字でやってください」と言っているようなものなので、人事や経営者の方は、あんまりガンガン値引き交渉しちゃうと、候補者推薦してくれなくなっちゃうと思うので気をつけましょう笑


では、そんな中で人事ができることは何か

大きくいうと以下の2つ

・人材紹介会社の方が自社を推薦しやすいようにしてあげること
・選考フローの改善

です。

ここではなぜこの2つかの前に人材紹介会社と人事がパートナーとして協力するとしたら、何を協力するのがよいかを先に考えます。


一般的に、
人材紹介会社の人は企業に候補者を推薦する前に必ずキャリア面談を行います。候補者の経歴や今回の転職の軸、希望などを聞いた上でオススメの企業を推薦する、といった流れです。
ただ、前述の通り、面談後採用まで至るのは約10%。逆に言えば10人中9人は採用までいきません。

この10人中9人はどうなったのか?の内訳ですが、何人かの人材紹介会社の方にヒアリングしたところ、

・4〜5人は他の人材紹介会社経由で転職
・2〜3人は転職するのをやめる
・2〜3人は選考受からず、もしくは他の手段で転職


という状態になるそう。
転職するのをやめてしまったり、選考受からないパターンは如何ともしがたいですが、約半数の「他の人材紹介会社経由で転職」というパターンをいかになくすか、ということを人材紹介会社の方は考えていると思います。


なので、採用を担当する人事や経営者としてはどうやって一緒に「他の人材紹介会社経由で転職」というパターンをなくせるか、を考え協力していくことを考えていくことが双方のメリットにつながりそうですね。


「他の人材紹介会社経由で転職」してしまう要因はいくつかありますが代表的なものとして、

・他の人材紹介会社経由で受けていた会社が先に内定出て、そこに決めた
・その候補者に自社を進めたが、選考受けることを断られてしまった
・他の人材紹介会社経由で受けていた会社の方が転職の条件に合っていた
・候補者に合う求人がなかった


などが考えられます。
候補者に合う求人がなかった、というのは別にしても他の3つは人事と人材紹介会社が協力することでカバーできそうです。


具体的に言うと、

【他の人材紹介会社経由で受けていた会社が先に内定出て、そこに決めた】
→ このパターンは結構多いようです。一説によると転職者の60%以上は一番初めに内定が出た会社に転職する、というデータがあるらしい。
とすると、選考フローを早め、必ず最初に内定を出せる体制にすることで、少なくとも内定前に断られてしまう、のようなことはなくなりそうですね。


【その候補者に自社を進めたが、選考受けることを断られてしまった】
→ このパターンも結構ありそう。そして人材紹介会社の人が最も苦労する、パワーを使う部分だと思います。
目の前の候補者はA社が合ってそうだけど、候補者はA社をあまり知らず関心持てないので選考受けない、みたいなパターンですね。

この場合、
人材紹介会社の人が候補者に対して、応募すると決めてないけど気軽に会えるからまず会ってみない?と言えることで解消することがほとんどかと。

「応募意欲がまだ湧いてなくてもまず人事とカジュアルに会えるので会ってみませんか?」「応募するかは決めなくてもいいので、今度A社でやる勉強会参加してみません?」
「A社の役員の人が会ってくれるみたいなので、一度情報交換だけでもしませんか?」

などのように、
人材紹介会社の人が候補者を誘いやすい「場」を人事が用意してあげることで格段に推薦しやすくなると思います。


【他の人材紹介会社経由で受けていた会社の方が転職の条件に合っていた】
→ こちらの場合も選考の中の工夫で解決できそうですね。
具体的には、初回に役員や責任者クラスが出てくることで会社の魅力を最大限伝える、とか。
もしくは選考途中に候補者の興味に合いそうな社員と会ってもらう、ご飯にいく、などでしょうか。

いずれにせよ、人事と人材紹介会社の人が密に連絡を取り合い、候補者の状況をシェアした上で、臨機応変に選考フローを対応できると解決することが多いと思います。


補足ですが、
求める人材像をめちゃくちゃ具体的に分解して伝える、書類や面接ごとによかった点・ずれている点などを素早く細かくフィードバックする、なども有効です。
人材紹介会社でもどんどんフィードバックをもらうことで紹介する人材の精度もあがりますし、候補者に対しても「あなたは◯◯の理由でA社が合います」と自信を持って伝えられるようになりますので。


以上のことから考えると、、、
採用を担当する人事や経営者が考えるべきは、以下2つになります。(改めて、ですが。)

・人材紹介会社の方が自社を推薦しやすいようにしてあげること
・選考フローの改善


この2つを中心に候補者に合わせて柔軟に対応することで、採用もスムーズにできるようになり、人材紹介会社もどんどん良い人を推薦しやすくなる、といった循環が生まれる。

人材採用の難易度があがっている今だからこそ、お互いのビジネスの構造を理解した上で、サポートし合いながら進めていけるとグッと採用がしやすくなるのではないか、と思っています。


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