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守れないなら作らないが上策

次の本を紹介する。

『あなたの職場のイヤな奴』
著:ロバート・I・サットン 訳:矢口 誠 講談社(2008)

書名がなかなかだが、推薦者の池上彰さんも
「書名に惑わされてはいけない。これはすぐれた経営組織論だ。」
と述べている。
全くその通りである。
職場としての学校、学級経営にも当てはまる話ばかりである。
タイトルだけで中身のない単なる悪口本の類ではない。

この本から引用する。

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(引用開始)
これらの心得が頻繁に破られているのに、それを改めようという動きが社内にまったくないとしたら?
かけ声ばかりで中身のない言葉は、たんに無益なだけでなく、反対に有害でさえある。
(引用終了)
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ここで述べられている「これらの心得」とは、社訓やキャチコピー、外部に向けたPRなどである。
この言葉は、全くその通りである。

学校には、様々な「目標」や「約束」、あるいはルールが作られている。
よく学校の研修会の講師が
「学校教育目標を言えますか?」
と職員に尋ねることがよくあるが、大抵の場合、まともに言えない。
「言えない」と知っているからこそ、尋ねているのである。

特に学校は、学校教育目標の具現化したものとして「目指す児童の姿」も別にあり、混同していることもしばしばである。
とにかく、目標もルールも、多すぎて覚えられない&実行できていないのである。

原則として、他から押し付けられた目標やルールは、実行に移されない。
例えば教師の口癖「約束したでしょ」は、子どもの記憶に全くない。
大抵の場合、納得も何もなく、一方的に言い放たれただけだからである。
(お互い、そうしておかないと終われないという内情もある。)

大人もそこは同じで、顔も見えない上位機関からとりあえず建前で降りてきた命令やスローガンなど、各々が覚えているはずがない。
直接言われた訳でもないのに、覚えている方が逆にどうかしている。

(一般的に記憶できる限界は、せいぜい「おかし(も)」から「いかのおすし」ぐらいである。
これらは、非常事態用だけあって、よくできている。
「あおかしも」は、蛇足感、欲張り感が強すぎていただけない。
「あわてない」って言われても・・・。)

話を戻すが、スローガンや目標、ルール等は掲げたからには実行されないと、有害になる。
人間関係で言うと「口ばっかり」という評価になる。

真面目な人ほど、ここが気になる。
学校教員で「ルールが守られないのが気持ち悪い」という人は、叱り損になりやすい。

こういった全体で掲げたことは、全体として守る必要がある。
いや、全員が守れないまでも、全体として守ろうという姿勢を見せることが必要である。

ではその責任は誰にあるかだが、それを掲げた責任者、リーダーである。
学校全体であるなら校長、学級の子どもなら学級担任である。
一度言ったからには、実行責任が伴う。

クラス毎に「いじめをなくそう」という類のスローガンを掲げる学校は多い。
それ自体はいいのだが、大切なのはその実行の度合いである。
崇高な理想を掲げるほど、実行は困難を伴う。
(校内研究のテーマなども同様である。)

もしスローガンがあるのに、実行されてないとなると、冒頭の引用文のような事態に陥る。
「どうせ口ばっか」である。
これは、個々のモチベーションと責任者に対する信用を著しく落とす。

もし学級でこのような「目標」や「スローガン」を掲げたなら、言行一致が成功の絶対条件になる。
それができないことならば、そもそも言わない方がよい。
目標も、作りすぎれば実行が伴わなくなる。
人間の記憶力や意志力について熟知しているなら、本来は絞りに絞った一つが望ましい。

教育機関は上から下まで目標やスローガンの嵐だが、それは逆効果をもたらしているのかもしれないと思い至った次第である。


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