宝塚「はいからさんが通る~風の誓い」のDTMによる再現
先日、宝塚花組が2020年に公演した「はいからさんが通る」の楽曲をDTMで再現しました。
1年ほど前に同作品の曲を再現しましたが、今回は作品を代表する曲「風の誓い(デュエット)」です。
楽曲はすでにYouTubeで公開していますが、今回の記事では、そのときの情報をまとめました(いつもながら筆が遅い……徹夜で原稿案件)。
演奏動画
今回の演奏動画はこちらです。全パート耳コピによる再現です。
JASRACの規定では、歌詞の利用や、YouTube動画の埋め込みも良さそうと分かったので、今回は遠慮なく使っています。
楽曲の作成環境はABILITY 3.0です。
音源は少し充実しました(音源沼に片足が入りつつある)。
・ボーカル:Roland Hyper Canvas
・オーケストラ:UVI Orchestral Suite
・ベース/ドラムなど:Sample Tank 4.0 MAX
・ピアノ:Synthogy Ivory Ⅱ Grand Pianos
あと、今回は急遽ミキシングにFabfilter Pro-C2を使ったのですが、この辺りは長くなるので、機会があれば。
ミュージカルの表現
今回、曲を作って驚いたのはミュージカルの表現のすごさでした。
この作品では当時の花組のトップスター2人が、主人公とその許嫁を演じています。そしてこの曲は、物語上、2人の心が初めて通じ合うシーンで歌われます。
ボーカル部分を耳コピする際は、音程以外にも強弱変化やビブラートのかかり具合を原曲から聴き取って入力するのですが、この過程で2人が同じ歌い方をしていることに気づきました。
上は分かりやすい部分の切り抜きです。
例えば、「く」と「の」はほぼ同じ長さの音符ですが、「く」はビブラートありで短く、「の」はビブラートなしで伸ばすといった歌い方が2人とも同じです。
物語を楽しんでいるときは気づきませんでしたが、歌い方で2人の心を表現していることに気づくと、ミュージカルの奥深さを感じずにはいられません。
今回の記事用に、歌パート中心の演奏動画を作ってみました。こういうことが簡単にできるのもDTMのいいところです。
UVIのオーケストラ音源
今回の音作りに大きく貢献したのは、ソフトウェア音源「UVI Orchestral Suite」でした。
この音源は、Amazonで2万円程度ながら、オーケストラの大半の楽器をそこそこリアルに、かつ高速に処理できます。他社製品は10万円以上するものもあるので、コストパフォーマンスはかなり高いといえます。
この音源は現代の製品らしく、発音中の音色変化にも対応しています。
例えば、演奏動画の1:19付近では、甲高いトランペットが「シ、シ♭~」と入りますが、Modulationで強弱を調整すると、吹き込んだ瞬間の音や、丸い音から割れるような激しい音への変化が再現されるのがかっこいいです。
上のようなグラフで狙った音色を再現するのですが、1音単位でこんなことをやり出すと、時間がいくらあっても足りませんね。
耳コピの限界
音がリッチになると、採譜の正確さとの戦いになります。
比較的成功したのは1:36の「♪離さないと~」付近です。
奇跡的に各パートを聴き分けて再現できたように思います。
しかし、歌の終盤は音がペラペラになってしまいました。
中低音の管楽器やギター(サックス?)などが抜けているため、原曲の分厚い音が再現できていないのが原因だと思いますが、音は聴き取れないし、編曲の知識もないし……。
音源がリッチになると、音楽の知識や経験の差が如実に出てしまいます。
そもそも、プロの奏者が1音1音心を込めて演奏した音をデータで再現するのはおこがましいところですが、PC上の1人オーケストラで楽曲を再現する楽しさは今まで以上でした。
最後に
今回で宝塚の楽曲を耳コピで再現するのは2回目ですが、ポップスの良さもオーケストラの良さも併せ持つ曲調は本当に良いものです。
「はいからさんが通る」は2年前の作品となってしまいました。
まだまだ再現したい曲もありますが、さすがに作品の鮮度の観点でみると、次回の耳コピは新しい作品でチャレンジしたいところです。
まずはライブ配信の観劇からですね……。情報を集めなければ。