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「D2C」は終わりにして、「B-X-C」という概念で考えよう
「D2C (Direct to Consumer)」と呼ばれるビジネスモデルが生まれて10年以上。数多のバズワードが生まれては消える中、D2Cという言葉は「D2C的」なものも含め、そのカテゴリーで語られるブランドを多く生み出すほどに市民権を得た言葉だと思います。
その解釈も文脈によって(良くも悪くも)様々に変化しながら活用されていて、もはや厳密に“D2Cとは”みたいなことを論じることも意味が無いと思いますし、私自身も、この便利なD2Cという言葉を度々使います。
なので、「D2C」という言葉に疑問を呈するつもりもないのですが・・・今回のnoteではもう少し拡張した「B-X-C」という概念について書いておきます。
この「B-X-C」とは、私が「D2C」という言葉を使う時にイメージしている概念なので、決して目新しいものではありません。ですが、世の中の「D2C」という言葉にモヤモヤしている方には、少なからずすっきりとした気持ちになってもらえるのではないかと思います。
B-X-Cとは:Brand-Experience-Customer
「B-X-C」は、私が作った造語です。「Brand」「Experience」「Customer」の3つの単語を並べたものですが、「Brand experience customer」と書いても英語的に正しくないため、「BXC」とは書きません。
また、この造語は、3つの単語の並び方と関係性に意味があるので、あえて「B-X-C」と、ハイフン(-)で単語を連結して表現しています。
先に結論を書いておくと、この「B-X-C」の意味することは、
BrandはExperienceによってCustomerとつながり、CustomerはExperienceによってBrandの存在/価値を認識する
ということです。
BrandとCustomerの間で、Experienceが無くてはならない存在であるため、この3つの単語は「B-X-C」という並び方と繋がり方をしています。
BとCの間に入るのがCXであるべき理由①:CXはBrandとCustomerの媒介となる
私のブランドについての解釈は、初回のnoteで書いた通りです。
お客さまがあらゆる接点において五感を通して体感し、その時々のお客さまの勘定によって変化する、商品・サービスの選択に深く・長く作用する正負の価値
もっと端的に表現すると、
お客さまが、体験を通じて得た、瞬間的かつ継続的な価値認識
となります。を提示しました。
(参照:以前のnoteはこちら↓)
つまり、主語である「お客さま」に「ブランド」の価値を認識していただくには、「体験(CX:Customer Experience)」が不可欠であり、CXを考えることはブランドを形作るための活動そのものであると書きました。
CXはBrandとCustomerの間の媒介になり得るのです。
これが、BとCの間にCXが入る理由の1つ目です。
BとCの間に入るのがCXであるべき理由②:CXは2つの作用でLTVに寄与する
もう一つの理由は、CXはLTVに寄与するということです。
前回のnoteで、CXがLTVにどのように寄与するかということを説明するために、
CXによる効果実感×理解促進の向上=NRSの加速度的強化
というフレームを提示しました。
(参照:前回のnoteはこちら↓)
「効果実感」と「理解度」が高まるとどうなるか?皆さんも消費者として体験していると思いますが、NRS(継続利用意向)が強化されます。
そこで、製品やサービスを通じて得られた「効果実感」をY軸、製品やサービスの「理解度」をX軸として、お客さまの購買行動プロセス(AIPL)を重ねて図示すると、下図のようになります。
![](https://assets.st-note.com/img/1677340173830-ScD3hdJuGm.png?width=1200)
ここで、お客さまの購買行動が、理解度と効果実感を伴いながらAからI、P、Lに移行し、NRSをプラスにするために必要な作用がCX:Customer Experienceなのです。
ここでCXには、2つの作用があります。
作用1)AIPLの各フェーズにおけるCXの総和が次フェーズへの態度変容を促す
A(Awareness)のフェーズでは、TVCMやディスプレイ広告、インフルエンサー投稿などによって、対象の製品・サービスを繰り返し目にするという体験が積み重なっていきます。
この体験の総和が一定の水準に達すると、お客さまはI(Interest)のフェーズに態度変容します。
同じように、I のフェーズにおける体験の総和が一定の水準に達すると、P(Purchase)のフェーズに態度変容します。
作用2)一貫したCXが蓄積されると、購入・利用後のNRSを加速度的に強化する
A・I・Pの各フェーズから一貫した質の高いCXを提供し続けられると、お客さまは製品・サービスやそれらを提供する事業者を信頼し、発信される情報を好意的に受け入れたり、積極的に情報を取得したりしながら、場合によっては関連する製品・サービスの利用を拡大していくなど、製品・サービスとの能動的な接触機会が増えます。
CXの蓄積が、理解度と効果実感に慣性を与えると言い換えても良い。
それによって、NRS(継続利用意向)が加速度的に強化され、L(Loyalty)のフェーズへと移行していきます。
このCXの2つの作用によって、NRSが強化され、結果としてLTVが向上するということです。
これが、BとCの間にCXが入る理由の2つ目です。
さらに、OMOのようなチャネルに関する論考も包含する
D2Cは、従来のマスマーケティングによる卸売販売モデルに対して二項対立的に使われている側面があることも、注目されている理由であると思います。
また、D2Cとともに使われることも多いOMO(Online Merges with Offline)という言葉もまた、オフラインチャネルとオンラインチャネルを分けて捉えていた従来の考え方に対するカウンターとして提示された概念です。
これらの言葉は、従来の考え方に対してある種の対立軸として提示されているが故に、良い意味ではわかりやすさと目新しさを生む一方で、従来の考え方に否定的なニュアンスも含んでいることに、モヤモヤを感じてしまう部分もあります。
しかし、今回提示している「B-X-C」という概念は、マスマーケティングも、卸売販売も、オンラインも、オフラインも、何も否定はしません。
どんなビジネスモデル・販売手法・販売チャネルであっても、Experienceを適切に設計・提供すれば、BrandはExperienceによってCustomerとつながり、CustomerはExperienceによってBrandの存在/価値を認識することができるという考え方です。
至極当たり前のことを長々と書きましたが、これが私がCXをベースにLTVモデルの進化に従事する上で大切にしている「B-X-C」という概念です。
この「B-X-C」の概念を取り入れることで、チャネル論や戦術・手段に囚われることなく、常に中心となるCXに立ち返ることができますし、どのようなビジネスモデルの事業においても受け入れやすい考え方なのではないでしょうか。
おわり。