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逃避の散歩 1.東急世田谷線(上り方面:下高井戸から三軒茶屋へ)

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下高井戸に「下高井戸シネマ」という映画館がある。

かつて、そこは「京王下高井戸東映」、または「下高井戸京王」という館名の、経営母体も違う平屋建ての映画館だった。幼いころ、確か「京王下高井戸東映」のころだったと思うが、『ドラえもん のび太の恐竜』が上映されていて、親に連れて行かれた劇場がここだった。同時上映が『モスラ対ゴジラ』のリバイバルで、自分はドラえもんよりゴジラに歓喜したものだ。

自分はいま、そんな思い出の映画館が近くにある下高井戸駅にいる。

これから、東急世田谷線三軒茶屋駅の改札口まで、なるべく東急世田谷線の線路に進行方向から見て右側から沿うようにただ歩く。

出発。道は右へ緩やかに曲がっている。しばらく進むと突き当り、道は右に折れている。進行方向から見て手前には左折できる丁字路、奥にはに商店街に出る十字路がある。

丁字路まで進み、角の先を見るとやや狭い路地になっていて、その先は突き当りになっているが、遠目から丁字路になっているのがわかる。

丁字路を左折し、左側の住宅の間から線路が見えるのを確認しつつ、丁字路に突き当たる。道は左右に分かれ、左側に踏切が見える。だが、ここは右に折れて十字路に向かって左折。少し先の左側に写真館が見える。その前の角を入れば線路沿いに戻る。

ここからわずかな間は道幅が広くなる。そのまま直進すると、右側に世田谷区立赤松公園が見える。朝だというのに、意外と親子連れや年寄りがいる。

それを横目に歩を進めるうちに、最初の停車駅である松原駅が見えてきた。

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下高井戸駅からここまでの時間はおよそ8分ほど。

余談だが、この駅からすぐそばのところに、スーパーマーケットのオオゼキの本店がある。上りホームを踏切側に降りたところ向かいにコンビニエンスストアがあるが、そこはかつて本屋だった。そして下りホーム側、つまりいま通ってきた道の並びには電化製品店があったのを覚えている。

踏切を通っている道路が2車線。右側に横断歩道がある。渡って、対向の歩道を通って線路沿いの道に行き、山下駅へと向かおうじゃないか。

ブロック舗装をされた対向の線路沿いの道に入り、踏切に差し掛かる。

1990年代、この踏切周辺に1日中パトカーが停まっていたことがあった。というのも、オウム真理教の東京本部がこの近くにあったからだ。もちろん、現在はその場所は建物自体が取り壊されて、別の建物となっている。この踏切近辺を歩くたびに、あの当時のことを鮮明に思い出す。

さて、さっきの松原駅前の踏切もそうだが、この踏切も2車線だ。その向こうに見える踏切も2車線で、その先に軽い上り坂が見える。

どうやってあの上り坂に行こうか。右側を見れば交差点がある。交差点に向かい、横断歩道を2段階左折で渡り、線路に向かって行くしかない。

坂を上るといきなり道が右に曲がる。もしかして外れか? と思うかもしれないが、そのまま道なりに進むとすぐ丁字路に突き当る。左右を見ると、左に線路が見えるのでそっちへ進む。

そのまま、道は線路に沿って緩い下り坂となり、坂を下りきったところで山下駅に到着。

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松原駅から掛かった時間はおよそ12分。歩いた距離はそれほどでもないのだが、信号待ちで思ったより時間がかかってしまった。次行こう。

この駅で、はじめて踏切を渡る。そして小田急線豪徳寺駅改札前を右に折れて商店街へ。

この辺りでよく覚えているのは、豪徳寺駅が現在の姿になる前の改札口だ。現在は線路沿いに通れる梅ヶ丘方面の道に階段があって、それを上った右側にあった。左側は売店で、奥は飲食店などが並んでいた狭い路地となっていて、その一番奥にゲームセンターがあった。新宿方面のホームも、確か現在道路になっているところまで寄っていたはず。

この商店街、道幅が狭いうえに序盤は上り坂、それでいて都道(427号線瀬田貫井線)の一部になっているせいか、車が対向でかなり走ってくるし、朝から歩行者も多くて窮屈感がある。

思えば、この商店街は通り道として使うことはあっても、コンビニ以外の買い物や、飲食店で食事をした記憶がまるでない。小田急線で両隣の梅ヶ丘と経堂は買い物や食事に行くことがあるが、なぜかはわからない。

一目散に商店街を抜けさらに直進。突き当たったところ右側にある踏切を渡ってすぐ左折。そして直進。この辺りは商店街よりも道幅が広くなったが、車の通行量は相変わらず多い。

また緩やかな下り坂となり、右側が世田谷八幡宮。そういえば、ここでお参りしたことはない。

下りきったところにある宮坂駅前交差点で立ち止まると、左前方に宮の坂駅が見える。

あまりに有名だが、井伊家と招き猫で知られる豪徳寺の最寄り駅はここだ。踏切を越えて徒歩で3分と掛からないところにある。とはいえ、この辺りは普段は経堂やほかの地域へ行くための、ただの通り道という認識なので、これといった思い入れがまるでない。豪徳寺がかつて世田谷城の本丸があった場所とされていることも、つい最近まで知らなかったくらいだ。

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山下駅からここまで掛かった時間はおよそ8分。

次は上町駅だ。

とりあえず、住宅を挟んだ線路沿いの道をひたすら歩く。

山下駅から宮の坂駅までの窮屈さとは打って変わり、人も車も通行量が少なく静かだ。こういう人通りの少ない道はなんだか心が落ち着く。

住宅の間から時折見える線路と踏切を意識しながら歩いているうちに、左側に世田谷線の車両基地が見え、さらに進んで左折すると今回のルートで一番広い道路の世田谷通りに入る。

最初の信号がある横断歩道が赤信号なので立ち止まると、上町駅は目の前にある。

宮の坂駅から掛かった時間は6分。

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世田谷通りといえば、自分は世田谷区の北側に住んでいるのだが、この通りを境として南側に住んでいる人は北側に対して妙に冷たい気がする。自分が住んでいる地域について、玉川の人には「そこ、世田谷区か?」と言ったり、桜新町の人には「不便なところだな」と馬鹿にしたり、用賀の人には蔑んだ目で見られるといった具合だ。何の恨みがあるのだろうか。

さあ、青信号になった。そのまま歩道を直進だ。

広い通りに出たので、歩いている人は増えてきたが、それほど窮屈さは感じない。最初の信号で赤信号になったので止まる。左を見ると踏切が見え、その右手前に先へ進める道がある。

信号を渡って左折しすぐ右折。その道を真っ直ぐに歩くと区役所西通りに出る。そして左前方に見えるのが世田谷駅だ。

信号待ちを含めて上町駅からおよそ3分半。実にあっけない。たまにあっけなく次の駅に着いてしまうところも、都内でなるべく線路沿いに歩く面白さだと自分は考えている。

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横断歩道を渡って右折し、世田谷通りに戻って直進。

世田谷区役所入口交差点に差し掛かり左を見ると、踏切が見える。横断歩道を渡り、踏切の手前で右折し線路沿いの道に入る。

その向こうに見えるのが、松陰神社前駅だ。

横断歩道の信号待ちを含め、世田谷駅から6分ほどで到着。

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恥ずかしながら、松陰神社が吉田松陰を祀っていることを知ったのも、結構最近の話だ。場所を考えると、わずか1キロ西に豪徳寺(中には井伊直弼の墓)があるので、面白い組み合わせだなと勝手に思う。

この駅から南へ10分ほど行ったところに、蛇崩川緑道という東急線中目黒駅近くまで続く暗渠の起点がある。この道も、ちょっとした逃避にうってつけな道だ。

残るはあと3駅。そのまま線路沿いに歩く。

道はやや右へ曲がっていく。最初の十字路で左を確認すると、踏切前に道がある。その道を進むと、すぐに右に逸れていき丁字路に突き当たった。線路のある方向からどう考えても左折だ。今回のルートは「道が右に逸れて、突き当りが丁字路になるが、そこを左折すれば線路沿いに戻る」というパターンが多い気がするのだが、気のせいか。

左折して道なりに歩くとまた線路が見え、道は再び線路沿いになる。

突き当たりにある左側の踏切を渡ると、先は下り坂になっていて、また線路から離れていくように思える。降りきったところの十字路を右折して直進すれば若林駅が見える。

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到着。松陰神社前駅からここまでの所要時間はおよそ6分。

なるべく線路沿いという縛りを守るため、ここではじめて電車の通過待ちをした。

残り2駅。

そのまま踏切を抜けて真っ直ぐ。踏切を横目に五差路左前方の道を抜けると環状七号線に出る。信号待ちとなり、横断歩道から先の様子を見れば、線路の左側にはコンビニがあり、線路との間に道が見える。

だが、線路沿いに歩けるのは線路右側にある、一見、線路から離れているように見える狭い道だ。

信号が変わり、右前方の狭い道に入る。最初は住宅に挟まれているものの、先をそのまままっすぐ歩くと線路沿いの道になる。もし環七を渡ったところでコンビニ側の道に入っていたなら、間に住宅が並んでいて、少し線路から離れていた。

この道に入って2つ目の踏切が見える突き当りに差し掛かった。右の道から行くか、左の踏切を越えて行くか。いつもは左側を通ることが多いが、今回は右折する。

踏切前を右折したらすぐ次の角を左折。曲がりくねった道に沿って進むと、すぐに踏切が見えるので、そのまま渡って直進。

最初の十字路に差し掛かったときに、右側に線路が見えているか確認すると踏切が見える。その踏切まで進むと左側に見えるのが西太子堂駅だ。住宅が密集している場所にあるので、あやうく見過ごしてしまいそうになる。

この辺りは、この散歩を目的とした歩き方でもしなければまず来ない。

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到着。若林駅からの所要時間はおよそ7分。次は終点、三軒茶屋駅だ。

そのまま、踏切を渡らずに左の側道を歩く。

本当は、駅前の踏切を越えた方が線路沿いに歩けるのだが、経験的には歩く距離がさほど変わらないのと、踏切の通過待ちで時間食いたくなかったので、この選択をした。

道沿いに歩き、突き当りを右、左、右と進み、さらに100メートルほど進むと三軒茶屋駅の停車ホームが目に入る。

停車ホームの踏切前を左折して回り込み、ゴールの改札口まで移動する。

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終点の三軒茶屋駅の改札口に到着。ここまでの所要時間は4分ほど。

三軒茶屋といえば、後悔していることがある。それはかつてここにあった「三軒茶屋中央劇場」、「三軒茶屋シネマ」といった映画館に一度として足を運ばなかったことだ。元々、住んでいる地域の特性もあって、三軒茶屋に行く機会が滅多になかったことや、映画を観に行くのに交通の便で新宿や渋谷の方が良かったこともある。結局、機会に恵まれなかった。

信号や踏切の通過待ちの時間で前後するだろうが、世田谷線の線路沿いは大体1時間ほどで踏破できる。全長およそ5.6キロメートル。道のりのほとんどが非常に地味な住宅街だが、それがいい。人通りの少ないところが多く、無心になって歩けるからだ。

まだ時間があるから、このまま国道246号線を使って渋谷まで歩くか。