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希少性を高めてこそスペシャルティコーヒーであり、だからこそ価値がある

有難いことに出張の嵐である。年始からシンガポール、ドバイ、アメリカ、オーストラリアと出張が続き、今はインド、香港、韓国、フィリピンと約二週間の旅に出る。

ここ最近は踏んだり蹴ったりだった。ESTAがリジェクトされたり、フライトが遅延しまくったり、クレジットカードを忘れたり、バッゲージロストしたり、しかもインド行きのフライトも3時間弱遅れて更なるカオスを極めている。極め付けは香港で食中毒と凄まじい旅だ。

仕事でも世界各国で事故が起こり、その修正に追われた1ヶ月だった。まさに踏んだり蹴ったりだけど、今までとの違いは感情を荒げることなく向き合えるようになったことかな。

さて、世界各国のキーパーソンと話をすると、コロナ禍で飛躍できた数少ない飲食業態がコーヒーだと分かる。特に東南アジアやアジア諸国は長く続いたロックダウンで店舗はダメージを受けたものの、豆や器具のオンラインセールスが伸長した。

その上ロックダウン解除でカフェ売上も回復し、さらにオンラインセールスで家庭用の豆販売の売上も維持できているので、結果としてコロナ禍を通して大きく飛躍した会社が多く見受けられる。

スペシャルティコーヒーショップは多店舗展開を推し進め、スペシャルティコーヒーが身近になった、という声もよく聞く。日本は総輸入量の約10%がスペシャルティと言われているが、実質コンビニや大手F&Bがロースペシャルティーを積極的にブレンドに使用しているので、シェアが大きく見える。しかし、間違いなくスペシャルティは以前よりアクセシビリティが上がり、物理的に飲みやすくなっている。

当たり前だがスペシャルティコーヒーもピンキリな訳で、いわゆるトップロットからスペシャルティギリギリのロットまで幅広い。正直、個人的にはハイコマーシャルとロースペシャルティのブレンドであれば違和感なく毎日飲めてしまうレベル。

さて、そのハイコマーシャルとロースペシャルティのブレンドとトップロットの差を消費者が理解できるか?ーおそらくYESだろう。嗜好の差異は置いておいて違いは分かるはず。

それではそのコーヒーとトップロットの価格差、例えば500円を消費者が許容してまでトップロットを選ぶのか?ーこれは多くの場合NO。もしそうだったら、多くのお店の販売構成比が変わっているはずだから。

トップオブトップのロットには、その原価起点で決められた価値を消費者が見出しにくことを示している。ただしこれには前提があって、既存のビジネスモデルの枠内であれば、の話し。つまり、100円のコーヒーと500円のコーヒーを同じサービス形態、店舗デザイン、人材レベルなどで出すと受け入れられにくい、ということ。

したがって、僕はいわゆるトップロットと呼ばれる非常に希少価値の高いコーヒーを売るためには異なるアプローチが必要だと思う。より高付加価値でエクスペリエンスドリブンな、まさにファインダイニングのようなアプローチ。

そもそもスペシャルティは希少価値が高いからスペシャルなのだから、そのスペシャルティコーヒー(ここでいうスペシャルティコーヒーとはトップロットを指し、一杯1000円を超えるレベルのエクスクルーシブな原料)を大衆に幅広く届ける必要性を個人的には微塵も感じていない。むしろ流通をさらに制限して希少価値を高めた方が良い。

逆に言うと、他店舗展開を進めているスペシャルティコーヒーチェーンは80点くらいのロースペシャルティの調達とハイコマーシャルの調達に力を入れるべきだ。ただ良い原料を使うことに注力するのではなく、焙煎、抽出、教育を通して品質レベルを向上させ、価格に競争性を持たせた上で大手からシェア刈り取る戦略が適切だと思っている。

これは特にアジアなど価格競争の激しいマーケットに有効だと思っていて、品質で圧倒的優位性を作りつつ、価格競争力を高めて戦う。焙煎、抽出、ブレンディング、その後のQCでスペシャルティブランドは違いを出せる。

トップロットに関しては、既存の販売方法は少なくとも自分にとっては最適解ではない。世界最高峰のコーヒーには然るべき調理方法があり、提供方法があるはずである。価格を下げるのは簡単だが、上げるのは難しい。だからこそ、我々の世代でその難題にチャレンジして、次の世代にさらなる発展を託すべきであると思っている。

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