俺の行き付け 2軒目「下北沢 喜楽」
下北沢周辺に住んで、5年近くになろうとしている。
このお店は、下北沢という飲み屋の激戦区で初めて行き付けになったと言っていいお店だ。
初めて行ったのは、下北沢周辺に越してきて1ヶ月ほど経った時。
地元で先日書いた「浮間舟渡 松月」を行き付けとしていた俺は、
この街でも”行き付け”の店を見つけようと思っていた。
が、如何せんこの街は飲み屋が多い。
手始めに何処から攻めるか、迷いあぐねていた。
ある晩、ふと思い立ち、行き付けを見つけるために近場の飲み屋を「ハシゴ」して、良いお店を見つけようと俺は部屋を出た。
飲み屋の「ローラー作戦」である。
そうして、家からも近い下北沢壱番街をそぞろ歩きすることにした。
まずは、俺の身体に馴染んだ「焼きトン」から攻めてみようと、とある店に一人で入り、ビールともつ焼きで飲み始めた。
大体、その街のことを深く知ろうと思ったら、チェーン店ではなく個人店で酒を飲んでみることだ。
そこに居る客、店の雰囲気、店主と客との会話、そうしたところから街に馴染むためのヒントを探るのだ。
俺は、その焼きトンの店で一人しばらく飲んで、少し上機嫌になり、新しい店に飛び込む度胸を溜め込んだ。
そして、再び街を歩き始めた。
するとどうだろう、通りの飲み屋全てが、俺を受け入れてくれそうな顔をし始める。
やがて狙いが定まって、俺はその中の一軒に飛び込んだ。
それが掲題の「喜楽」だった。
前置きが長くなったが、この店との出会いはそのような経緯があったのです。
つまり
初めての店に飛び込んで、その店があまりに良かったので、行き付けになってしまった、というまるで「一目惚れ」のような出会い方をした店、それが「喜楽」だったのです。
さぁお待たせしました。お店をご紹介します。
店に入ると、厨房の前に木作りのカウンター、照明は暖色で柔らかい雰囲気。
カウンターの後ろに小さいテーブル、奥には囲炉裏を囲めるコの字型の席、という造りになっている。
店主の方は、割烹着に身を包んでいて、さっぱりとした印象。
如何にも美味いものを出してくれそうな、そんな雰囲気の方です。
この店でまず俺が衝撃を受けたのが、お通しの素晴らしさ。
夏場ならば羽子板状の木の器に酒に合う数種の肴を持って出してくれ、
冬場には、お椀に気の利いた暖かな肴が盛られて出てくる。
このお通し、一品一品にちゃんと仕事がされていて、それだけで始まりのビールが一杯飲めてしまうほど。
酒をもう一杯頼んで、種類豊富な小鉢を幾つか注文して、メインまで繋ぐのもいいものだ。
しかしながら、この店の真骨頂はズバリ「馬肉」である。
馬刺しは勿論、馬焼き串、鍋物等々、種類も豊富。
その中で俺が推したいのは「なめろう」である。
「なめろう」は漁師料理であって、本来は鯵やイワシといった青魚から作られるものだが、ここでは「馬肉」を使った「なめろう」を供してくれるのです。
これが実に酒に合う。ねっとりとした馬肉の旨みと薬味の相性が不思議なほどに「なめろう」としか言いようのない味。
せっかくなので、日本酒を、と思うと、この店は常時6種ほどの日本各地の地酒を用意してくれていて、好みを伝えるとそれに合った酒を選んでくれたりもする。
これからの季節に行くのであれば、厨房でもうもうと暖かな湯気を上げている「おでん」をいただくのもオツなものだ。
おでんには変わり種もあるので、是非店に赴いて確かめていただきたい。
この店を推す理由を一言で言うのであれば、
「実に気が利いている」ということになるだろう。
お通し、馬肉料理、種類豊富な小鉢、各地の地酒、
そしてホスピタリティも必要十分。
俺は初めてここで酒を飲んで、
「こういうお店を行き付けにしたかったんだ!」
と感動して、「何かいいことがあったら、まずは必ずここへ行く」と決意してしまったほどである。
それもだいぶ昔の話になったが。
閑話休題
俺は友達が下北沢に来るとここに必ず連れていきます。
その全員が実に喜んで飲んで帰っていきました。
でも、紹介しておいてなんだけれど、あんまり混雑されても困るんだよな。
俺が行きたい時に行けなくなるから。
俺が初めて訪れた際は、まだ開店してすぐの時期で、
「こんな良い店なのに客があんまり居ないな・・・穴場だ!」
と思ったものでしたが、最近はかなり人気店になっているようです。
週末は予約必須です。
ということで、2軒目の行き付けをご紹介しました。
それでは。