Gerry Mulligan 『Night Lights』
秋の夜長にこの一枚
まずジャケットが良かった。
街の夜景の絵。都会的でムーディーだ。
少しジャズに興味を持った20代後半、Amazonの予測候補に、たまたまこの作品のジャケットが現れた。
アルバムジャケットの引きの強さ、そして『Night Lights』というタイトル。
全てがグッときた。是非手に入れたいと思った。
そして、近所の中古CD屋に行って、慣れないジャズのコーナーをウロウロと探し回った。
最初「J」のコーナーを探していた。「ジェリー・マリガン」の頭文字が「J」だと思い込んでいたのであった。
どれだけコーナーを探しても見当たらず、携帯で調べたら、ようやく頭文字が「G」だとわかった。お粗末な話である。
閑話休題。
改めて手に取ると、誠に素敵なジャケットである。
アクリル絵の具でラフに描いたような夜のビル街。
近代的なのだが、どこかレトロな風景にも見えて、その匙加減がお洒落。
そして、いざ聴いてみると、
鳴っていて欲しいと思う音楽が期待した通りに展開されていくのが凄い。
なので、それを思えば、とても親切なジャケットでもある。
ジャズには詳しくない、という前提で音楽的な話を。
派手さが抑えられた、静謐で上品なサウンドである。
そして、ジャズ、という言葉の持つ、いい意味での「お洒落感」がわかりやすく受けとれる音楽だと思う。
ジャズというのは、入門編として有名なBlueNoteのベスト等を聞いてみるとわかるが、意外とやかましい、各パートの主張の強い音楽である。
お洒落な音楽、という言葉だけではとても片付けられない、熱量を持った音楽ジャンルだと思う。
そんな中で、この作品はジャズという音楽ジャンルにあるパブリックなイメージの「お洒落」さ、大人びた人達が聴いているカッコいい音楽、という表現にかなりバチっとハマる作品のように思う。
夜、という人々が眠りに向かう時間に寄りそう音楽、がちゃんと鳴らされているのだ。
それでいて、穏やかなヒーリングミュージックとは一線を画す、良い酒場で飲むジンライムのようなキリっとした音像である。
ジェリーマリガンがプレイする抑えの効いたサックスと、それを支える各プレイヤー達の職人的な仕事っぷりが、聴いていて実に気持ちがいい。
「Night Lights(夜の街灯り)」という一つのテーマに向かって、ややアップテンポの曲からスローなテンポの曲まで一貫している。
テーマや主題に沿って、そこを外さぬように、それでいて、ミュージシャンシップもしっかりと主張する、といういい塩梅の音楽である。
まさに大人の男達の、惚れ惚れするような見事な仕事ではないかと聴く度に関心してしまう作品である。まさに
「外さない大人の仕事」
と呼びたくなる、そんな作品である。
眠りにつく前の30~40分という時間。
(このアルバムのトータルタイムでもある、絶妙!)
現代ではあまりに貴重なこの時間を、この作品とお気に入りの酒か何かで、豊かな時間にしてほしい、とだれかに薦めたくなる、そんな作品です。
それでは。