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教室のアリ 第5話 「4月15日」 〈デシリットルと不信感〉

 オレはアリだ。長年、教室の隅にいる。クラスは5年2組。新学年も2週目になってみんな新しいクラス、仲間、先生に慣れてきているようだ。オレは先週のきな粉揚げパン大食いのおかげですこぶる機嫌がいい。子どもたちがこぼしたほんの少しのソーセージの破片をいただくだけで十分な生活をしている(5年生でも少しはこぼす)。さて、オレがなぜ5年2組にいると思う?1年でもなければ6年でもない。それは「ちょうどいい」からだ。低学年の騒がしさもなく、6年生のピリピリ感もなく(人間の世界には〈受験〉と言うのがあるらしい)、国語も算数も社会も理科もオレのレベルに合っている。もちろん、1年生から6年生まで一通り見学して、考えて、5年に決めたよ。そうやって〈授業参観〉をしていて一番混乱したのは2年生の算数だった。

2年くらい前かな、オレは給食室から近い2年3組で〈授業参観〉をしていた。先生は言う「このあと、みなさんが給食で飲む牛乳は200ミリリットルです。何人飲んだら1リットルでしょう?」。子どもたちは大声で答えた「5にーーん」。先生「正解」「ではみなさんは給食で何デシリットル飲むでしょう?」。生徒「20!」「2!」「…」「わかりませーん」。正直、オレもわからない。デシリットルってナンダ?面白いことに、デシリットルという言葉が出てきてから日にちが経つと、子どもたちの集中力が薄れた感じがした。大袈裟にいうと先生への視線に変化があった。ここからは推測。①デシリットルについての宿題がでる。②家でデシリットルについての話になる。③親が、「デシリットルなんて、一生使わない」と言ってしまう。④子どもたちが大人になって使わないことを学校は教えるのか?と不信感が湧く。と、言ったところだろうか?オレにとってはミリリットルもデシリットルもリットルも〈多い〉のひとくくりだ。きな粉揚げパンの大きさの価値が人間とアリで違うように…ま、デシリットルは先生も子どもたちも親も不幸にしたってことだな。※日本デシリットル協会(もしあればだが)の方すみません。

 そんなこともあり、オレは5年2組にお世話になることにしたんだ。おっと、今日は全編ズレてしまった。まぁ、オレはいろいろ全部話すって最初に言ったからこんな回があってもいいか(笑)。さて、これもオレの個人的な感想だから間違っていたら申し訳ないが、最近暑いよな?人間に壊された「巣」も昔よりは深く掘らないといけなくなるくらいだった。あと、子どもたちが頭に紐を巻いて、やたら走ったり、騒いだり、親も騒いだりする日が早くなった気がするんだ。その日は年に1回しかない。オレにとってもビッグイベントだ!

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