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11:空想の種まき

3歳ごろ。
いまはまったく観ないのだが、かつてのテレビ番組というのは「知ること」の入口だった。
漫画や、そのほかのエンタメ作品も、3歳の眼には娯楽というよりも、知らないことと出会うための、キッカケのひとつだっただろう。

さて、当時はどんな作品があったのだろう。
以前の記事でもやったが、年代ごとにこうして振り返ってみることにする。

放送期間や漫画の連載期間などは、調べれば出てくる。
そういったデータというのは、いわば動かぬ証拠だ。
記憶とデータを照らし合わせることで、日常の出来事や、前後関係の曖昧な記憶の時系列がハッキリすることもあるのだ。
たとえば「あの出来事があったころは、あの番組を観ていたな」といった具合である。
幼き日に日記はつけていなくとも、そのデータが示す日付が、ちょっとした日記の代わりになる、というわけだ。

***

テレビ:超新星フラッシュマン(1986年3月1日~1987年2月21日)

◯◯レンジャー的な、特撮戦隊モノの作品。
ビデオに録画されたものをいくつか観た。
おそらくリアルタイムでは観ていないのだが、この時期に放送が終わっている。
誰がビデオの録画をしていたのかわからないが、きっと姉は、観ていたんじゃなかろうか。


テレビ:時空戦士スピルバン(1986年4月7日~1987年3月9日)

この特撮モノもこの時期に放送終了。
私は録画されたものを観た記憶しかない。
先述のフラッシュマンと同じVHSに録画されていた。
姉はこの作品に特に思い入れがあったようで、大人になってからDVD-BOX的なのを買っていたようだ。
私もビデオに録画されていたものを繰り返し見ていたので、ざっくり「特撮モノ」といえば、仮面ライダーよりも録画されていた話数の多かった、こちらのほうが思い入れがある。

主題歌は水木一郎さん。主人公の父親役として出演もされていた。
姉が小学校のころ、家族で見に行った運動会のBGMで、この主題歌がかかっていたのを覚えている。
その運動会の日は風が強く、グラウンドの小石を巻きあげるような突風のなかに流れる主題歌は、なんだかちょっと恰好よく感じられた。

敵側の配役も、女王パンドラ役の曽我町子さんや、ギローチン皇帝役のミッキー・カーチスさんなど、濃いキャラも多かった。
特に印象深いのはデスゼロウ将軍。声を担当されていた飯塚昭三さんは、今年(2023年2月15日)に亡くなられたが、私の好きなゲーム『METAL GEAR SOLID』などでしばしば声を聞く機会があり、好きな声優さんの1人だった。

飯塚昭三 / ピーター・スティルマン (METAL GEAR SOLID 2)

また、作中に登場する、二足歩行ロボットに変形する飛行船「グランナスカ」や、主人公スピルバンが乗るバイク「ホバリアン」、前にドリルを備えた戦車で、搭乗席が小型の戦闘機として着脱できる構造の「ガイオス」、スピルバンやダイアナのフィギュアなども持っていた。
もともとは姉の持ち物だったのではないかと思うが、幼い日の私は、それらでよく遊んでいた。
以前の記事で書いた、親戚か知人に渡るか、あるいは処分か、というタイミングで救出できずに、ほかの玩具と一緒に手もとを去った。
いま検索すると「メルカリ」などで写真が出てくるので、懐かしさとともに、手もとにないのがちょっとだけ淋しくも感じる。


テレビ:超人機メタルダー(1987年3月16日~1988年1月17日)

先述の、時空戦士スピルバンの放送後にはじまった特撮モノ。
スピルバンの最終回が録画されたVHSに「次週からの新番組」として予告も録画されていた。
子供心に、外見がちょっと気持ち悪いと感じたのか、本放送の録画はされておらず、リアルタイムでも観ていない。
外見のなにがどう気持ち悪いか、というのは画像検索してもらえばなんとなくわかるのではないかと思う。
身体の左半分が青で、右半分が赤という奇抜なカラーリング。青いほうは機械の基盤が剥き出しなの?というデザインで、見方によっては「サイボーグの人体模型」のような印象。これは3歳の子供にはキツいのでは。


テレビ:エスパー魔美(1987年4月7日~1989年10月26日)

エスパー魔美 / 佐倉魔美×コンポコ

アニメの放送がこんなに前だとは思ってなかった。
再放送の記憶が強いためだろうか。
思考を読むときの「テューン」みたいな効果音や、テレポートするときに使うブローチの「ビョン」みたいな効果音をよく覚えている。
数話だけ録画したものがあって、何度も観た。
美術館の名画を無断で複製してすり替えている画家の話や、人力飛行機に青春を捧げる青年の話、万引きを繰り返す学生が本屋の主人から罰として本を読むように言われて読書好きになる話、などなど、台詞まで一部覚えていたりする。


テレビ:さわやか3組(1987年4月8日~2009年3月11日)

道徳の授業かなにかで、学校で見せられるような教育テレビの子供向け番組。
「サンサンサン太陽の光~」のフレーズではじまる主題歌を覚えている人も多いのではないだろうか。先日、妻と話していてなにげなく歌ってみたら、ほぼフルコーラス歌えた自分にびっくりした。校歌もろくに覚えていないのに。

風邪を引いて小学校を休んだ日などに、家でこの番組を観たりすると、妙な孤独感というか、なんともいえない薄ら寒い虚無感というか、形容し難い哀しい気持ちになったのを思い出す。
授業で観ていても、話の展開が読めてあまり好きではなかった。
観ていて、なんだかちょっとイライラするのである。
子供が観て話が読めるというのは、道徳授業の教材としてどうだったのだろうか。
なにが正解なのかわからないようなことを、それぞれ考えて意見を出し合い、いろんな意見があることを知る、じゃあどうしていくのがいいのか、とまた考えるのが、道徳の授業としてはわりと大事なプロセスなんじゃないかと思うのだが。
「先生がこの授業で自分たちに言わせたがっているのは◯◯ということだな」まで読めてしまうと、授業として機能しない気がする。いまそれを言ったところで、どうしようもないけれども。
2009年まで放送されていたことを知って驚いた。


マンガ:うる星やつら(1978年39号~1987年8号)

うる星やつら / ラム

高橋留美子さんの漫画作品。この時期に連載終了。
3歳で漫画を見た記憶はなく、小学生になってはじめて姉から借りて読んだ。
記憶にある作品の連載期間を確認してみると、実はこんなに前の作品だったのか……と、改めて思ったりする。


テレビ:仮面ライダーBLACK(1987年10月4日~1988年10月9日)

録画ではなく、リアルタイムで観た覚えのある仮面ライダーは、BLACKと続編のBLACK RXのみ。
とはいえ、以前の記事でも書いたように「いつ放送されているのか知らない」ので、大半は見逃している。
敵対者であるシャドームーンが持っている赤い剣が好きで、憧れを抱いていた少年のころを思い出す。
主題歌も懐かしい。

そういえば、高校の友人が、この主題歌やエンディングテーマの入った黄色いカセットテープを持っていた。多分、ファンブック的な本とテープがセットになって販売されているようなやつだったと思われる。CDではないところが味わい深い。
そんな友人もいまでは警官となり、白バイ隊員を指導する鬼教官になっている。正義のヒーローでバイク乗りという、仮面ライダーの影響があったのかもしれないと思うと、勝手にちょっと感慨深くもある。

夢を叶えた高校時代の友人の似顔絵


テレビ:アニメ三銃士(1987年10月9日~1989年2月17日)

アニメの内容よりも、酒井法子さんが歌っていた主題歌「夢冒険」の印象が濃く残っている。
そして主人公よりも「はだしのジャン」を先に思い出す。
ジャンの声優は田中真弓さん(『ドラゴンボール』のクリリンや『ワンピース』のルフィ)で、その声から受ける印象の強さも影響しているかもしれない。
そして「枯れた芝生 寝転んで~」という主題歌の歌詞のせいなのか、あるいは放送開始の季節のせいなのか、枯れ草のイメージがやけに強い。

***

こうして改めて振り返ってみると、書きながら「そういえば」と思い出すこともいくつかあった。
私の創作のルーツみたいなものは、こういう時期にも密かに蓄積されていたのかもしれない。

特別に自覚はしていなかったのだが、幼少の出来事などで覚えていることを誰かと比較してみると、私はそこそこ記憶力がいいらしいことがわかってきた。かなり細部まで覚えていたりするので、驚かれることもある。
小説を書いたり絵を描いたりする場合は、記憶や細部の観察ということも「表現」を左右する重要なポイントだとは思うので、知らず知らず役立てているのだろう。多分きっと。

ところが一方で、さっさと忘れてしまえばいいような嫌な出来事まで鮮明に覚えているので、これが実は、なかなかに厄介である。
たびたび夢に見たり、不意にフラッシュバックのように情景が蘇る。
それが、いい思い出ばかりならばいいのだけれど。

ともあれ、時系列に記憶をたどる旅は続く。
行き着く先は、いまの私ときちんと重なるのだろうか。
あるいは突然変異を経て、いまの私になるのだろうか。


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