縁故資本主義(新自由主義)により現代社会はぶっ壊れている
先日、以下の本を読んだ。
資本主義が人類最高の発明である:グローバル化と自由市場が私たちを救う理由
あのイーロン・マスクも推薦しており、資本主義が最高というタイトルに惹かれ読んだ。
資本主義がクソだとか、脱成長とか、保護貿易だとか、官主導の政策が重要と考える人は読むと面白い。
なぜ自由貿易や民主主義が良いのか書いてあるし、その反論も丁寧に解説してある。そして何より簡潔で分かりやすい。(←超重要)
もちろん鵜呑みにできない点もある(訳者あとがきでも突っ込まれてる)が、思想にデカい偏りがなく、データを元に語られているので読む価値はある。
資本主義も完璧じゃないが、これまでの人類史で一番マシなシステムであることはよく理解できた。
例えば
・資本主義で貧乏人は搾取されてる!→むしろ逆で貧乏人が一番恩恵を受けてる
・経済成長だけを求めては駄目だ!→脱成長は他の問題の対処に一番コストが高く付く方法ですよ
・環境を破壊する!→むしろ資本主義じゃないと破壊してしまう
・金持ちが全てを独占する!→彼らの富は過小評価されてるし、なんなら永遠には続かない
・資本主義は人を孤独にする→データだとむしろ孤独感を減らし、人を幸せにしている
取引が自由であることの重要性は2024年ノーベル経済学賞のダロン・アセモグル教授の本にも書いてあった。自由であることは国を発展させ、個人も豊かにする。もちろん規制は最低限必要だ、多いと阻害してしまうという話なのだ。
しかし、この本を読んでいると同時に疑問が湧いてくると思う。「でも資本主義や新自由主義みたいな自由が行き過ぎたせいで、今の世の中ぶっ壊れているのでは?」と。
その問いに対する答えはこの本に載っていない。いや正確にはチラッと書かれているのだが、答えとしては書かれていないのである。
その答えとは縁故資本主義であり、つまり政治家や官僚がコネのある企業と癒着し一部の特権階級だけが恩恵を受けていることだ。格差が広がるのはそういう仕組みなのである。
そしてこれは新自由主義でもある。新自由主義と聞くと「文字通り自由な市場で障壁を無くすこと」みたいなイメージがあると思う。だが本当は違う。
この本に新自由主義の分かりやすい説明があったので引用する。
日本で「新自由主義」というと、「政府による個人や市場への介入をできるだけ少なくすること」と解釈されがちですが、これは間違いです。本来の新自由主義の定義は、マルクス主義地理学者デヴィッド・ハーベイの書
にある種の特権階級が生まれ、しかもそれが相続されていく仕組み」のことです。まさにいまのチャイナの仕組みがそうで、いわゆる縁故キャピタリズムですね。
世界中で特定の企業だけが利益を上げ、格差が生まれているのは一部の奴らが癒着し談合しているからだ。
イーロン・マスクがドナルド・トランプとタッグを組み「政府効率化省(DOGE=Department of Government Efficiency)」をやろうとしているのも、この談合にメスを入れて本来の資本主義に戻す意図があると思う。
本来の資本主義の素晴らしさを知ることができる一冊だった。