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秋春シーズン制への移行について思うこと(前編)

INDEX
🔹本文書の位置付け
🔹賛成か反対か
🔹なぜ提案が今なされたのか
🔹提案の概要とそのメリットとは
(以下は後編に続く)
🔹今後の検討で留意すべき事項について
🔹最後に

🔹本文書の位置付け

 サッカー界では今年に入り、現行の春秋シーズン制から秋春シーズン制への移行についての検討がされています。それに対して一部サポーターやメディアの皆さんから反対の意思表示や疑問、意見等が表明されています。また、一部クラブからも本件に対するクラブとしてのスタンスが、オフィシャルホームページ等を通じて示されています。また私自身本件は、2001年よりJリーグの仕事を始めてから4回目の検討となり、経年の課題という認識でいます。

 そうした状況を踏まえつつ、本稿では本件に関する検討の経緯や現状についてお伝えし、移行の可否是非判断に対する私なりの考えを記すつもりです。また、本件についてまだよく知らないサッカーファンやスポンサー、行政の方々も意識して書き起こしていますので、予めお含みおきください。

 これまで、私的立場でこのnoteを執筆してきましたが、今回はなかば公人としての立場をとることになります。また、クラブ発信媒体を使わずにnoteを使用したのは、一部記述内容にクラブ代表の立場を超え、この業界で20年にわたり禄を食んできた業界人としての意見もあるためです。本稿が本件に関係する方々のご参考になれば幸いです。なお、6,000字を超える長文となりましたので、前後編構成といたしました。

🔹賛成か反対か

 本件について一番多く質問されることは本件賛否についてです。個人的な思いは別にして、現検討段階で賛否を表明することはまだ早いと思料しています。Jリーグも「今は賛否を問うものではなく、はじめから移行ありきでもない」と明言しています。

 後述していきますが、シーズン移行をする上で日本サッカー協会(JFA)から提出された案は、2017年にJリーグによって否決されたものと異なり、降雪地域に対して一定の配慮がなされています。そしてその案に対して、現在各クラブからの意見を集約した上で、移行に障害となる因子についての対応策がとれるか否かについて分析と議論を始めようとしています。集約された各クラブの意見は多岐にわたり議論には時間を要します。また、Jリーグもその全てを丁寧に整理し、ニュートラルな立ち位置を意識しながら検討を進めようとしています。

 然るに、先ずはこの議論を真摯に行い、もって可否あるいは是非判断を行うことが筋と考えています。時間はかかりますが、提案された以上は全ての課題に対してキチンと議論検討をした上でスッキリさせたいというのが、この業界に長くいた私の偽らざる心境です。

JリーグのあるJFAハウス

🔹なぜ提案が今なされたのか

 この問いも多いのですが、それは前回論議されたシーズン移行の提案をJリーグとして否決した2017年に遡った説明が必要です。前回否決した主な理由は、

①降雪地帯に所在するクラブが、シーズン移行に伴うインフラ整備をするのは極めて困難。

②一定の成績を収めたクラブに出場権を付与されるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)が春秋制であり、秋春制に移行した場合、シーズンを跨いだスケジュールとなってしまい、そうした中でACLを戦うことはチームのベストパフォーマンスという観点から適切とは言い難い。

③試合実施可能期間が短くなるため、ルヴァンカップを成立させるためのスケジューリングに無理が生じる。

というものでした。

 しかし②項について、アジアサッカー連盟(AFC)が2024シーズンより秋春制に移行することを決定したため、Jリーグが春秋制のままでいた場合、ACL出場クラブはシーズンを跨いだスケジュールとなってしまうという状況が生じます。これが秋春制再提案に繋がりました。この点について、ACLに関係するクラブはごく一部のクラブだから大きな影響はないのではという意見を聞きました。私はそれは違うと思っています。アジアのマーケットは日本の比ではありません。そこで成功、あるいは頂点を極めることは、日本サッカー界のブランド向上や計り知れない経済効果を生むことになるでしょう。アジアマーケットは強く意識すべきと考えます。

 また、①項についても、詳細は後述いたしますが、降雪地帯に配慮し、冬場の試合数を減らす日程が示されたということも再検討の秤に乗せる根拠となりました。

大雪の富山県総合運動公園陸上競技場(2022年2月)

 一方、秋春制には前述したJリーグのナショナルブランド向上ばかりでなく、後述いたしますが、ヨーロッパクラブとの移籍の融通性や夏場のゲームが少なくなることによる強度の高いプレーができること等のチーム運営や、熱中症リスク軽減といったスタジアム観戦上のメリットもあります。過去来何度か議論されてきた本件を、リーグや全クラブが真摯誠実些細にわたり議論を尽くすことは日本サッカー界として賢明な選択と思料しています。

🔹提案の概要とそのメリットとは

 Jリーグは「対外的にも単に結論だけを言うのではなく、検討段階での情報についても開示していく」としています。リーグを支えているのは株主、スポンサー、ファンサポーター、そしてホームタウンの皆さんであるとの認識に立てばとても好ましいスタンスでしょう。そのスタンスに立ってまず秋春制のシーズンイメージについて記しておきます。なお、今後様々な検討をしていく上での素案として、日程は一定の幅を持たせています。

『・開幕は7月最終週〜8月1週
とし、12月3週〜4週まで行い、その後ウィンターブレークに入る。
・ウインターブレーク明けを2月1週〜2週とし、閉幕は5月最終週〜6月1週とする。』

 また、Jリーグでは、秋春制のメリットについて開示しています。加えて現段階での課題についても各クラブとも共有しています。はじめに記しておかなければならないことは、「これらメリット、課題は全てにおいて今後検証が必要」ということです。これらはあくまでもJリーグや各クラブからの意見がベースとなっていますが、その妥当性についてはさらなる議論や情報収集が必要ということです。それはJリーグも今後の検討日程を開示する上で明言しています。

 この日程をベースに、まず天候面でのメリットとして言えるのは、梅雨や暑さの中で行う6月〜9月の試合数が減少することで、お客様目線では雨天試合や熱中症リスクは減るでしょう。またサッカー的にも強度の高い運動量のある試合を増やせるかもしれません。8月の試合も、春秋制のシーズン真っ只中の場合と異なり、シーズンインのフレッシュな身体で臨めるメリットもあるでしょう。

 チーム運営面では、ACL出場クラブについて、春秋制の場合、同じクラブでありながら2シーズンに跨った期間の開催のため、実質的には前半と後半で違うチームで戦わなければならない不合理が秋春制では解消されます。また秋春制のヨーロッパクラブとの間で行う選手や監督の移籍もシーズン途中ではなくシーズン初めに組み入れることが可能になります。以上、天候面チーム運営面の観点から示された秋春制のメリットを見る限りは、日本サッカー界全体としての競技力は向上すると言えるかもしれません。

富山県総合運動公園陸上競技場

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