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増資を通したスポーツビジネス経営者の本分/第三者割当増資を実施

                株式会社 カターレ富山
                   代表取締役社長
                      左伴 繁雄

INDEX
▪️50百万円の増資を実施
▪️内部留保量が左右する経営の安定化
▪️内部留保を取り崩して勝負に出る
▪️増資は弊社への信頼のパラメーター
▪️増資と経営責任
▪️スポーツビジネス経営者の本分


▪️50百万円の増資を実施

 タイトルだけを見るとちょっとお固い内容ですが、要は会社としての貯金を増やしておくというお話しです。弊社は10月24日の臨時株主総会、取締役会で、第三者割当増資の決議を致しました。増資規模は50百万円程度で、11月下旬には新規株主、最終増資額を決定致します。本増資は私がこちらに来てから2022年度に続いて2度目になります。これで資本総額は2021年度の約1.2億円から約2.5億円に増加する見込みです。と言っても貯金が2.5億円になるということではありません。その辺のことは後述致します。

2022年度第三者割当増資


▪️内部留保量が左右する経営の安定化

 増資は株を購入いただける法人を募ることで、会社として事業所新設や新規事業等への投資のための資金調達や、赤字続きによる内部留保減少への補填を行っていくものです。ただし、後者は赤字で貯金を減らしてしまったツケを払っていただくわけですから、一般的には経営責任が問われます。また、この貯金(以降内部留保と記します)の持ち方はクラブによって異なります。クラブが子会社化され、連結となる親会社があるクラブと、そうでない完全に独立したクラブでは内部留保の量も使い方も違います。

 その端的な例として、赤字覚悟で優勝や昇格を狙う時や、コロナや不況、天災等の有事で大幅な赤字を出した時、減少した内部留保を親会社のあるクラブは、親会社による資金支援を仰げる可能性が高いので、内部留保量を十分に保っておく必然性は低いでしょう。一方、そうでないクラブは、内部留保を取り崩して凌がなければなりませんので、常に一定量の内部留保を確保しておく重要性が高いと言えます。弊社は親会社を持たない独立法人ですので、今回の増資は過去2年の赤字で減少した内部留保量を回復させるとともに、先を見据えた内部留保の適正化を意図したものです。

▪️内部留保を取り崩して勝負に出る

 弊社の場合、私が着任する前年度(2020年度)時点での総収益(約5.5億円)が、J2復帰を果たすに足る強化費(過去昇格したらクラブの強化費相場約3.5億円)を赤字を出さずに捻出できる収益規模(約8億円)ではありませんでした。そうした中で、J2復帰の旗を降ろさず戦い続けるための手段として「総収益がJ2復帰をするための強化費を賄えるようになるまでの間、会社の内部留保を取り崩して強化費を捻出する」ことを選択致しました。J2に上がればJリーグからの分配金をはじめ、様々な増収が期待できますので、取り崩した内部留保を元に戻せることはある程度わかっていたからです。

2024年1月新体制発表会資料


 また、2021年当時、富山の日本トップクラスの法人、個人財力を考えれば、やるべき営業活動に注力していくことで、内部留保を取り崩さずにJ2復帰のための強化費を賄えるのは2024年、つまり今年と踏んでいました。そして社員の頑張りと地元のご理解で、思い描いた収益規模(約8億円)に到達する見込みです。

 しかしながら、その間の2022.2023年度と大幅な赤字を出し、内部留保はほとんど底をついてしまいました。予定通りと言えば予定通りですが、今年度は赤字を出さずに自力で強化費を賄える体力はついたものの、今後カテゴリーアップした際に更なる投資を視野に入れておかねばなりませんので、今回の増資に踏み切りました。

72024年度第三者割当増資


▪️増資は弊社への信頼のパラメーター

 おかげさまで、弊社が富山の地で価値ある事業を営んでいるという地元法人のご理解もあり、事前のご相談段階で一定量の増資額を得る目処がついています。1株5万円でご購入いただく株の価値、それは現在の純資産(内部留保)を総株数で割った時価で表しますが、それは数百円程度です。その株を5万円でのご購入です。加えて配当もなければスポンサーのような特典も殆どない。あるのは「カターレ富山経営の一翼を担う」というエビデンスだけです。それだけに、スポーツが地域にもたらす恩恵をご理解いただけている企業が増えてきていることを素直に嬉しく思います。

私が就任後不変のvision


 このご厚情になんとかお応えしていくためにも、トップチームのJ2復帰はもちろんのこと、「カターレ富山がここにあってよかった」と喜んでいただけるよう、全ての事業を県民の喜びに資するよう取り組んで参ります。

▪️増資と経営責任

 最後に責任問題について触れておきます。前述したように、この増資はJ2復帰のために身の丈を超えた費用で出た赤字を埋めるためにしたわけですが、例えどのような理由にせよ、弊社事業活動で出た赤字を人さまに埋めてもらったという点において、経営責任の審判を仰がねばなりません。私も2022年度増資の折には、弊社取締役会に対して進退伺いを提案致しました。それは経営者として当然とるべき態度です。その際私は以下のように申し上げました。「J2復帰を狙うに足る収益を上げるには最低3年はかかる。それまで支援者やサポーターは待ってはくれないだろう。J2復帰の旗は降ろせなかった。また、まだ規模の小さな会社が大きくなって行くためには、まずカテゴリーを上げて行かねばならない。ならば赤字を出してでも戦力を整え、内部留保を取り崩しながら勝負に出る選択はスポーツの世界では常套手段。また、社員と街の支援で会社の成長が見込めるなら、座して収益条件が整うまで待つべきか否かか、答えは明白である。」

▪️スポーツビジネス経営者の本分

 そしてその進退伺いは否決されました。今では5.5億円の会社が4年で8億円を超えるまでに成長し、自力でJ2復帰を勝ち獲るまでにサイズアップできました。故に今回の増資は、赤字補填ではなく、更なるステップアップのための「生き金」として打たせたいただいたと言えます。『赤字+増資/勝負➡︎成長/資産回復』この繰り返しでステップアップしていけば、必ず増資不要なフェイズが訪れます。それまでは、覚悟と予見力を持って、責任を全うできるかどうかがスポーツビジネス経営者の本分というのが私の考えです。


 

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