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東北を語る② 宮城県石巻


はじめに

今回は、宮城県石巻(いしのまき)市を紹介します.石巻市は、2005年に周辺の雄勝町、牡鹿町など6つの町と合併したことから、県内で仙台市に次ぐ人口(2024年現在)を抱える市です.

石巻市の位置

世界三大漁場のひとつである金華山(きんかさん)沖は、日本有数の水揚げ量を誇り、万石浦(まんごくうら)はカキの養殖でも知られています.

その広大さや地形の多様さから、2011年の東日本大震災以降、各エリアではさまざまな復興計画が進められてきました.


1. 水辺と親しむまちづくり

まず、旧北上川の河口に位置する石巻市街地では、川を遡上した津波により広範囲が浸水しました.その後、地域住民へのアンケートの結果に基づいて、河川堤防の整備が始まります.

ここでコンセプトとなったのが「かわまちづくり」.石巻市には、川湊として発展してきた歴史があります.堤防建設にあたって、当初は住民の間に大きな戸惑いが見られたのでした.

①建築と堤防の一体化

古くから商店が軒を連ね、栄えたエリアでは「いしのまき水辺の緑のプロムナード計画」のもと、建築と堤防の一体化が目指されました.

たとえば、商業施設「元気いちば」の2階からは堤防天端にアクセスでき、河川堤防がまちと緩やかにつながったデザインになっています.

手前の建物が「いしのまき元気いちば」

②自然と堤防の一体化

一方、被害の大きかった河口の南浜地区は、「石巻南浜津波復興祈念公園」および「石巻市南浜マリーナ」に活用されています.

マリーナは、小型船舶の係留施設として、津波発生時の船の流出を防ぐため船を係留できる区画や、船を揚げるクレーンを備えています.テーマカラーのブルーは、旧北上川との一体感を生み出すための工夫です.

また写真上部で、堤防の裏法が緑化されているのがわかるかと思います.
これも、景観的なつながりに対する工夫です.

ブルーを基調とする「石巻市南浜マリーナ」

2. 葛藤の中でのまちづくり:雄勝

震災で住宅の8割が全壊した雄勝町では、高さ最大9.7メートル、全長3キロ以上の巨大な防潮堤の建設が進められました.

当初は、住宅や道路を高台に移し、高い防潮堤を造らない計画でした.
住民の意思を尊重し、海に恵まれた美しい景観を守ろうとしたのです.
この計画が頓挫したのには、財政的な事情がありました.

雄勝町の防潮堤

道路の高台移転は、復旧の対象外とされ、国の復興予算を使えないことが原因でした.一方で、防潮堤の建設に対しては、国が全額を負担することになっていたのです.反対する住民の声も残る中、町は2013年3月に防潮堤建設を受け入れました.

防潮堤には現在、「新たな景観を生み出したい」との思いから、壁画アート「海岸線の美術館」が施されています.

壁画アート「海岸線の美術館」

おわりに

石巻ではこれまで、"水辺(河川、海)との共生" が目指されてきました.
そこには、地域住民の意思を汲みながら、まちの安全も守らねばならないという葛藤があったのです.

最後に、YouTube上の、石巻の復興まちづくりを取り上げた動画をいくつかご紹介します.

・「かわまちづくり」
https://www.youtube.com/watch?v=gUG1km7Oz1U

・雄勝町の防潮堤建設
https://www.youtube.com/watch?v=y0bFv1qzH-g&t=1s


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