INIは温かい毛布のように
INIに夢中になった日々の記憶を鮮明に覚えている。
鳴り止まない電話とFAXの受信音、タイピング音の中を抜け出せる休憩の1時間、会社を飛び出て、都会にあるわずかな川の近くのベンチでYouTubeをひらく。決まって見るのは同じ動画で、その1時間がわたしのわずかな光だった。
新卒で入社して1年目、朝起きるのに必死、満員電車でぎゅうぎゅうづめになり、職場ではミスをしないように、先輩に怒られないように、できるだけ笑顔という社会性を身につけた。そんな自分をきらいになりながら家に帰る