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少年が飛行機を見るのは

読者は本を開くと、物語のその1ページ目から、この本がどんな世界なのか手探りで掴んでいく。

はじめはその世界のことがわからないから、ゆっくりと、その世界とそこに住む人たちがみえてくると、するすると物語の世界にに入っていける。

今回読んだ斉藤倫さんの『さいごのゆうれい』主人公は小学5年生男子。時は現代の日本の夏休み。父子家庭で、仕事が忙しい父は主人公を夏休みの間、母方の祖母の家に行預ける。

ふむふむ、児童書ではわりとよくある設定。ひと夏の出会いと冒険が待ってる予感。

この物語の世界は私の住む世界と同じだろうと思い込んで読み進めていると、じつは大事なものが欠けていることが明らかになる。
明らかになる、というか、それは物語の一番最初にきちんと書かれているのだけど、まだ物語を手探りで進んでる間に通り抜けていて、そういえばそんなこと言ってたね!と後から気が付いて驚く。
あの行動にも、あの発言にも、ちゃんと理由があって、のほほんと読んでいる場合じゃなかった。

驚いてからは一気読み。
飛行機、ゆうれいをはじめとする怪しげな登場人物、ずり下がるくつした、こう書くといかにも子ども向けな感じがするけど、大人にもぜひ読んでほしい。自分が大切に思っているひとやものを思いながら。

西村ツチカさんの挿し絵が物語の雰囲気に合っていて、おはなしのイメージが何倍にも膨らみました。

夏になったらもう一度読みたい。ゆうれいの世界とこっちの世界がにじんでるんじゃと錯覚する様なうだるような暑さのなかで、読んだら楽しいだろうな。

ちなみに斉藤倫さんの著作で最初に読んだのはこの本。

詩って他のひとがどんな読み方をしたのか解釈を聞くのが楽しいと思うのだけど、まさにそんな楽しさを味わえる一冊です。


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