柔らかなあかり地域照らす 集う人々 夜も追悼行事
東日本大震災から11年。11日は夜も祈りが続き、石巻地方では追悼の竹あかりやキャンドルが灯され、人々を優しく照らした。今年は気候も穏やかな3・11となり、光はまっすぐ天を照らし、亡き人たちに思いを届けた。
84本の優しき光灯る 大川小の遺族ら企画
石巻市の震災遺構大川小校舎前で初の「大川竹あかり」が行われた。日没に合わせて点灯され、竹から漏れ出るほのかな明かりが優しく照らした。
大川小では児童、教職員計84人が犠牲となった。竹あかりは遺族や住民有志、支援者で実行委員会(佐藤和隆代表)を作り、ボランティアの協力も得ながら準備してきた。シンボルとなる高さ5メートルの竹を置き、その周りを円で描くように80センチから2メートルの竹を配置。数は犠牲者と同じ84本とした。
点灯を前に、大川地区振興会の大槻幹夫さん(78)が「大川では住民の1割を超す418人が亡くなった」とあいさつ。その後、大川小の校歌が流れると思いがこみ上げて涙を流す人もいた。
竹あかりが一斉に灯されると、集まった人たちはゆっくりとその周りを歩き、静かに追悼の祈りを込めた。同実行委の三條すみゑさん(63)は「準備段階から多くの人が参加してくれて、地域の一体感を感じることができた」と話していた。
佐藤代表(55)は「大川小の校舎が遺構として残ったことに意味を感じる。校舎を維持しながら教訓を伝えることが重要。この場から何を発信できるのかを考え、竹あかりを毎年続けたい」と思いを込めた。【渡邊裕紀】
「いまを大切に生きる」 南浜町で灯籠揺らめく
石巻市南浜町の「がんばろう!石巻」看板前で「3・11のつどい」(同実行委主催)と「ココロの灯り」(石巻商工会議所青年部主催)が同時開催された。市内の犠牲者数に相当する約3700個の灯籠が並び、看板前に「3・11追悼」の文字が浮かんだ。
赤や緑、青などの灯籠は複数の円形に重ねて配置され、追悼の思いや、11年間の間で育まれた人との活動のつながりを表現。蔵王町在住のシンガーソングライター幹さんらが亡き人に思いを寄せ、しっとりと歌った。
献花台に花を手向ける人も絶えず、当時門脇小1年だった津田翔汰さん(18)は、亡き同級生を思いながら静かに合掌。「3・11は特に当時のことを思い出す。亡き友には『俺は頑張って生きているよ』と伝えた。春から専門学生になる。いま生きていることを大切にしなければ」と話していた。【山口紘史】
全てを包む慈愛の像 東松島市野蒜竹あかり
東松島市野蒜の防災体験宿泊施設「キボッチャ」では、地域おこし協力隊員で砂像彫刻家の保坂俊彦さん(47)が手掛けた砂像が披露され、この像を囲むように市内の死者、行方不明者数と同じ1133個の竹あかりとキャンドルが灯された。
人々の支え合いの様子を表現した砂像「慈愛の像」は約6トンの砂を使用。保坂さんは「被災された方々にとって3月11日は特別。今後も作品を通じて心安らぐものを与えていければ」と語った。
点灯式には市内外から人が集い、読経に手を合わせた。焼香後には一人ずつろうそくを灯し、地域を照らしていた。
会場ではバイオリニストで東松島ふるさと大使の鹿嶋静さんが演奏を披露した。また近隣の震災復興伝承館でもキャンドルが灯された。【横井康彦】