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「新規就農と施設園芸」 ⑤提言 新技術で省力化推進

 施設園芸は、ICT(情報通信技術)の発展で機械による栽培管理が広がり、中には土壌や太陽光といった自然環境を使わない手法も登場している。光源にLED(発光ダイオード)を使い、土の代わりに培養液を採用。隔離空間で温度や湿度などを完全に管理する栽培方法があり、外部から病原菌や害虫が入らない利点がある。

 スマート農業の一つの到達点であるこの「植物工場」は、今後も増えていくだろう。今はまだ技術が追い付かず採算のとれる作物は限られているが、地球規模で気候変動が起きている現代、環境に左右されない植物工場は、食糧生産の要になる存在と言ってもいい。「モノを作る」という見方をすれば工業的な生産であり、機械を専門に扱う技術者も取り込むことになる。異業種から農業に挑戦するケースも増えていくはずだ。

 従来の土を使う露地や施設園芸も、未来を見据えると大規模化を進めていくことが後進の育成にもつながると考える。

 これまでのデ・リーフデ北上や、イグナルファームなどは、規模を大きくすることで雇用を進めており、仕事をしながら農業の知識を蓄える若者も少なくない。実際にそこから独立し農業者となるケースもあり、間口の広い大規模農業が新たな芽を育てている。

 石巻市が行ってきた就農促進も進めながら、最も大きな課題となる設備投資も、これまで以上に補助が必要になると考える。施設園芸だけではなく、露地栽培でもスマート農業化を進め、自然との触れ合いを残しながら定植や収穫などを自動化する技術の開発は進んでおり、実用化に近づいている。

 昔は手作業だった農業は、技術の進歩で省力化されてきた。ICTの発達で社会が変わったように、農業も変化し、工業的な技術との融合も始まっている。社会にデジタル技術が浸透したことで、若者の農業に対する見方も変化している。農業体験のほかにも、SNSなどネット上での魅力発信も積極的に行い、新しい「農」のビジョンを提供することで、次世代へ産業をつなぐのも可能だろう。

 技術が進み、マンパワーが少なくても成り立つ農業になれば、減少していく農業者とバランスをとることも可能なのではないか。今はまだ、その過渡期なのだと感じている。


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