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住民不在の広域避難終了 村井知事「検証、改善必要」 国の原子力防災訓練

 東北電力女川原発での重大事故発生を想定した国の原子力総合防災訓練は12日、原発から半径5-30キロ圏内の住民避難訓練などを行い、3日間の全日程を終えた。新型コロナ感染拡大防止で地域住民は不参加。避難は県や各市町の職員が代役し、手順や避難路などを確認した。国と県は訓練から得られた課題を検証し、必要な改善を図りながら、来年度以降の県主催の原子力防災訓練に生かしていく方針を示した。

渋滞検証に課題残す

 訓練は地震津波の影響で女川原発2号機から放射性物質が放出されたと想定。2日目は主に原発5キロ圏、3日目は30キロ圏の県内7市町に避難指示が出され、住民役の職員約160人がバスや車で30キロ圏外の避難所に向かった。

 このうち12日の石巻市の訓練には、村井嘉浩知事や齋藤正美市長ら約40人が参加。一時集合場所の石巻市渡波地区から涌谷町の避難退避時検査等場所を経て、大崎市の避難所を目指した。

避難所で受付する村井知事(12日、古川保健福祉プラザ)

 涌谷スタジアムに設けた検査場所では、主に県や東北電の職員らが車両や人への放射性物質の付着の有無を調べた。線量の高い車に乗っていた避難者は体の汚染も確認された。

 検査場所での受付に時間を要し、避難所である大崎市の古川保健福祉プラザに一行が到着したのは、到着想定時刻の約20分後。避難所受付では体温を測り、発熱者や濃厚接触者、要介護者、健常者に部屋を分けるなど、新型コロナ対応も行った。

 村井知事は「検査受付に時間が掛かることが分かった。有事の際はなおさらであり、安全にスムーズに避難できるように検討・改善し、避難計画に反映したい」と強調。今回かなわなかった住民を交えた避難は、来年度以降に実施する方針も示した。

避難所内に設けられたスペースで待機する住民役(12日、古川保健福祉プラザ)

 住民不参加により道路の渋滞状況など避難計画の実効性検証が不十分だった点で、内閣府の松下整大臣官房審議官は「原子力訓練で渋滞の検証は困難で、実際と同じ形にはできない。さまざまな調査や日頃の渋滞対策を応用したい」と話した。

 避難計画では、原発30キロ圏内に住む石巻地方など7市町の住民約20万人が県内31カ所の市町に避難することになっているが、「渋滞で避難が遅れないか」など懸念の声は多い。

 「避難計画には実効性がない」と東北電に再稼働差し止めを求めて係争中の石巻市民グループ代表の原伸雄さん(79)は「安全に避難所まで逃げられるか依然問題であり、多くの住民を参加させた大規模訓練が必要。事故が起きてからでは遅い」と訴えた。【山口紘史】



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